読書レビュー:医学「最新医学でわかった突然死にならない方法」
突然死とは、24時間以内に亡くなる病気で、日本では年間10万人=死亡総数の約2割に相当するようです。
おすすめの運動などはさておき、図解や最新数値が非常に分かりやすい今年秋刊行の本です。
日本人の死亡原因1位はがんより血液の病気
厚生労働省によると、日本人の令和1年死亡原因は2位から圧倒的な差をつけて1位のがん(悪性新生物)。
<主な死因別にみた死亡率>
1位:悪性新生物(がん)27.3%
2位:心疾患 15%
3位:老衰
2016年まで3位は肺炎だったのが、今は老衰に。治療を行うより自然な死を受け入れるようになったと推測されます。
しかし、世界の死亡原因は、
<世界の死亡原因トップ>
1位:虚血性心疾患
2位:脳卒中
〜〜〜がんは6位で肺がん
なぜなら、世界の統計は疾患別になっているから。
そこで、日本も胃がん肺がんとまとめず疾患別にしたところ、
1位:虚血性心疾患
2位:脳卒中
と、世界と同じランキングに。(グラフの見方を変えて主題を引き出す巧妙なテクニック)
この2つはいずれも血管の老化による動脈硬化が引き金になって起こる突然死がほとんど。血管病による死亡率は年々下がっていますが、後遺症が残ることもしばしば。
そもそも血管の病気とはどんなものでしょうか。
医者が語る人体
ここが著者の本領発揮です。血管の長さや冠動脈、動脈硬化などを図解で分かりやすく説明。面白いので本で読んでください。
冠動脈とは、大動脈の根本から心臓にかぶさるように表面を走る血管です。この冠動脈の流れが悪くなり、詰まってしまうと突然死につながる心筋梗塞や狭心症を起きます。
冠動脈バイパス手術
突然始まる医療ドラマのよう。「狭心症」、「カテーテル」、「バイパス」、「術式」…医療ドラマで聞いたことある!とドラマ好きをわくわくさせる言葉のオンパレードです。
バイパス:体の他の部分の血管を使い、狭窄部の前後を繋げ新たな通路(バイパス)を作る手術
冠動脈バイパス手術は、後述のカテーテル方式が使えない心臓の手術に使われるようです。ドクターXで、主人公がこの難しい手術をしていたような…
カテーテル方式
他にも、直径2ミリぐらいの細い管(カテーテル)を動脈に挿入する方式も。術式は2タイプあります。
1)バルーン拡張術:
カテーテルに縮んだバルーンを刺し、狭窄部で膨らますことで血管を通常のサイズに押し上げること。以前はこちらが主流だったが、時の経過で狭くなることもあり、2)が行われるように。
2)ステント留置術:
ステントとは、ステンレスやチタンなどの金属で作られた網目状のチューブ。バルーン拡張術のように狭窄部まで移動させ、ステントをつっかえ棒のように開いたまま血管に置いておく術式です。
諸悪の根源プラークとは?
プラークは、血管内皮に血液中の脂肪や悪玉コレストロールが付着し、マクロファージという細胞がそれをら食べ始めた結果、血管の内側に付着して作られる、要は血管を狭める邪魔者です。
<プラークができる原因>
・運動不足
・食べすぎ(腎臓が脂質を血管内に流してしまう)
プラークができると、血液に纏わる疾患の危険性が高まります。
・動脈硬化
動脈が固くなり老化。血液を上手く送り出せず、心臓に負担がかかる上、硬いともろく破れやすくなる。
・狭心症
動脈硬化で血管が狭まると、酸素と栄養が心臓の筋肉に不足し胸の痛みや激しい動機に。激しい運動の後などに起こる。血液が90%狭まっているとなりやすい。
安静にしていると10分〜15分でおさまるが、強い痛みの場合は受診を。
そして一番怖いのが、心筋梗塞です。
心筋梗塞が起きる流れ:
・何かの拍子にプラークが剥がれたり破裂
→体の当然の防衛反応で、その部分を修復しようと血小板や白血球が集まり、血の塊である血栓を作る
→血栓が大きくなって血管を完全に塞いでしまうと、血が止まり酸素の供給がストップして心筋細胞が壊死。
この血栓が心臓周りの冠動脈で起きるのが心筋梗塞、脳の動脈で起きれば脳梗塞です。
いずれも心臓や脳が悪いのでなく、血管が悪いのです。
恐るべき事実は、前述の狭心症が塞がり具合90%と重傷そうなのに対し、こちらは25%の塞がり率の状態が一番発生しやすいということ。
血管の内膜には痛覚がありません。血液の病気がサイレントキラーと言われる所以です。
血液の健康が鍵
どうすれば血管の病気を防ぐことができるのでしょうか?血管を健康的にさらさらにするというのが鍵ですが、それを阻害する要因は、
<血管事故の4大危険因子>
1)高血圧
2)脂質異常性
3)糖尿病
4)喫煙
健康診断では、声なき血管の状況を把握することも重要です。
<要チェック項目>
1)高血圧:上の血圧 140以上
2)脂質異常性:LDL(悪玉)コレストロール 140以上
3)糖尿病:ヘモグロビンA1c 6.5%以上
この3つが基準値を超えたら、医療機関の受診も検討すべきとのことです。
肝心の予防方法が気になったら、本著を手にとってみてください。分かりやすい図とともに解説されており、日頃から気をつければできることです。
なお、血管の健康状態は免疫に通じる内容もあり、
おすすめの取得するべき栄養素など本著を読むことで、網羅的に理解できます。
心臓の負担削減には、血流を心臓に戻すポンプの役割を果たす第二の心臓と呼ばれるふくらはぎのトレーニングもかかせません。
所感
簡素に伝えているところもありながら、心臓や人体図も使い具体的に説明していて分かりやすい。
おすすめの食材などあり、栄養辞典を片手に読むと献立もイメージできるかも。
食事方法が気になったら、こちらの医者が教えるシリーズも楽しめると思います。
余談ですが、血管や心臓のサムネイルがなかなか見つからず、血小板のイラストを選択しました。これはこれで色鉛筆とビーズの重なりが綺麗ですね。
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