システム開発の擬似内製化ステップ -PM育成と外注リソース活用 -
今回は、前回の記事で言及した「擬似内製的」な開発組織について検討してみたい。
おさらい
私が過去、受託開発(SIer、SES、請負)に関わってきた中で、どうしてもモヤモヤすることがあった。
それは、実際にサービスを使うユーザーのいないところで、バグがあって誰が悪いとか、仕様について言った言わないとか、本質的でない問題に費やす時間が多かったことだ。
こういったマインドを是正して、サービスを継続的デリバリーするためにはシステム開発を「外部に受発注する」のではなく「開発チームを内製化」していくことが望ましいと考えている。
しかしながら、昨今のIT人材不足を鑑みても、(SNSでの相応の知名度がある企業を除き)そう簡単に「内製化」がうまくいかないことは百も承知。
そこで、まずは外部パートナーにも頼りながら、「擬似内製化」を目指すのが良いのではないか、と思うのであった。
ステップ1. 事業会社PMの育成
システム開発を外部に発注するにせよ、内製化するにせよ、事業会社のプロダクトの行く末を握るPMは不可欠である。ステップ2. の外注リソースを活用する場合でも、プロダクトバックログの優先順位や方向性、さまざまな意思決定をするのは自社内のPMでなければ成り立たない。
このフェーズのPMに求められていることは以下のようなことだ。
①ユーザー・ビジネス要望のとりまとめ(要件整理)
②プロダクトバックログの優先順位、方向性の意思決定
③ユーザー・ビジネス要望とエンジニアとの橋渡し
④アウトプットのデリバリー、アウトカムの評価
この背景に細かいタスクはあれど、最終的にこの4点に権限を持てていることが重要に思う。
育成という文脈では個人的見解が多いに含まれてしまうけれど、過去に育成支援させていただいた中でバックグラウンドによって大きく2パターンの特性に分けられそうなことがわかってきた。
営業・CSからの育成
ユーザーの声を一番近くで聞くプロダクトマネージャーになり得る。
営業やCS(カスタマーサクセス)の方は、すでにユーザーの声をたくさん聞いている。理想のプロダクト全体像が見えていることがある。
ユーザー要望から不要な部分を削ぎ落とし、根拠のあるプロダクトバックログへ落とし込む方法を身に着けることで、PMに求められる①ユーザー・ビジネス要望のとりまとめ ②プロダクトバックログの優先順位、方向性の意思決定 を担ってもらうことにそう時間はかからない。
エンジニアからの育成
個別具体の課題解決を得意とするプロジェクトマネージャーになり得る。
プロダクトの中身も新しい要望に対するHowもエンジニアが一番よくわかっている。
ユーザー要望をどう実現すべきか、それにはどれくらいのコスト(予算・期間)がかかるのか、いつデリバリーできるのか、リリースまでのQCD(品質・費用・納期)が抑えられれば1機能の開発PjMはエンジニアバックグラウンドが邪魔になることはない。価値検証までもプログラム化することで高速PDCAも可能にできる。
PMに求められる③ユーザー・ビジネス要望とエンジニアの橋渡し ④アウトプットのデリバリー、アウトカムの評価 をするスキルとしては十分である。
ステップ2. 外注リソースの活用
エンジニアを0から内製化するのは非常に難しい。
採用をするにしても、CTOなど1人目エンジニアが不在であれば、技術面の判断基準が社内に存在していない。
1人目エンジニア採用のハードルの高さから内製化を諦めてしまうのであれば、まずは外注リソースをうまくチームに取り入れることをおすすめしたい。
法人パートナーの場合
自社の不得意分野であり、今後も自社にノウハウを蓄積する想定がない専門業務に関しては、切り出して法人と提携する。
自社での育成を考えていない業務の場合、時間をかけて内製化するよりスポット的に外部にお願いしたほうが総コストは結果的に低くなるかもしれない。
フリーランサーの場合
直契約できるフリーランサーであれば、組織のチームメンバーとして社員同等の権限を与えて開発を担ってもらうことが望ましい。
いち専門家であるエンジニアのフリーランサーに入ってもらうことで、開発を進めてもらうことはもちろん、既存の社員がいれば社員へのフィードバックから社内的な学習も促進される。
依頼できる業務範囲によっては、社員採用時の求人内容に関するアドバイスや、技術面談をフォローしてもらっても良い。
本当の内製化の旨味
システム開発を内製化することでよくいわれるメリットは、社内にノウハウが蓄積されること、外部との取引工数を減らせること、高速かつ継続的デリバリーが可能となること、などが挙げられる。
ただし、この旨味は実際に実現した後に振り返ってこそ味わえるものであることも事実。
これらは一夕一朝で叶う話ではないので、前例に倣いながら、実績ある方に教えてもらうことは不可欠だと思っている。
変わる必要にあるフェーズに来た企業には、まず教育コストに投資する意思決定が大切なのかもしれない。
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