見出し画像

恋して、雨ふる、雪ふる、嵐くる。

雨女なの??

楽しみなイベントがあるたびに、雨が降った。
入学式も卒業式もいつの写真も傘をさしている。
旅行も雨が多い。
二回行った中国旅行では、二回とも雨が降っていて、万里の長城のあの大地の壮大なパノラマは見れず、霧雨で灰色の靄の中に悲しげにレンガが積まれているのを見るばかりだった。
幼いころ好きだった家族旅行のキャンプ
暴風雨でテントが壊れて避難した。

雨女の私はこれまでの経験でうすうす気が付いていた。
そして、よりテンションが高まるときは、天気も本領発揮するということを。

記憶をたどると、物語の第三の登場人物として出てくる天気たち。

恋して、雨ふる、雪ふる、嵐くる。

これは別に心象風景ってわけじゃなくて
実際起こった出来事である。

ムーディーな、しとしと雨


そもそも
デートのときの雨率は高い。
傘を持って、お出かけしていることが多いし、
最初は降っていなかったのに、途中でビニール傘買うはめになったり。
まあ、悪いことばかりではなくて、
それを口実に、一緒の傘の中に入り、あと少しの距離を縮めてみたりとか。
そんな甘酸っぱいこともあったけれど。

天気はそんなに甘いやつじゃない。
私の気分の高まりに呼応するように、天気が本領発揮する。
私の恋路を邪魔せんがために。

吹雪く初デート


寒い日だったけど、待ち合わせたときは晴れていた。
文学好きな青年と文学館での知的なデート。
資料館で黄色くなった文豪の生の原稿用紙を覗いて、達筆だなあと言うと、読めるんかなんて茶化されて。
資料を見飽きたら、隣にあるホールで何やら、詩人と作家が対談していたから、それをしばらく聞いた。
疲れたねって言って、文学館にある喫茶店でコーヒーを飲んでまったり落ち着く。
いいリラックス空間、知的デート。
いい感じじゃないかと、私はご満悦。
本に囲まれた落ち着いた空間で、店内にある本は自由に読んでよかったから、この作家知ってる? 読んだことある、ないとか話していたら、時間が過ぎる。
窓から外を見ると、まだ夕方だったけど、外がかなり暗い。
そろそろ帰ろうかと言って、文学館から出ると
ビュウビュウ風が吹いていて、足元を見れば、雪が2cmくらい積もっている。
おのおの持っていた傘を開く。
天気予報で雪が降るらしいということを知っていたから、持ってはいた。
これが、ちらちら粉雪が舞うくらいなら、寒いね、じゃあ近づこうかなんていいムードにでもなるだろうに、
可愛げのない猛烈な風と、大粒の雪が横殴り。
盾を構えるかのごとく、傘を前に出して、歩いていく。
文学館から駅までは徒歩10分ほど。大きな公園の中にある文学館のそばにタクシーを呼ぶわけにもいかない。
歩くしか。
傘が風に煽られて、バサバサ言っている。
傘の盾が壊れてしまわないかひやひやだ。
北国ならまだしも、え、ここ、東京だよ?
冬と言っても、そこまで雪降る確率なんて多くないよ。
雨女が本領発揮して、吹雪かせてるやん。
そんなことを思いながら、10分あまりの道のりを
よちよちと15分くらいかけて歩いた。
積もり始めた雪は滑りやすく、
すってんころりんと、こけた。
色気もへったくれもねえ。


ああ、吹雪の初デート。


台風を呼ぶ誕生日女

誕生日どこ行きたい?と聞かれて。
じゃあ、海に行きたいな、それで、夕焼けか朝焼けが見たいな。
そう答えて
一泊二日のドライブ旅行が企画された。
天気に恵まれないくせに、景色のいいところに行きたがるのが私。
誕生日旅行数日前、
南の海上で台風の赤ちゃんが生まれた。
まさか、まさかが、やはりである。
出発日、台風はまた少し離れていて、
せっかくだし、行こうと出発する。
車をしばらく走らせて海に到着する。
まだ雨はパラりと降ったりやんだりを繰り返していた。鉛色の空と黒く濁った海。
海の近くの水族館で、イルカショーを見て、シャチが飛び跳ねてたできた水しぶきでずぶ濡れになりながら、空のご機嫌を伺う。
空は泣きそうだけど、まだなんとか持ちこたえていた。
やっぱさ、夕日も朝日も難しいよねとしょんぼりしていると、
奇跡的に鉛色の空の一部分の雲が消えて、夕焼けが少しだけ見えた。
とりあえず、本題はいけた。とふたりで大喜びして
旅館に向かった。
出迎えた女将が、こんな時にきてくださってありがとうございます。と挨拶する。
やっぱり、台風きちゃいますかね??と尋ねると、
明日上陸するでしょうねと。
次の日も引き続き、景色のよい場所にたくさん行く予定ではあった……
海辺をドライブして。
まま、旅路のお疲れを温泉で癒してくださいと言われて温泉を楽しむ。
眠って、朝起きると、案の定というか、雨がザーザー降っている。
テレビをつけて、台風の円がどう近づいてくるかチェックしている相手を見る。
うーんと顔をしかめている。
今日行こうとしたところ、どこも行くの難しそうだね。
屋内で楽しめるとこないかといろいろ調べて、小さな美術館を見つける。
旅館を出て、さっそく美術館にいく。
小さな美術館だからすぐに見終わる。館内もガラガラだ。わざわざ台風の中見に来る客はいない。
館長は来てくれてたのが嬉しかったのか、どこから来たんですか?とかいろいろ親しげに話しかけてくる。
せっかくのデートなのに行くところがなくてと言うと、日本家屋の雰囲気のいいカフェがあるからそこでランチをしたらいいと勧められた。
行ってみると、まさかの定休日だった。
カーラジオで台風の進路予想が流れている。このままじゃ帰れなくなるかもしれない。
ということで、帰ることになる。
ランチを食べそこね、空腹でふたりとも不機嫌になる。
窓に叩きつけるように降る雨。
ワイパーをマックスの速さでグイングインと動かしているけど、すぐにぼやける前方の視界。
山道を抜けているから、カーラジオがとぎれとぎれ。
気まずい沈黙が車内を覆った。


ああ、台風で吹き飛ばされる誕生日のハッピーな気分。


ゲリラ豪雨にかき消された恋心。

好きな人が結婚するという知らせを受け取ったのが
急な雨で飛び込んだコンビニの
何気なく見たLINEだった。
雨の勢いが収まらないだろうかと思いながら店内をブラブラするも
雨は勢いを増すばかりだった。
強く跳ね返る水しぶきであたりは霧のように白くなっていた。
諦めて、ビニール傘をさして、コンビニを出た。
ちょうど帰省していたときで、キャリーケースをゴロゴロひいていた。
私とキャリケースの表面積は傘で覆いきれるものでなく、すぐにビチョ濡れになった。
家まで歩いて10分くらいだったけど、絶望的に長く感じたことを覚えている。
ピシピシと容赦なく打ち付けて、傘をさしているのに、
足元から、そして傘からはみ出ている腕からどんどんと濡れて、
もはや濡れていないところを探すのが難しいくらいだった。
どうせビチョ濡れならば、傘なんでささずに帰ればよかった。
濡れるのに構わずにいたら、思いっきり涙を流せたかもしれないのに。
恋の終わりは突然に容赦なくゲリラ豪雨。


いいなあと思ったらぜひポチっとしていただけると喜びます。更新の励みになります。また今後も読んでいただけるとうれしいです。