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「妊よう性」という問題について -若年性がん患者が直面する問題-

おはようございます。乳がん闘病中のまいです。

今日は、「妊よう性」について書いておきたいと思います。先日、新しい病院で話を聞いてきたこともあり、一度しっかり記しておきたいと思ったテーマ、「妊よう性」。


聞いたこと、ないですよね。

私も自分が乳がん患者として当事者になるまで、聞いたことも、考えたことすらなかった。


妊よう性とは?

「妊よう性」=妊娠することのできる力

(参考:国立がん研究センターがん情報サービス 「妊よう性 はじめに」)


生殖に関わる臓器にがんが出来た場合でも、そうでなくても、可能性として「妊娠する力」が失われたり弱まったりすることがあるのです。

男性の場合でも女性の場合でもあり得ます。

特に女性の場合は、妊娠可能な年齢があるのでシビアな問題になってくるん。


がんは年取ってからの病気だって、ずっと思ってた。

早くても、40代くらいでしょ?

まさか、自分が30代でがんになるとは。

10代、20代でもがんになる人だっている。競泳の池江里佳子選手もそう。

少数だけれど、いるんです。

でも、少数だから、あまり問題として挙がらない事実。

「妊よう性」を担保しながらがんの治療を行うこと。


なぜ、がんの治療で「妊よう性」が失われたり弱まったりするんでしょう?

乳がんの場合は二つのケースがあります。


①抗がん剤治療を行うことによる妊よう性への影響

抗がん剤治療を行う時、使用する薬によって卵巣の機能が一時的に衰えます。

薬で治療中の時だけ妊娠できないものや、治療が終わった後も影響を残すものがあります。

また、その影響には個人差があり、年齢が若ければ卵巣の機能が回復する可能性もあるようです。一概には言えませんが、影響がある可能性を考慮して治療に向き合う必要がある、ということです。


抗がん剤治療の副作用のきつさについては一般的に知られとりますね。

髪が抜けたり、吐き気を催したり、日常生活が厳しいほどの副作用が出る場合もあります。これも個人差があって、そこまでつらくなかったという人もいるようです。自分の場合、どうなのかが予想できないので不安があおられるんですよね。

抗がん剤治療の時は、副作用があまりにも強い時は薬を変えたり、漢方などで副作用を緩和したりできるようです。


そういう身体に症状として出てくる副作用とは別に、卵巣の機能が影響を受ける場合があり、それが妊よう性に関わって来る、ということなんですね。


②ホルモン療法を行うことによる妊よう性の影響

乳がんの治療で最も身体への負担が少ない治療方法が、「ホルモン療法」です。

乳がんにはいくつかタイプがあり、女性ホルモンを餌にして増殖するタイプの乳がんの場合、女性ホルモンを薬によって止めることで悪化を防ぎます。

ホルモン療法は長期に渡ることが多く、5~10年が標準的なスパンです。

閉経前と閉経後で使用する薬が異なり、他部位への転移や年齢によっても使用する薬が若干異なるようです。


一番メジャーなのは、女性ホルモン「エストロゲン」が乳がん細胞に働くのを阻害する「抗エストロゲン剤」(経口薬)。

私はこれに、LH-RHアゴニスト製剤という「エストロゲン」の産生を低下させる薬(皮下注射)を併用しています。


ホルモン療法について、詳しくは以下のサイトをどうぞ↓

(参考:乳がんの情報サイト 「ホルモン療法(内分泌療法)」)


さて、ホルモン療法を行うとなぜ妊よう性に影響が起きるのか、ということですが。

ホルモン療法を行っている時に妊娠すると奇形児の可能性が高くなるため、妊娠を控えなくてはなりません。

治療中は妊娠できないのです。


服薬を一時中断して妊娠を希望する場合もあります。その時は服薬を止めてもすぐに薬の影響がなくなるわけではないので、3ヵ月は妊娠しないようにしなくてはならないとか。


私の場合、今現在35歳。

ここから最低でも5年はがっつりホルモン療法が必要だと言われました。

そうすると、40歳。

さらにそこから追加で5年、抗エストロゲン剤を飲み続けた時、45歳。そこで服薬を止めても妊娠可能な年齢はとっくに過ぎています。


いつ乳がんになるのか、ということと、治療方法によって、妊よう性が影響を受けるのです。



③その他のがんの治療によって妊よう性に影響が生じる場合

卵巣や子宮にがんができた場合、臓器を摘出することで妊娠できなくなることがあります。

放射線治療を行うことによっても、妊よう性への影響が生じるようです。

詳しくは、以下のページをご覧ください↓

(参考:国立がん研究センター がん情報サービス 「妊よう性 女性患者とその関係者の方へ」)



妊よう性温存のために

「妊よう性温存」とは、がんの治療に入る前に予め妊娠する力を残す処置をしておくことです。


具体的には、

・卵巣凍結保存(卵巣を取り出して凍結保存しておく)

・未受精卵凍結保存(卵子を取り出して凍結保存しておく)

