小島舞子:本とサービス開拓好きなSaaS社長

マネックスグループ子会社でAI/DXの企画開発を行うクラフター代表取締役。2022年7…

小島舞子:本とサービス開拓好きなSaaS社長

マネックスグループ子会社でAI/DXの企画開発を行うクラフター代表取締役。2022年7月にマネックスグループにM&A。フルリモート組織。 仕事ブログ https://maikocloud.substack.com/

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<ネタバレ注意>読書レビュー&考察:市川沙央氏「ハンチバック」

第169回芥川賞受賞作品である本著。健常者が持つ特権性への指摘が刺さりますが、テーマ性が他にもあると感じたのでレビューします。 ネタバレ含まれます いきなりネタバレ含みます。 『ハンチバック』を読んでから、本Noteを読んでください。 あらすじ まずざっくりとしたあらすじから。 ネタバレ含みます。 いいですね? ↓↓ 「私」は、親が遺してくれたグループホームに暮らす身体障害者である井沢釈華。井沢の背骨は極度に湾曲し、自分の足で歩くことはできない。零細Twitterアカ

    • 読書感想文:政治「女性のいない民主主義」

      「政治家」「国会」と聞くと、スーツ姿の男性ばかりが思い浮かぶのではないだろうか。 民主主義とは、古代ギリシャに由来するデモクラシー、つまり「人民の支配」という意味を持っていた。その時代には人民と言えば男性のことを指していたが、今日では人民の中に男性もいれば女性もいる。 ところが、日本では男性の手に圧倒的に政治権力が集中している。日本の民主主義は、女性のいない民主主義であると提言する。 民主国家であるはずの日本で、男性の支配が行われているのかを本著で研究する。 日本特有の

      • 読書レビュー:「年間4万人を銃で殺す国、アメリカ」

        今年の大統領選を控える中、アメリカの文化を分断する銃社会についてのインタビューを交えたレポートです。 日常的に起こる銃撃事件 銃所持の権利ばかりが主張され、銃の所持が事実上野放しになっている。 米国に出回る銃は、4億3300万丁。米国人口3億3200万よりも1億多い。民間所有の銃の数が人口より多いのは、世界中で米国だけだ。 世界の人口の4%ほどの米国が、世界の銃所持者の40%を占めている。 銃暴力の被害も甚大だ。 2020年には毎日124人が銃で死亡したことになる。

        • 読書レビュー:社会学「女ことばってなんなのかしら?」

          日本の小説を読んでいると、登場人物の女性は下の名前、男性は上の名前をで呼ばれる。文法のルールのように、小説では繰り返し見られる表現だ。 年代が若い著者だとそのようなルールを適用せず表現しているので、疑問に思っている人も少なくないのだろう。 そのような書き物における性差別と、女ことばの歴史と他言語との違いを解説する良本。 女言葉の起源 女ことばの特徴とは何でしょうか。次のようなことば遣いが挙げられる。 これらの言葉は、古くからあったものではない。 女言葉と認識している「

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        <ネタバレ注意>読書レビュー&考察:市川沙央氏「ハンチバック」

          読書レビュー:人文「シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント」

          副題のカテゴリーをビジネスにするか悩んだが、内容は概念的なので広く人文とする。 AngelistのファウンダーでXでは最もファンの多いシリコンバレーの投資家で哲学者で思想家(?)でもあるナヴァル。 彼の言葉をまとめたのがこの本だ。SNS(主にX)から取得した言葉なので、断片的で文脈がつかめないこともある。当時の世相を反映したツイートもあり、文章以外の意図が含蓄されていることは否めない。 ただ、彼の言葉をトリガーにふと想像が開いた箇所もあり、本Noteではそれらの言葉を引用し

          読書レビュー:人文「シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント」

          読書レビュー:ビジネス書「『見えない資産』が利益を生む」

          本Note初のビジネス書レビューな気が。ビジネスという視点だけでなく、法律やIT企業のビジョンを比較できて面白い。 知財ミックスとは? タイトルにもなっている「知財ミックス」。著者は、以下のように定義している。 多様な知財の集合体である知財ポートフォリオをつくって知財ミックスを実現し、明確な方針に向かって事業を展開するビジョン経営を実践することが、これからの企業に不可欠だと説いている。 将来の予測が難しいVUCA時代に、自分たちが目指すビジョンを打ち出し未来を先取りし

          読書レビュー:ビジネス書「『見えない資産』が利益を生む」

          読書レビュー:医学「健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと」

          とても分かりやすいタイトルに忠実な分かりやすい内容。単なる生活指導に終始せず、生化学や解剖学を用いて身体の仕組みを解説しており、納得感がある。 血管の詰まり「プラーク」 諸悪の根源であるプラークについては、突然死を引き起こす元凶として紹介している。 その元凶として、肥満や生活習慣の乱れを解説しているのがこのNote。 本著では、より構造的な血液と各内臓の役割を解説する。 血液が全身の細胞まで届く道のり プラークが発生するには、長寿化し生活習慣が乱れてきた昨今が大き

          読書レビュー:医学「健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと」

          読書レビュー:社会学「銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎」

          歴史・社会学好きには昔からのヒット本である本著のまとめ。 人類社会の発達と、今世界に明らかな格差はどうして生まれたのか?という問いに、氷河期が終わった1万3000年前からの人類史をフィールドワークを踏まえて解説します。 生活スタイルの大きなシフト 食料については、狩猟から農耕民族へのシフトが最も影響力があるでしょう。遷移した背景はサピエンス全史でも紐解かれています。 狩猟民族は、特定の集団で動けるよう人口をコントロールしていました。農耕民族は、狩猟民族よりも数倍の子供

