見出し画像

適利適売が未来を創る

安売りに未来はない

「より良いものをより安く」
よく聞くフレーズである。私は世界で一番この言葉が嫌いだ。
企業努力の範疇であればとても健全な合言葉なのだが、身を切ってまで身を切らせてまで”より安く”する必要がどこにあるのか。その身を切ったしわ寄せはどこへ行くのか考えたことはあるのだろうか。
“より良いもの”を求めるのであれば”それなりの値段”で取引するのが当然だ。

世の中を見渡すといかに安いものがもてはやされているかがよくわかる。
テレビを見れば激安スーパーや激安爆盛りの特集ばかりだし、フードロス削減なんて言葉で不良品を安値で仕入れたがる人たちも多くいる。そもそもフードロス削減というのは販売店の過剰な仕込みや仕入れのロスをなくそうという運動であって農場で発生する不良品(B品は不良品ではない)を安く仕入れる話ではない。本質がずれている。

安売りの考え方は生産者にも深く植え付けられている。直売所などというものはその典型だ。多くの直売場ではたたき売りかの如く大安売りをしている。直売所で買い物をする多くの人は”中間マージンが発生していないから安くできている”と勘違いしているかもしれないがまったくもってそんなことはない。直売所だってしっかりと販売手数料を取っている。しかも40%近くとっているところも少なくない。
ではなぜ直売所の野菜は安いのか。それは単純に生産者が利益を取ってないからだ。
「いい野菜をみんなに食べてもらいたいから」や「お客様からお金を取るのは申し訳ない」など意味の分からないことを言っている家庭菜園の延長のような人が多くいるがそれが現状だ。
そんなところに良い野菜を生産する農家は野菜を出品するだろうか。いや、するわけがない。
なぜなら良い野菜を作るには金がかかるからだ。野菜を売った利益を再投資してもっと良い野菜に育てていく。この連続の中で品質を高めていくのであって、利益がなければ現状維持が精一杯であり昨今の物価高騰では品質が落ちていく一方だろう。改めて問う。そんなところにいい農家は野菜を出品するだろうか。するわけがない。

成長するためには”利益”が必要だ

「利益を取る」という言葉に対して抱くイメージはそれぞれの立場で違う。悪いイメージの人もいればよいイメージの人もいるだろう。そして、いいイメージを持つ人は利益の使い道を知っている人なのだと思う。

”利益”とは豪遊するためにあるのではなく成長するためにある。

企業体は利益を追求するが何のためなのか。それは成長への投資をするためである。ビジネスにおいて最も重要なのは成長することだと私は考えている。成長するためには新たなチャレンジが必要で、新たなチャレンジには金が必要になる。そしてその金を”利益”の中から捻出する。そうやって企業は成長していくのである。
農業の世界でも全く同じで農産物を販売しその利益で新たな機械を買ったり、人を雇ったり、良い野菜を育てる研究費用にして成長していく。
だが利益が出なければこの流れはたちどころに途切れその農家は消滅していくのである。
だから生き残り、成長し続けるために「利益を取る」ことが必要になる。

適利適売が未来を創る

今の時代の農家は爆益を出して高級車を乗り回し、豪邸を建てたいなんて考えている人たちはほとんどいない。考えていることは不自由のない生活を保つ中で農業の未来を担っていく思いを持った人たちばかりに感じる。

そのためには高利益や低利益などではなく適正利益「適利」が必要になる。つまり再生産価格に成長投資分の利益を上乗せしたものだ。それが農業の未来を創るのである。

低品質な野菜を過剰に作って、安く売る。この流れをそろそろ止めていこう。良い野菜を適正量作って、適正な価格で売る。これ以外に日本農業の未来は創れない。

幸い、今はこのことを理解してくれているスーパーや直売所が増えているような気がする。そういった企業と成長していくパートナーとして彩園なかやが”選ばれる農家”になれるよう日々成長を重ねていこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?