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マジェルカは就労継続支援A型事業所を今年の3月でやめました

みなさんこんにちは、マジェルカの藤本です。
 
久々のブログ更新となりますが、毎日本当に色々な事を考えています。
特に最近では悩むことも増え、その内容の種類や量も多くなっているように感じています。

思った事を移動中に書きつけたスマホのメモや、PC上に下書きなどした中途半端な文章が貯まる一方、それを発信すべきか考えているうちに、目の前に避けられないことが次々と覆いかぶさって来て後回し。
気づけばマジェルカからの発信は、スタッフたちからの商品紹介ばかりに。

しかし外から見えにくいところでは、マジェルカはこの先どういう選択肢を選ぶべきかの判断を迫られ続けています。
これからとても大きな変化をしなければならないかもしれないし、しないかもしれません。
いずれにせよ、マジェルカに関心を寄せて下さる方々へ、マジェルカの周りで起きている事や、悩んでいること、私達が目指したいと思っていることなど、“マジェルカのリアル“をもっと伝えておきたいと考え、今後は私の言葉での発信を再開しようと考えています。
 
いつも冗長気味になる私の文章ですが。定期的に更新していくつもりなので、もしよろしければお付き合いを、そしてご意見などもくださると嬉しく思います。


【マジェルカは就労継続支援A型事業所を今年3月末で廃止しました】


つい先日、数年前に1年位の期間、就労継続支援A型事業所(※)(以降「A型」)のマジェルカで、障害者雇用で働いていたAさんのお母様がショップに来てくれました。

(※)就労継続支援A型事業所とは、一般就労の難しい障害や難病のある方が、雇用契約を結び最低賃金が保証された上、一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービス。

「マジェルカさんには色々本当にお世話になりました。」とおっしゃって頂きましたが、私が「マジェルカは今年A型事業所をやめたんです。」と伝えるととても驚かれてしまいました。
 
確かに、日々お付き合いのある事業所さんには経緯を含めお伝えをしましたが、それ以外でしっかり告知をしておらず、今でもマジェルカがA型として活動していると思われている方も多くいるかもしれないので、今更ですが改めて皆様にお伝えさせていただきます。

マジェルカは、障害者施設で作られた製品を専門に販売する事業を、2011年に立ち上げました。
障害者が作る製品を、従来の「支援」目線で扱うのではなく、そこに正しく「価値」を認め、発信し広めたいという考えから。
当時は福祉業界の外で障害者が作った製品専門に販売する活動など無く、まさしくパイオニアでした。
そしてそれは、私が福祉業界の全く外側にいたために、それまでの福祉の当たり前に囚われていなかったから始められたと考えています。
 
それから数多くの障害者施設と関わり、素晴らしい場所や人と出会ったり、逆に疑問を抱いたりするうち、マジェルカも障害者と共に働く場所にしたいと思うように。
また、商品の販売という方法以外でも、障害のある人達が日常の中で活躍出来る場所、それを多くの人が当たり前に思える機会を増やしたいという思いも生じて就労継続支援A型事業所としての認可を2017年に受けました。
(今思い出しても認可を受ける道のりは大変でした・・・)

そのA型事業所を今年の3月末をもって廃止しました。

そこに至るには様々な理由がありました。

大きな理由は、ここ数年で一般企業の障害者雇用の動きが急加速し、障害者が雇用と収入を得られる場所がA型以外にも飛躍的に増えて、わざわざA型で働きたいという方が減った事。
そんな流れの中でも、企業の障害者雇用ではなくA型を利用したいという方は、A型以外の福祉事業所では望めない、企業と同様の最低賃金以上の給与を求めつつも、働くという側面よりも障害者支援事業所であるという面への期待をして来られるケースが増えていると感じました。
元々一定以上の頑張りと働きを求めるマジェルカの仕事内容や環境に定着してもらうという事が以前よりも難しくなってきて、ここ数年、各機関と調整しながら時間をかけて採用し、将来的なステップアップを期待しても、1週間から1ヶ月ほどで辞めてしまう方が殆どになってきました。
(実際「こんなにきちんと働かなければならないと思ってなかった」とおっしゃった方も。)

結果、2〜3人の利用者と、それ以上の頭数のスタッフで運営しているという状況が続き、それは即ち、福祉事業所として運営を続けるのに必要な収益が確保出来ていないということでした。
 
また、A型事業所というのは、支援サービスを提供していれば良いのではなく、生産活動から収益を生み出し、そこから障害のある利用者へ給与を支払う必要があります。
マジェルカでの主な生産活動とは、障害者施設で作られた雑貨製品を、吉祥寺の店舗とオンラインショップで販売することでした。
 
それが、コロナウイルスの影響で大打撃を受けることとなります。
他にスペースのレンタル事業も行い収益の足しにしていますが、それも軒並みのキャンセル。
生産活動で収益を上げるどころでは無い状況に追い込まれます。

だからといって、A型の場合には福祉サービスでも雇用契約を結ばないB型などのように、あまり売れなかったから報酬を減らすという事は出来ない、一般企業と同じく最低賃金以上を支払う義務があるので、なんとか工面をしながら、当たり前ですが給与は支払い続けてきました。
それはもちろん、戦力になる前に数日でやめてしまわれた何人もの方たちへも。
 