          読書レビュー:社会学「銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎」

          読書レビュー:社会学「介護する息子たち」

          介護市場では主なプレイヤーとして扱われがちな女性。 本著は、女性を主軸でなく、文字通り介護をする息子たちに焦点を当てた本。しかしながら女性のケア労働も見落とすことない徹底した調べぶり。 息子と要介護高齢者への虐待の関係 介護高齢者が虐待に合うニュースを目にかける人も多いでしょう。 残念ながら虐待加害者のツートップは、主な介護担い手として想定する女性でなく男性です。 逆に被害者となると偏りがあり、母親が80%を超えている。 男性による女性への暴力とも言えると筆者は綴る。

          読書レビュー:社会学「介護する息子たち」

          読書感想文:医療「やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える 減量の科学 (文系シリーズ) 」

          減量に興味がない人も、生理学や栄養学に興味のある方はぜひ。 そもそも人間はなぜ太るのか? 原始時代から暮らしていた人間にとって、食糧は常日頃から接種できたわけではありません。食糧を得られた時に体に栄養素を脂肪として蓄える人間の生きる術が、飽食の先進国を中心とした国での肥満に繋がる結果となっています。 太る原因には、以下があります。 1)過食 2)運動不足 運動不足によって筋肉量が減ることで消費エネルギーが減少します。男性なら体重の40%前後、女性なら体重の35%が筋肉量

          読書感想文:医療「やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える 減量の科学 (文系シリーズ) 」

          読書感想文:国際政治「女たちのベラルーシ」

          ベラルーシと聞いて、地理や特徴を思い浮かべる日本人はどのくらいいるだろうか。 ヨーロッパ諸国でもベラルーシは「ヨーロッパの空白地帯」と呼ばれており存在感の薄さは否めない。しかし、2020年コロナ禍、ベラルーシ首都ミンスクで世界を揺るがす独裁政権に対する抗議活動が起きた。 その抗議活動の経緯と発端と波及をまとめたのが本著だ。 今年一番面白かった本(約100冊中の一番)。ぜひ手にとって読んでほしい。 ヨーロッパ最後の独裁国家 今でこそ独裁者として有名なルカシェンコは、199

          読書感想文:国際政治「女たちのベラルーシ」

          読書感想文:経済「なぜ女性の賃金に格差があるのか」

          今年のノーベル経済学賞は、巨大市場にも関わらず無視されてきた分野がやっとスポットを浴びました。2023年ノーベル経済学賞を受賞したゴールディン氏の著作を紹介します。 結論から言うと、今年のトップ3に入る面白い本です。 女性が財産権も参政権も持てず二流国民として見做されていた時代から、現代では様々な職種で女性が登場し、職場での男女平等がようやく見えてきた世界になりました。 ちなみに、人権が白人男性にしかなかった歴史学はこちら。 それでも、収入の差は変わらず存在します。国

          読書感想文:経済「なぜ女性の賃金に格差があるのか」

          読書レビュー:医療「名医が教える男性妊活の最強辞典」

          男性向けの不妊治療の本です。 そもそも不妊とは? まずは不妊の定義から。 よく知られていることですが、不妊の5割は男性側にも原因があることが分かっています。不妊治療をする際に、女性だけが婦人科に通院するのでなく、男性自身もクリニックで検査し不妊に対して「予防」しておく必要があります。 3人に1人が根拠はないが自分の精子は問題ないと思っている にもかかわらず、本著によると精液検査をしたことある人が13%のみ。 精液検査未実施理由の第一位は、「自分に問題があると思わない

          読書レビュー:医療「名医が教える男性妊活の最強辞典」

          読書感想文:自己啓発「DIE WITH ZERO」

          2020年のベストセラー、今更読んでみました。 「ゼロで死ね」とは? 結論から言うと、 ということです。著者の言葉を借りると以下。 事実、老後のための貯蓄はほとんど使われずに終わると言われています。 70代になっても、人々はまだ未来のためにお金を貯めているのです。 高齢者は医療費を考えて貯蓄する傾向にありますが、世帯全体の支出は医療費を含めても年齢とともに減少します。 つまり、人々は自分の資産を取り崩すのが遅く、現役時代に「老後のために貯蓄する」と言っていても、い

          読書感想文:自己啓発「DIE WITH ZERO」

          読書レビュー:脳「脳がどんどん強くなる!すごい地球の歩き方」

          地球の歩き方シリーズの変化球版。認知症の経緯が詳細に解説されている。 旅行で頭が活性化する(だから旅行に行こう!)という旅行業界の宣伝ですが、脳については日々研究のアップデートが行われている中、最新情報を得られたのでまとめます。 冒頭の脳科学以降は、地球の歩き方らしく海外旅行に行こう!という内容と、現地での楽しみ方に終始していました。 大脳辺縁系と大脳新皮質 冒頭からは、脳をざっくりと分類しています。 それぞれの脳が依存症でどう変化するか気になる方は、こちらもどうぞ。

          読書レビュー:脳「脳がどんどん強くなる!すごい地球の歩き方」

          読書レビュー:社会学「男性中心企業の終焉」

          ジェンダーギャップ指数のランキングが、年々下がっていく日本。働く女性が面する差別を、最新の情報で解析していくイチオシの本です。 コロナによって拡大した家事育児時間格差 日本では、性別役割分業が長年課題視されていました。 1990年代に共働き家庭の方が多くなっても、女性は家事育児仕事をしていた現状があり、その背景として男性の長時間労働が挙げられています。 一方、私の学生時代の友人は、ほとんどが結婚後もフルタイムで仕事を継続しています。残業が多い業界・職種の友人もいる中、

          読書レビュー:社会学「男性中心企業の終焉」