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家族の入院と職場で心を閉ざしてしまった話

他人の噂話が好きな人は世の中にたくさんいる。
私の勤め先は話好きの人が多くて、特に他人の噂話は尾びれ背びれまでしっかり付いて、一瞬で他のフロアにまで広まっているような環境だ。
そのため家族の入院が決まった時は、職場の人に言うべきか慎重になった。
秘密にすることでもないけれど、変に噂を立てられたり興味本位で詮索されることが嫌だった。

でも病院に行くために休んだり早退する可能性があると思ったので、取り急ぎ自分の直属の上司にだけは伝えた。
上司からは欠勤が多くなるようだったら会社に申告するように言われたけれど、仕事が終わってから病院に洗濯物を届ける分には業務に支障がなかったので、今まで通りに勤務している。
それに自分の私生活のことで気持ちが不安定になったとしても、職場では表に出さずにいようと思っていたので、職場ではいつもと変わらず過ごすようにしている。

ところがある日、何も話していないはずの同僚から「ねぇ、あなたの旦那さんって入院してるの?」と聞かれたのだ。
私は一瞬「えっ?なんで知ってるの!?」と困惑した。
それと同時に「ああ、この人は興味本位だけで聞いてきているな」と感じてしまった。
私は「そうなんです」とだけ答えた。
する今度は「怪我?病気?」と聞いてきた。
「病気です」とだけ答えると、同僚はそれ以上は何も言わなかった。

上司以外には言っていなかったので、何かのきっかけで上司から発信された情報が同僚の耳に届いたのだろうと思った。
上司には「秘密にしておいてください」と言った訳ではないので、他の人に知られてしまったことは仕方ないし、特に何とも思わない。
だけど、その話を知った同僚は何故わざわざ私本人に真実を確かめるようなことをしたんだろうと思った。
それほど親しい間柄でもないし、プライベートの話なんて今までしたこともない相手だ。
なのに今それを聞いてどうするんだろう、と考えてしまった。
きっと「入院しているらしい」という噂だけ聞いて、「本当なのかしら?」「何の理由で入院してるのかしら?」と気になっていたんだと思う。
理由を聞いて自分の疑問が解決できたから、それ以上は何も言わなかったのだと思った。

それ以来、私は同僚に対してなんとなく心を閉ざしてしまった。
職場では疲れたところや悩んでいるところは出さないようにしようと気を張っていたこともあってか、一気に精神的な疲れが出てしまって仕事に行くことすら嫌になってしまった時期もあった。

他人の好奇心に傷つけられたような気分になってしまったのだ。
私は、同僚がどんな気持ちでそのことを聞いてきたのかと考えてしまった。
その同僚とはそれからも普通に接しているし、関係が悪くなったりもしていないけれど、時々思い出して沈んだ気持ちになっていました。

でもそれから数日が経って、ふと思った。
そんなことを考える必要はないのだと。
そんなことで悩むだけ無駄なんだと。

心から心配してくれる人もいると思う。
ただの興味本位で声をかけてくる人もいると思う。
可哀想と思う人もいるかもしれない。

でも、そんなことはどっちでもいい。
他人の言葉を、どんな真意があっての言葉かといちいち考えていたら疲れるだけだ。
私は聞かれたことだけを、事実だけを答えようと思った。
その後、他の人からも何度か同じことを聞かれましたが、特に何も感じなくなってきた。

他人の優しさを素直に受け止められない人と思われるかもしれないけれど、特に親しくもない人が声をかけてくる理由が、優しさなのか、そうじゃないのかを区別することにもエネルギーを使う。
それならば、いちいち考えずに全て好意的に受け止めて、あとは深入りしない、疑わない、それだけで随分と楽になった。

心配事があるとどうしてもナーバスになってしまって、あれこれと複雑に考えてしまうけど、あれこれ考えるべきことと、考えなくていいことの分別も必要だと思った。
自分の心を守るために。

どんな時でも優しくしてくれて、助けてくれる人たちには感謝。

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