そして、生産活動で収益を上げられないA型事業所に対する行政からのプレッシャーや指導、その対応というのが逆に営業活動へ支障をきたす事にもなってしまっていることへの不満もありました。

マジェルカの場合は収益が上げられず、定休日を無くして営業するようにしたり(福祉事業所なのに利用者不在でスタッフだけで店を運営する日もざらに)、オンラインショップへのテコ入れやSNSでの発信を強化したりしたのが功を奏して収益は少しづつ改善されてきて、やっと先が見えてきたと感じました。
そんな矢先に起きたのがコロナショックでした。
でも、それ以前の営業努力があったことで、ダメージをある程度は軽減できて今も存在出来ています。
ただ、結果としてはそれを上回るダメージを受けました。
 
ちなみに収益悪化がコロナの影響による場合は、特例としてペナルティを免除して良いとの通達が厚労省から出ていたのですが、マジェルカを管理する東京都では、そこは勘案せず平時と同じというスタンスだそう。。。
 
売上が落ちた理由や改善策の報告書作成、派遣されたコンサルとの面談、コロナ感染拡大の中、リモート会議が当たり前の時勢、収益の悪いA型管理者百数十人を強制的に集めて行われるセミナーへの参加は恐怖でした。
「同じ空間で顔合わせながらのコミュニケーション(⁉︎)温度感(⁉︎)を大事にしたいので集まってもらった」というそのセミナーは、質問、録音、録画は全て禁止で、「甘えを捨てろ!」「マインドセットを解け!」といった話を一方的に何度も刷り込まれ、コンサルが「クッキー丸めても1個10円だが、ゴキブリのホウ酸団子を丸める仕事が1個数百円になった実績もある!やる気と工夫次第で障害者でも儲かる仕事は作れる‼︎」という貴重なお話を聞かされたり。
ホウ酸団子1個数百円なんて馬鹿げた仕入れは民間ではありえないので、きっとどっかの行政が無駄遣い出来る予算で購入してくれた特殊な案件なんだろうなぁ。。。(想像です)
やはり福祉ってお情けを回してもらって当たり前なのかなぁ。。。

A型の役割は、営利を重視する企業ではしにくい、働く障害者へやり甲斐や多様な選択肢の提供、ポテンシャルを活かし高めるといったことを、公的な資金を受けながら生み出すことだと考えていました。
でも行政がA型に求めるのは「中身なんてどうでもいいから障害者でも儲かる仕事を考えろ!」「数字が全て!」だと実感。

もはや福祉サービスとしてA型の意味はもう無いのでは。
と土砂降りの帰り道、怒りも混ざった暗澹とした気持ちになったのを覚えています。


行政の認可を受けて活動している以上、その管理を受けるのは当たり前の義務だというご意見はあると思います。
当然です。
それでも、マジェルカの根本であるウェルフェアトレードの活動と場所を絶対に絶やしたくないと、目の前の売上を100円でも上げようと頭や手を必死に動かしている毎日の中で、一例ですが上のような事や、その他にも日々生じるA型にまつわる数多くの事務的な作業で時間や人手を割かれるのを苦痛に感じるようになってきていました。
 
今、ウチに本当に必要なのは利用者が増えないA型を運営する為だけに必要な人材や時間ではなく、ウェルフェアトレードの場所と活動を続ける為の人材と時間なのでは。。。
既にA型をやる意味が薄れてきていると感じていたので、まだこれを続けるべきかどうか逡巡する日々が続いていました。

そして、これらの状況下で、サビ管(※)スタッフが子供を授かり休職という話になりました。
しかし、一時的な休職期間でも、他のサビ管を雇用して配置しなければペナルティを課されるという話。
A型継続するためだけに福祉人材を新たに短期間雇い入れるというのはあまりに非現実的で、将来的にもそこまでする意味はもはや無いと考え、これを機にA型を辞める決心をしました。


これまで利用者として働いていた3名のうち2名は、既に長く働いてくれていて、もはや我々としても仕事上では利用者という感覚ではなく、むしろショップ運営では頼りがいのある欠かせない立場になっていました。
彼女たちはそのままの条件で雇用継続とし(その後つい先日、在宅勤務のクリエイティブスタッフ1名は退職しましたが、マジェルカのこともとても大切に思ってくれている上に能力的にも高く、案件ごとに業務委託させてもらうという形態となりました)


正直、A型事業所運営のあれこれから開放され、営業的な活動、ウェルフェアトレードを広めるために必要な活動に専念できるのは嬉しくもあり、マジェルカの原点に戻ったようにも捉えています。
また、A型として支援者(スタッフ)と利用者(メンバー)という関係で接しなければならないシーンに、既に違和感を持っていたので、その必要が無くなったのには単純に心地よく感じています。
最近では、悩みにのるどころか、私の方が悩みにのってもらったりしています。。。

A型業務が無くなったとはいえ、今は欠けたスタッフの補充は出来そうにないので、一人ひとりの業務は増え、その点で至らない部分はあるかもしれません。
でも、皆今までよりも前向きにお客様やパートナーの皆さまに喜んでもらいたいという気持ちで頑張ってくれています。

改めてこれからのマジェルカとマジェルカのスタッフ達をどうぞよろしくお願い致します。

藤本


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