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読書レビュー:小説「倒産続きの彼女」

「このミステリーがすごい!」で大賞受賞作品「元彼の遺言状」の続編です。大人気のミステリーです。
概要と所感だけでネタバレはありませんが、気になる方は読まないでください。

とある内部通報から企業の調査を始めた弁護士チームが、予想もしない暗く血なまぐさい事件へと巻き込まれていきます。

嬉しいことに、前回の剣持先生と同じ事務所です!剣持先生の活躍はこちらから。最高に面白いのでおすすめです。

自動更新条項

契約書を一度見たことがある人なら分かる条項です。契約有効期間の満了までのX月までどちらかから終了の申し出がなかったら、契約書を自動で更新するという内容です。

この些細な条項が発端となり、巧妙な罠が暴かれていきます…!

所感

新川帆立先生の本は、読みやすいです。私なりになぜ読みやすいのか考えてみました。

矛盾しない価値観の文体

仕事小説で、平成以前に昭和の価値観からアップデートできているものは残念ながら多くないと思います。

やられたらやり返すシリーズ:
「同じ社内でなぜここまで対立するのか」「なぜ転職しないのか」「ここまで頑張る理由がプライド…?」と邪念が入ります。

異なる価値観を持つ著者が書く文章は、矛盾ばかりで疲れます

その点新川先生の本は、登場人物の価値観が(私からすると)普通です。
会議中にいきなり怒鳴る人はいません。同じ組織内で意地悪する人はいません。事件が解決したら脈絡もなく中年男性が若い女性とくっついているということはありません。

常識的な行動が前提にあるので、文中の違和感は事件に関わるヒントとなり、物語に散らばった伏線を見つけやすいということです。

プロフェッショナルな働き方

多面的に描かれる登場人物も魅力の一つですが、私はプロフェッショナルさが素敵だと思います。

登場人物は性別や年齢に関わらず、実力を評価された個人達が仕事を任されています。上司のために会議室やコピーをとるシーンはありません。スムーズな勤務体系は、物語をコンパクトにし現代に沿っています。

同じくプロフェッショナルな働き方をしている、このミス大賞はこちら。

くっきり浮かび上がる登場人物の描き方

私は、登場人物の性格を表す言動の描写が好きです。
「彼は几帳面な人だ」より、「彼の机にある物は全て定規で配置されたかのように真っ直ぐだ」のような表現が好きです。

なぜなら、このような表現が積み重なると、読者の頭の中で登場人物が意思を持って動き出すからです。

本著の登場人物は、合コンで愛想よく天然ぶったり、警察に上から目線な態度をとったりと、このキャラなら絶対やるわと想像して笑いながら読めるほど、身近なキャラとして上手に描かれています。

所感2

長くなりましたが、今回のシリーズではよりキャラが立った演出がなされています。登場人物の言動にも「あるある」と共感しながら読み進められ、主人公の成長にも心が動くはずです。

気になった方はぜひご覧ください。

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