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読書感想文:医療「やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える 減量の科学 (文系シリーズ) 」

減量に興味がない人も、生理学や栄養学に興味のある方はぜひ。

そもそも人間はなぜ太るのか?

原始時代から暮らしていた人間にとって、食糧は常日頃から接種できたわけではありません。食糧を得られた時に体に栄養素を脂肪として蓄える人間の生きる術が、飽食の先進国を中心とした国での肥満に繋がる結果となっています。

太る原因には、以下があります。
1)過食
2)運動不足
運動不足によって筋肉量が減ることで消費エネルギーが減少します。男性なら体重の40%前後、女性なら体重の35%が筋肉量に当たります。

<基礎代謝量への貢献度>
筋肉:22%
肝臓:21%
脳:20%
心臓:9%
腎臓:8%
脂肪:4%
その他:16%

3)加齢
30歳以降は、太もも前側の筋肉(大腿四頭筋)の場合何もしなければ1年に約1%ずつ筋肉が落ちていきます。30歳から80歳までに、大腿四頭筋の筋肉量は50%ほどになる計算です。特に70歳以降は、筋肉量の減少が加速すると言われています。

肥満による悪影響

肥満によって様々な病気のリスクが上がることは誰もが知っています。理由としては、内臓脂肪から分泌されるホルモンが一因と言われています。

<体につく脂肪>
1)皮下脂肪
皮膚のすぐ下につく
2)内臓脂肪
胃や腸やお腹のまわりの内臓につく
3)異所性脂肪
肝臓、筋肉、膵臓など本来たまるはずのない場所に蓄積される

なかでも、2)の内臓脂肪が厄介です。脂肪細胞は、脂肪をためこむだけでなく、様々なホルモンを排出する内分泌器官としての役割も活発です。

肥満でない健康な人の脂肪細胞:アディポネクチン(善玉ホルモン)
肥満の人:善玉ホルモンの分泌量が減る
TNF-α(サイトカイン)などの悪玉ホルモンの分泌量アップ

悪玉ホルモンが増加すると、脳血管疾患、心疾患、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症など病気のリスクが上がります。善玉悪玉もどちらも体にとって必要なホルモンですが、両者のバランスが崩れた時に疾患になりやすいことが問題です。

太りやすい生活習慣とは?

太る仕組みがわかった今、どのように対策をたてていくかを一部紹介します。カロリーや食事内容より、時計遺伝子の存在により食事時間の影響が強いことがわかっています。

時計遺伝子:体内時計をつかさどる遺伝子
朝になると活動を始め、夜になると眠くなる働き
栄養の吸収にも関わる

時計遺伝子の一つにBMAL1があります。BMAL1は脂肪の合成を促す働きがあり、つまり脂肪を作ることが仕事です。BMAL1は1日周期で変動しており、夜の10時から夜中の2時頃が最も高くなります。
ダイエットのため夜遅い食事は控えるとよく聞きますが、夜は脂肪の合成が活発になることが理由です。

所感

1,2章は生化学や栄養学に基づいた人体解剖学を勉強できる。文系向けと言いつつも、ホルモンや酵素ビタミンミネラルの要素が含まれた体内断面図が豊富に出てくる。図と解説を読まないと分からない部分もあるので、通常のハウツー本より時間がかかる。脳の消費カロリーを促してると思って楽しんで読もう。
3,4章は減量の具体的なノウハウが解説される。

最終章では痩せすぎな体は良くないというメッセージングもあり、ルッキズムに言及して終わっているところも今風だ。あくまで健康のために痩せるべきで、社会から発せられるメッセージを変えていく必要がある。

内容も男性疾患だけに問わず、割くページは少ないが女性ホルモンについても言及されている。
女性ホルモンについての予備知識はこちらもぜひ。

素材や料理にも興味を持ったら、こちらの本もぜひ。

肥満は脳梗塞という突然死を引き起こす要因でもある。特に血圧が心配な人はこちらの本もおすすめ。

コーヒーについての記述は本著ではないが、化学式でいいなと思ったので本Noteのサムネイルにした。

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