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映画『くれなずめ』の公開日がくれなずんじゃって悔しいから感想書く

4月の映画館は成田凌でできている、みたいなとこあるじゃないですか。

『まともじゃないのは君も一緒』、『ホムンクルス』、『街の上で』、そして『くれなずめ』がやってくるわけです。正気か。このペースで良作量産されちゃうと破産しちゃうからさ、ほんと。ほんとありがとうございます。

『くれなずめ』に関してはこの予告がとってもバカでくだらなくて楽しそうで、ちょっとテンション上げたいなというときにリピートしていました。ほんの出来心で自分のツイートを遡ってみたら、解禁初日から公開を心待ちにしすぎてしょっちゅうつぶやいていて気持ち悪かったです。私が。

ところでこのサムネの男6人ずらっと並ぶ画、似てませんか?

『あの頃。』ですね。

男たちの青春わちゃわちゃ系の邦画ね、はいはい、と思っていると火傷するよ! というバカで愛すべきとってもヘンな映画たち(褒めている)。どちらも時間の共有と喪失が描かれているので似ているような、そうでもないような。でも最後に背中をそっと支えてくれるようなやさしさは似ているな。あと両方に若葉竜也が出ている。どっちも好き。

試写会でいち早く観ることができたのに、感想を書くのがどうも苦手で下書きをたっぷり熟成させてしまったけれど今日はこの映画について好き勝手に書きたいと思います(なお『あの頃。』について書いたものはこちら)。ネタバレはしません。

映画『くれなずめ』
監督・脚本:松居大悟
出演: 成田凌 若葉竜也 浜野謙太 藤原季節 目次立樹 /高良健吾
主題歌:ウルフルズ「ゾウはネズミ色」
公開日:2021/5/12(水) ← 延期(近日公開) ← 21/4/29

※2021/5/10追記ここから※
公開日が5/12(水)に決まったぞ!おめでとうございます!!!(涙)

※追記終わり※

とても雑なあらすじ

高校時代、帰宅部仲間でつるんでいた6人はアラサーになり、久しぶりに友人の結婚式で余興を披露すべく集まった。用意した「赤フンダンス」——はスベりにスベってだだスベりに終わった。意気消沈しつつ披露宴から二次会までの3時間を持て余しながら、それぞれが学生時代に思いを馳せる。そこには彼らが目を背けてきたとある過去があった。

というかちょっと聞いてほしいんだけど

まさにこれを書き始めたときに公開延期のお知らせが発表された。公開までくれなずんじゃうのかよ。仕方ない。仕方ない。けど、いちファンの立場でも悔しいなあと思う。作り手のみなさんの悔しさは如何許りか。

※2021/5/10追記ここから※
映画『くれなずめ』の公開日は5/12(水)です。
映画『くれなずめ』の公開日は5/12(水)です。
映画『くれなずめ』の公開日は5/12(水)です!!!
※追記終わり※

この絵は可愛いから消さないでほしい。

せっかく延期するならさ、万全を期したタイミングで映画がどかんとヒットしてほしいな。成田凌も今年こそブレイクするって言ってたしブレイクしちゃえばいいよ(もうしてると思うけど)。というかする。させる。面白かったから。

単刀直入に言って男ってバカだなあっていう映画。あ、石が飛んできそう。

徹頭徹尾アホで下ネタでしょうもなくて笑えて笑えて、でもちょっと泣きそうで、感情の溢れるぎりっぎりのラインを走り続ける96分はまさにくれなずむ空そのものだ。

アラサーという人生にいくつかある「狭間」の時間

くれなずめ
日が暮れそうでなかなか暮れないでいる状態を表す「暮れなずむ」を変化させ、命令形にした造語。
映画『くれなずめ』オフィシャルサイトより)

アラサーって、まだまだ若者でいさせてほしい気持ちと迫り来る大人の事情とに折り合いを付けていく狭間の年齢だと思う。

社会人として少しずつ責任を伴う立場になってきたり、結婚して家庭を持ったり、そうやって持ち物が増えてくると「この後どうする?」の呼びかけがちょっとだけ重くなったりする。青春時代を共にした仲間と再会すると一瞬であの頃の自分に戻ったような気持ちになるけれど、ふと自分の荷物のことが気になって「また今度ね」とか言っちゃう。そんなの言いたくないくせに。

年齢を重ねていろいろな経験や大事なものが増えているはずだけど、こういうときにはたしかに得たものよりも失ったものの大きさに気付いてしまうのだ。

映画の中で男たちが失ったのはとても愛おしくて離れがたくなるような時間で、彼らはそれに必死にしがみつく。失ったことにすら気付かないふりをして、へらへらして。しょうもない下ネタで笑って、時にはちょっと無理して笑って、バカみたいにはしゃいで、赤いフンドシで踊り狂う。巻き戻せない時間に押し流されながらみっともないくらいにくれなずむ。

でも別にこの映画はちゃんと向き合えよとは言わない。くれなずんでいてもいいや、曖昧なまましがみついたっていいや、ただ前を向くことさえできれば。

よしお、でもなく、義男、でもなく、「吉尾」

成田凌演じる吉尾はこの作品の主人公だけど主人公っぽくないなと思った。彼についてはある前提があるわけで——まあ予告を見れば分かるからネタバレでもなんでもないしはっきり書いていいんだけどなんとなく気に入らないからある前提って言っておく——メインの6人の中で一番つかみどころがなくてふわっとしている。でもどうしてだかみんなの心の真ん中にいて、やっぱり主人公だった。

優しい性格で、ちょっと存在感が薄くて、でもみんな吉尾のことが好き。たまにちょっとムカつくことを言う。吉尾のくせに。そして、誰かにとっての吉尾は、ほかの誰かにとっての吉尾ともちょっと違っている。その訳は映画を観ると分かるんだけど、人間の記憶なんていい加減だな。「過去なんて好きに書き換えればいい」その言葉は吉尾のとびきりの優しさだと思った。

この「ちょっと違っている」加減が絶妙で成田凌はずるいなあと思っていたのに、どこかのインタビューで演技プランみたいなのはなかったと言っていて、やっぱりずるいなあと思った。ちなみに私が一番好きだった吉尾は冒頭と、夜中に歯磨きしながら「ウルフルズは最高だよ」っていうくだり。

つーか吉尾って苗字かよ。

間に合わなかったことと失うこと

この作品は何かに間に合わなかった人へのメッセージであると思っている。

あのとき1本前の電車に乗っていたら。あのとき電話に出ていたら。あのときあと30秒早くチケットを買えていたら。あのときラーメン屋の行列に1人分早く並んでいたら。

間に合わなかった、というのはつまり何かを失うことでもある。たとえば快適な自宅のベッドでの睡眠。友達からの「飲み行かない?」の誘い。推しの舞台挨拶。つけ麺。そんな間に合わなかった後悔をこの映画では思いっきりやり直してくれる。このシーンがめちゃくちゃ良くて私は泣きそうで、でも絶妙に泣けなくて、その理由はまあとにかく観てほしい。

おわりに

え? このままだとエンタメや芸術が死ぬって?

ばかやろう、なに言ってんだ死なせるかよ。ひとりひとりの「楽しみ!」の声が文化支えてんだよ。生み出すだけが文化じゃないよ。文化は死なないよ。

私は自宅軟禁から解放されたらGoToシネマでGoToホールでGoTo本屋でGoTo美術館でGoTo温泉したいんだ。めちゃくちゃ忙しいねえ。楽しみだねえ。だから健康第一で生きていなくちゃね。

とりあえず、楽しみな映画はFilmarksでclipするよ私は。公開したらまた観に行きます。


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