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わたしの悩みをきいて下さい

わたしは双極性障害、障害者2級である。
いわゆる躁うつ病と呼ばれる障害だ。

躁状態と鬱状態を繰り返すという地獄のような障害である。

躁状態に入ると、正常な思考が出来なくなり妄想の世界と現実の区別が次第につかなくなってくる。

記憶障害も併発し、重症化すると、どこか知らない遠くの街で雨に打たれて歩き続けたりしているそうだ。警察官に二度と職質され、保護されたらしい。

完全に日常生活が不可能になり、安全のため入院、閉鎖病棟の隔離室に数日間隔離され目覚めると、
「ここはどこだろう?」
主治医の先生にはじめましてを言うと四日連続で会いに来ているよと言われて、記憶喪失を自覚する。

隔離から開放されると、そこから一般病棟に約三ヶ月、強制入院となる。
症状も治まっているから、三ヶ月間閉鎖され、ひたすらヒマ地獄で過ごす。

ただ、差し入れが許可されていて、塗り絵や本などや、お菓子を従兄弟が送ってくれることもある。
まるで、彼は地獄に舞い降りた神さまのようだ。

三ヶ月間ろくに空を見上げることもなく、閉鎖病棟の廊下をウロウロしたら、ようやく退院が決まる。
即、マクドナルドに直行。
何故か病棟にいた子たちはみんな退院したらマクドナルドに行きたい!と言うがわたしもそうだった。

躁状態が終わり、ようやく日常生活が送れるかと思えば今度は鬱状態である。
双極性の鬱は非常に重いという特徴があるらしい。

死んだ方がマシかも…という、説明するのもイヤな苦しみと悲しみ、虚しさと絶望感の中で、半年ほど寝たきりで過ごす。ほんの少しずつ回復する日を待って、ただただ横になっている。周りの世話になりながら、ありがとうの笑顔一つ作れない。無表情しかない。周りも気が滅入るだろうと消えたくなる。

そうやって半年が過ぎた頃から、僅かな回復の兆しが現れる。今日は切れっぱなしのスマホの充電が出来たとか、今日はお皿が一枚だけ洗えたとか、それでも大きな一歩だと、死にかけていた心を死ぬ気で動かす。希望なんかじゃない、死ぬ気でやるのだ。

やがて、着替えが出来た、お皿が洗えた、と、少しずつ少しずつ回復してはまた寝込むを繰り返しながら、文字通り血の滲むような努力をしながら、日常生活を取り戻していく。完治することはほぼない。

現在は、ひどい無気力状態で何も手につかない状況に悩まされているが、この三日間は半年間行けなかった散歩に行けている。気力は運動により回復するらしく、無理は出来ないが出来るだけ歩こうと思っている。散歩が大好きだった。今はもう、嫌いだ。

投げやりになったり諦めたりすると、どんどん回復が遅くなり地獄状態が続くだけなのが鬱状態だ。
やるしかない。前向きなどではなく後がないのだ。


わたしの持つ障害を簡単に説明させていただいた。
というのはそれを踏まえた上の悩みがあるからだ。

わたしは昨年恋をして三ヶ月目、障害もなく生きることに喜びしかなかった時期に躁転してしまった。
躁転とは、通常の状態から突然躁状態に陥ることだ。

まさかの躁転だった。

そしてわたしは恋人に見限られた(と思っている)
あんな状態では、わたしは完全に精神異常者だと思われただろう。彼の前で何をしたかは分からない。

記憶障害があるから何故彼が去っていったのか、自分のせいである可能性もあるけどもう分からない。
こんなに辛いことがあるだろうか?と思っていた。

退院したら、彼はもういなくなっていたのだ。
わたしはまたこれから続くと信じていたのに。
彼は悪くない。わたしも悪くはない。なのに。


わたしはこのときの躁転を、恋による過剰な感情の変化によるものだと考えるようになっていった。
実際に、わたしは恋をするとおかしくなるという入院患者の女の子がいたという記憶も確かにあった。

たしかにあまりにも気分が高揚しすぎていた瞬間もあった。ただしそれは彼といるときではなかった。
彼はわたしに安心をくれる人だった。この人となら、穏やかな暮らしが出来そうだなと思っていた。

恋のワクワクは、過剰に感情を昂らせてしまっていたが、それはいつもわたしが一人のときだった。
彼もそのことが分かって、俺たち、少しでも早く一緒に暮らそうと、いろいろ考え始めてくれていた。

だけど、三ヶ月ではあまりに時間が足りなさすぎた。あまりにも近くて遠い、幸せな夢だったんだ。
そんな彼がいなくなり、わたしは心にこう決めた。

『もう、恋はしない。』

またいつか恋をして躁転する恐ろしさを考えると、わたしにはもう、この決断しかないように思えた。
だけど、それはあまりにも残酷な決断でもあった。

生涯、結婚出来ないのだから。


わたしが恋をしないことに、医学的根拠はない。
主治医の先生と相談してみてもいいかとも思う。

だけどもしこの文章をここまで読んで下さる方がいるならば、わたしのこの問いに何を思うだろう?


恋したらダメな人間なんて、存在してもいいの?
結婚出来ない女として生きていく他にはないの?


わたしは普通の女の子だよ。
恋すら出来ないならば、生きている価値あるの?

そう、わたしは昔からの生粋の恋愛気質なのだ。
もちろんまたいつか恋愛がしたいと思っている。

だけどやっぱり迷ってもいるのだ。
相手に迷惑をかけるお話でもある。

誰に訊いたら答えてくれるのかな?


「わたし、また恋してもいいですか?」

その答えを聞かない限り、わたしはやはり、

『もう、恋はしない。』

そう決断するしかないだろうと思っている。

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