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【読書ログ】「エミリの小さな包丁」


ひさしぶりに小説を読んで、泣きました。
美しい「言の葉」の音色が響いて、こころが浄化されました。

最近は、自己啓発、ビジネス、スピリチュアル、量子力学…
「学ぶため」に本を読むことが多くて。

子どもの頃のように純粋に、なんの生産性も求めず、

ただただ「この本を読みたい!」っていう感覚を忘れていたなぁと。

今回読んだのは、森沢明夫さんの「エミリの小さな包丁」という作品。

以前このnoteでもご紹介した、ひすいこたろうさんのYouTubeに出ていらっしゃった作家さんです。



「エミリの小さな包丁」は、主人公エミリの心の再生を描いた物語。

恋人にだまされ、仕事もお金も居場所さえも失った25歳のエミリ。
複雑な家庭環境で育った彼女が唯一たよることができたのが、さびれた田舎の海辺でひとり暮らしている祖父だった。
傷だらけのエミリの心を、祖父の心のこもった手料理と町の人々の優しさが徐々に癒していく。
カサゴの味噌汁、鯖の炊かず飯。かぞくと食卓を囲むという幸せにふれるうちに、エミリの心に小さな変化が起こりはじめる…

ストーリーも良いのですが、個人的には森沢さんの情景描写などの文章表現が美しすぎて。
それだけで心が洗われていく感じがしました。

ついつい夢中になって、最後まで一気読み。
図書館や家で、時間を忘れて本を読むのに没頭していた小学生のころを思い出しました。

小説ってやっぱりいいですね。



ここからは少しネタばれになってしまうかもしれませんが…
私のなかで心に響いた言葉たちをシェアさせてください。

「ねぇ、おじいちゃん」
「ん?」
「神様って本当にいると思う?」
(中略)
神様ってのは、自分自身のことだ。

「第二章 ビーチサンダル アジの水なます」


常識って、なんだろう?

そもそも常識なんてものは、誰かが勝手に作り出した「幻の縄」のようなものなのかもしれない。わたしたち凡人は、目に見えないその縄に、自由な思考と心をがんじがらめに縛られていることに気付かぬまま、漠然と息苦しい日々を過ごしているのではないだろうか。

「第三章 彼女の毒 鯖の炊かず飯」


「いいかい、エミリ」
「・・・・・・・・」
自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ

「第五章 失恋ハイタッチ サワラのマーマレード焼き」


「(エミリの母のことを指して)あいつもエミリと同じで十歳で片親になった。俺がひとりで育てたんだから、出来損ないになったかも知れん」
(中略)
「釣りも、包丁研ぎも、はじめての経験ではなかなか上手くいかないもんだが、女の子を育てるってのも、すべてが初体験で、なかなか上手くいかなかったな…」
(中略)
大人も、親も、所詮は人間だ。完璧ではないし、未熟者のまま死ぬんだ。

「第五章 失恋ハイタッチ サワラのマーマレード焼き」


エミリを思いのままに動かせる万能な存在は、唯一、エミリ自身。エミリの人生を自由自在に創造していけるのも、エミリ本人しかいない。

「第六章 やさしい武器 黒鯛の胡麻だれ茶漬け」


おじいちゃんのセリフが、いちいち心に刺さりました。

そしてお話の中に出てくる、漁師メシがまたおいしそうで…
胃袋から満たされじんわり癒されていく…
そんな作品でした。

少し都会に疲れたな、というとき。
仕事も人間関係もうまくいかないな、と悩んでいるとき。

そんなちょっぴりお疲れなときにオススメの作品ですよ。

私もちょっと疲れたときに、大切に読み返したいと思います。






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