ガチガチの野球部に惹かれている


他の部活に比べてやたら野球部だけは特別視されていて、メジャー競技の中でも特に癪に触っていたのは事実だった。それと並行して、見るからに過酷で泥臭い練習を毎日凝りもせず続けられている野球部員に惹かれていたのも事実だった。
つい数日前に再開した後輩の男の子は、偏差値で名の知れた国立大の四年で、小学校から今までずっと野球を続けているのだという。昔初めて会ったときにそのことは知らされていなかった。
まっすぐ澄んだ目をして、体育会系の鏡みたいな受け答えをして、ペースの読めない子だった。僕が毛嫌いするヘラヘラと仲間内で下世話に騒ぐ野球部とは相反している彼の、普段のテンションはローで一辺倒の彼の、その目に火が灯る試合風景というのを一目見てみたいと強く思うのだった。余裕のある笑い方。会話の最中でもどこか違う何かに耽っている視線。いつも、なんだか、「そんなことより」というような、別の熱の発散場所へ意識を集中しているかのような、そういう佇まいに、心底惹かれてしまうのだった。スカしてるとかカッコつけているとかじゃなく、マジで興味がないのだろう、勉学と、野球以外のことに。そう明らかに思わせる。惹かれると惚れるは同義だろうか。頭から彼が離れない僕を他所に、彼は僕のことなど微塵も思い出さずにまた今日も汗を流しているのだと思うと、またそれを引き金に僕の胸は波立つのだ。



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