フードロス削減は農家の救世主…?
一人歩きのフードロス
フードロスという言葉を知っているだろうか。おそらく知っているだろう。
令和元年から食品ロスに関する方針が政府から発表されている。その内容の一部に「規格外や未利用の農林水産物の活用(加工・販売等)を促進する」ということが書かれている。
さらに昨今のSDGsの流れに乗って盛り上がりを見せているのがこのフードロス削減の話である。
その中で「フードロス削減と農家さんの規格外野菜を活用して社会課題解決に貢献したい」と熱い思いを語る人を多く見かけるが本当にそれは求められていることなのだろうか。
特に農家から。
何を食っても腹は膨れる
少し規格外品を食用にするということを考えてみる。
例えばお米で考えてみよう。多くの日本人は1日3杯の白ご飯を食べるだろう。ざっくり計算で日本では1日3億杯のお米が消費されていることになる。この一杯のご飯を100円と仮定した場合、1日で300億円の売り上げになる。ではこの1日3杯のご飯のうちフードロス削減ということでお昼分だけ1杯50円の規格外品のご飯に切り替えてみよう。そうすると消費されるご飯の量は3億杯のままだが、ご飯の売り上げは250億円に下がる。これでは純粋に売り上げとして17%下がってしまう。ではこの下がった売り上げ分を補填するほど消費量を増やせるだろうか。
それは難しい。なぜならみんな”おなか一杯“だからである。
そんなにみんなご飯ばっかり食べられないだろう。つまりそれは農家の収入を単純に下げるだけということになる。1杯の平均単価が100円/杯から83円/杯になるが出荷量は増やせないという最悪の流れが出来上がる。
規格外の農産物を安値で仕入れてフードロス削減をうたって安い価格で食品を売ることに何の意味があるのか。自分たちの首を自分たちで締めているとしか私には思えない。
本当に意味のあるフードロス削減策
もし本当にフードロス削減に貢献したいと思っているのなら、“農家のごみ”を安く食べさせるという安易な解決策を取るのではなく、食用以外の新たな需要を創出することである。今まで価値がないとされていた物に新たな価値を見出してやることである。例えばどこかの高校生が考えていた「野菜の色素を抽出した絵具」はいままでごみとされていた廃棄される野菜に新たな価値を吹き込んだものである。
このようにフードロス削減をうたいたいのなら“格落ちの食料”として安売りするのではなくそこに新たな進化の価値を見出してほしい。
その時初めて“農家のごみ”は“社会のたから”に生まれ変わるのだと思う。
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