・胚(受精卵)凍結保存(卵子を取り出して精子と受精させてから胚の状態で凍結保存しておく)

の三つの方法があります。薬物療法が終わり、妊娠可能な状態になった時にこれらの凍結した卵巣・卵子を用いて妊娠を試みます。



ただし、結構確率低いんですよ、妊娠できる確率。

未受精卵の場合、10%

胚凍結の場合、30%と言われています。



そして、高額。なぜなら、保険適用ではないから。

都道府県によっては助成を受けられることもあるけれど、基本的には自費診療です。

凍結にお金はかかるし、もちろん、それを融解して実際に妊娠するときも体外受精になるわけなんで、そこでもお金がかかる。


卵子凍結については25~30万くらい、凍結した卵子を保存するのに1年ごとに1万、実際に体外受精をするときに5万かかります。(概算ですよ)

卵巣凍結はもっと高い。凍結手術に60万、融解して自家移植にさらに60万。卵巣凍結はやってくれる病院も少ないんじゃないかな。がんの診断を受けて治療までの時間的猶予がない場合に選ばれるそうです。


菅首相、不妊治療の保険適用、頑張って進めてください~~!

世の中の多くの人が待ち望んでいますよ。

(参考:日本がん・生殖医療学会 「妊孕性/妊孕性温存」)



妊娠するということ

35歳になるまで、「妊娠」ということについてほとんど考えてこなかった。

結婚、ということとほぼ同義なんだけれど。

いつでもできると思ってた。


そんなことないんです。

女性は卵巣の機能が徐々に衰えていくから。

35歳過ぎると自然妊娠は難しい。

不妊治療をしても、43歳過ぎると妊娠は絶望的。

子どもが欲しければ、妊娠したければ、きちんと自分の年齢と向き合っていかなあかんかった。


今の時代、もっと若くても不妊治療をせぇへんと子どもを授かれん人もようけおる。

私だけやないけれど。

乳がんだということで、確実に選択肢が狭まる。


それって、この先、自分がパートナーを見つけて結婚を考えた時に、必ず障壁になってくる。

もちろん、相手が全く気にしない場合も考えられるでしょう。

それが障害になって話がうまくいかんかったら、そこまでだったってことでしょう。

そんなん、頭では分かっとるん。「パートナー」って、そういうんもひっくるめて受け入れてくれる人のことやと思うから。


それでも、心理的な負担になってくる。

ただの友達に話すのとは、わけが違う。

ただ聞いてもらえばいいわけじゃない。

相手にもその重荷の一端を背負わせること考えると。

どうしても躊躇する瞬間が出てきますよね。

相手のことを想うからこそ、言えなくなる。言うのがつらくなる。



いつか、それを乗り越えて、私の人生を支えてくれる人と巡り会いたいと思ってますけど。

そのためには、まず、自分自身の心を乗り越えなあかん。



ホルモン療法の中断と再発の危険性について

ホルモン療法のやめ時や、妊娠するために中断することについてはまだ研究が進んでいなくてはっきりとしたことが言えない。

「腫瘍」という目に見えるサイズになっていれば、摘出したり抗がん剤治療でやっつけたりすることができる。

ホルモン療法の場合は、まだ「腫瘍」になりきっていない小さながん細胞が、この先「腫瘍」に育つのを妨げる、という治療方法。

だから、1年くらいの中断が及ぼす危険性や、薬の服用を止めることによって再発にどのくらい影響を与えるかって、ほんまに人それぞれ。

つまり、「止めてみないと分からない」ってことなん。


だから、お医者さんはできるだけ長い服用をすすめる。


その間、妊娠することはできない。




ところが、新しい転院先はホルモン療法で治療中の女性が妊娠を希望する場合、その希望が叶うように相談に応じてくれるらしい。

まだ研究段階なのではっきりとした結果は出ていないけれど、1年半から2年はきちんとホルモン療法を行い、その後一時中断して妊娠を試みることも可能。

だから、プライベートな話だけれど、パートナーが出来て妊娠を希望するような時は、遠慮しないで言ってください、と。



病院側も難しい判断ですよね。

私が薬を中断することで、がん細胞が活発化してその後再発する可能性だってあり得る。

でもその危険性を鑑みて、人生でこれを逃すともうないっていう「妊娠する機会」を失うかもしれない、というリスク。


人によって、人生に望むものは違う。

私が子どもを望まなければ、自分の命を優先して治療に専念すればいい。


まだこの先、そういう事態が訪れるかどうかは分からないけれど。

一度狭まった選択肢が少しだけ増えた、ということが救いなのです。



あなたの希望を叶えてくれる病院が、どこかにあるかもしれない。

探すのは大変やけど。

希望があるなら、それを捨てないで、どうすれば叶うのか探してみてもいいのかもしれない。

希望が叶うからって、別にその通りにする必要はない。

選択肢が増える、ということが生き方を自由にしてくれるから。

ただそれだけで、心が軽くなるから。

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