見出し画像

泡盛復権なんて肩肘張らずにサ ー沖縄の「へそ」うるま市石川のローカル生活(34)

沖縄が誇る県産のお酒といえば、泡盛です。蒸留酒の一種で、原料にタイ米を使用するところ、黒麹菌を用いるところに特徴があり、焼酎とは違った独特の風味があります。

居酒屋のカウンターで一人酒を嗜むようなご年配の沖縄紳士の多くは、お店に泡盛をボトルキープしています。「ボトル」と頼むと、店の人は何も言わなくてもボトルとセットで、グラスと山盛りの氷、割る用の水を運んできます。グラスに氷を満たし、泡盛をちびちびっと注ぎ、好みの濃さにして、楽しむのです。

泡盛の飲み方あれこれ

泡盛の水割りは食中酒として非常に優れていると思いますが、在住中には、他にもいくつかの飲み方を教わりました。

(1)コーヒー割り
泡盛をコーヒーで割ると独特の香りが消え、非常にすっきりとした飲み口になります。石川の居酒屋で仲良くなった常連客のタクシー運転手から教わりました。缶コーヒーのブラックを自分で持ち込み、キープしてある泡盛のボトルで普通に水割りを作ったあとに、ちょびっとコーヒーを足すのです。

缶コーヒーの店への持ち込みは一般的にはNGかと思いますので(その店では常連には認めていましたが)、お店にコーヒー割りの注文が可能か尋ねてみるか、ご自宅や宿などでお試しください。

コーヒー割りの難点は「飲みやすくなりすぎるので、ついつい飲みすぎてしまうこと」。またコーヒーの量が多いと泡盛の風味も消してしまうので、お好みによっては香り付け程度に垂らす程度にしておいた方がいいでしょう。

近年、沖縄のファミリーマートでは、最初から泡盛をコーヒーで割った「泡盛コーヒー」が販売されています。飲んだことはありませんが。

(2)シークワーサー割り
コーヒー割りと同様に、普通に水割りを作った後に、県産の柑橘類であるシークワーサーの果汁を絞って足します。こちらは飲むとシークワーサーの爽快さが鼻を抜け、夏にぴったりの爽やかな飲み口となります。

これは、ツトムさんに連れて行かれたスナックで初めて試しました。なお、スナックのママが教えてくれた上手な絞り方は、シークワーサーのヘタに爪楊枝を刺し、そのまま爪楊枝を下に向けてグラスの上に掲げ、シークワーサーを絞るという方法。果汁が爪楊枝を通ってグラスに落ちるので手が汚れません。

シークワーサーが手に入った時などは自宅での晩酌で、よくこの飲み方で飲んでいました。

(3)お湯割り
これはとある居酒屋でおばぁが冬に飲んでいた飲み方で、他では見かけなかったので、どこまでメジャーなのかはわかりません。焼酎のお湯割りと同じく、お湯を入れた器に泡盛を足し、軽く混ぜるというシンプルな飲み方。

(1)(2)とは逆に、泡盛の独特の香りが引き立ちまろやかな味わいになるので、「泡盛らしさ」を求める方はきっと気に入るのではないかと思います。

(4)炭酸割り
ハイボールブームに対抗してか、うるま市石川の泡盛酒造「神村酒造」では、銘柄「暖流」の炭酸割りを「暖ボール」と称して広めようと注力していました。ハイボールなどと同様に、グラスに氷を詰め、泡盛を3割程度注いだ上から炭酸水を流し込むという作り方です。

ただこれは、個人的には泡盛のにおいと炭酸がマッチしていなかったように感じました。飲めるといえば飲めるのですが、これを飲むならハイボールでいいじゃない?などと。簡単なので、試してみるのは一興でしょう。ハイボールのレモン同様、シークワーサーはあった方がいいと思います。

泡盛の銘柄あれこれ

僕が沖縄在住中に自宅に常備していたのは、金武町「松藤」(旧:崎山酒造)の銘柄「松藤」です。

一番安いものであれば地元のスーパーで1,000円ちょっとで手に入るため、コーヒーやシークワーサーなどで割って飲んでも勿体ないと思わなくて済む上に、そのまま水割りで飲んでもクセが少なく、美味しく飲めます。

ちょっと変わり種の泡盛として、名護市にあるヘリオス酒造の泡盛「くら」も好きでした。最大の特徴は、ウイスキーの熟成に使われるようなオーク樽で熟成させていることで、琥珀色でウイスキーのような香り高い泡盛に仕上がっています。

値段がやや上がるけれど、良質な泡盛として周囲で評判が高かったのが宮古島の菊之露酒造「菊の露VIPゴールド」。味見させてもらいましたがスルッと喉を通っていきます。大先輩曰く「水から違う」そうです。

泡盛離れに思うことあれこれ



県内では若者の泡盛離れが叫ばれ、泡盛の出荷量は長期低減傾向にあり、県内の泡盛酒造会社の中には経営に苦しいメーカーも少なくない……と、泡盛に関しては、明るいニュースをあまり聞きません。

各社もカクテルを提案してみたり、瓶ではなくレトルトパウチタイプのものを販売してCMを流したり、県に働きかけたり(これは逆効果だと思う)、あの手この手を駆使して消費量拡大に努力していますが、いまいち効果が薄いように思います。

今は泡盛を飲まないという県民30代女性に理由を聞いてみたところ

お金のない学生の頃は、友人たちと自宅で飲み会となれば、やっすい残黒(残波黒ラベルのこと)を買ってきてファンタとかで割って飲む、みたいな「酔えればいいよね」的な飲み方をしており、正直美味しいと思っていなかった。そのイメージが強くて、今ではなんとなく敬遠してしまう

とのことでした。「臭い」「おじさんが飲むもの」などと敬遠されるという調査結果も聞きますし、やはりイメージが、ね……ということなのでしょうか。

沖縄生活を振り返るに、大勢でワイワイ楽しむ飲み会のときは、みんなと同じ、ゴクゴクと飲めるビールやハイボールを最も飲んでいました(大概、飲み過ぎてました)。一方で、暑い夜長に居酒屋で一人、肴を味わいながらちびちびっとやるには泡盛ほどピッタリの酒はなかったです。

シチュエーションやライフスタイルに応じて、そこに寄り添うお酒も変わってくるものだとは思いますので、県内消費拡大のためにはライフスタイルの変化に合わせた飲み方の提案をしていくというのが必要不可欠でしょう。かつてホッピーやハイボールがイメージ戦略に工夫を凝らしたのと同じように。

ただ、例えば沖縄県内でもかつて麺類といえば沖縄そばしかほとんど選択肢がなかったところ、近年ではラーメンやつけ麺の店が数多く出店して多様性に富んでいます。でもそれを「沖縄そば離れ!」と主張する論調は聞きません。

消費者の選択肢が増えているのは悪いことではないはずなので、まあ僕個人は、酒造会社の経営の問題はあるにせよ、あんまり深く気にしなくていいんじゃない?などとも思ってしまうのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?