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北谷公園のデザインを勝手に読み解いてみる

2021年4月にオープンした東京都渋谷区の北谷公園。ブルーボトルコーヒーがあって、気持ちよさそうな広場があって、既に渋谷区の新たなオープンスペースとなっています。

さてこの公園、デザイン的にも質が高いですし、特徴的なポイントがいろいろありそうだったので、検討経緯を読み解いてみました。以下、勝手に読み解いただけですので、間違い等があると思いますが、ご容赦ください。

個人的にポイントと考えたのは3点です。順に記載していきます。
■ポイント1/空間構成:広場の東西軸とそれを受け止める建築配置
■ポイント2/仕組み:抜け感を確保した建蔽率の扱い
■ポイント3/ディテール:座れる境界の設定

■ポイント1/空間構成:広場の東西軸とそれを受け止める建築配置

北谷公園は、宮下公園の北西、東急ハンズの北あたりに位置しています。あまり行ったことがないエリアだったのですが、動線的には東側からアプローチする利用者が多そうな気がしました。
また、地形的には北東が最も低く、南西が最も高くなっています。周辺道路の交通量は少なめ、人通りはそこそこなので、周辺道路を公園の一部のようにのんびり歩くことは可能でした。

このような動線と地形の特徴から、検討する際に考えたであろう建築の配置をいくつか考えてみました。
いろいろ考えましたが、
•東側からのアプローチを広く受け止めることができる
•バックヤードを目立たず設置できる
といった点から、現在の建築配置が最適だと理解できました。

その上で広場部分は、2つのエントランスから東西軸をそれぞれ設けた空間構成を意識したのではないかと思います。
シンプルな空間構成ですが、東西軸は「階段広場」と「屋根と連続するフラットな広場」というように、地形の性質が大きく異なっているので、多彩な居場所が創出されている印象でした。

なお、2つの東西軸は植栽で縁が切られているのですが、あまり気になりませんでした。エントランスが東側に2つ設定され、ブルーボトルという目的地も明確なので、南北を行き来する動線が設定されていなくとも問題ない印象です。

このように、「東西軸の広場とそれを受け止める建築」といった平面的にはシンプルな空間構成ですが、地形が捻れて複雑ですから、平面の構成がシンプルでも飽きない•豊かな空間だと感じました。

■ポイント2/仕組み:抜け感を確保した建蔽率の扱い

次に、建築の面積について確認してみます。
渋谷区が発注した段階においては、公募資料を読む限り、建蔽率は12%を想定していたのではないでしょうか。
通常の公園の建蔽率2%に加えて、P -PFIの仕組みを用いることで10%加算される仕組みです。

さて、この公園は960m2ですから、960×0.12=115m2が建築面積の上限となりますが、公表されている情報によると、建築面積は181.92m2とのこと。建蔽率は約19%となってます。
あれ、12%までのはずなのになぁ…

で、いろいろ調べてみると、「屋根付広場等高い開放性を有する建築物等」は10%緩和される仕組みを使っているのでは、と思います。これで建蔽率は計22%が上限となるのでOKですね。
なお、このあたりの建蔽率の仕組みは、書籍「都市公園のトリセツ」が大変わかりやすいです。

これだけだとポイントになり得ないのですが、センスが良い!と思ったのが、動線の軸線上に屋根付き広場を設けたことだと思います。
舗装パターンも軸線を強調するものになっていて、視線も動線も軸上に導くよう設計されたのではないでしょうか。

なおこの強調がメチャクチャ効いているあまり、ブルーボトルの出口側から入ってしまう人が多数でした。まぁどちらから入っても大丈夫なのですが、北側から建築に入った方が動線上はスムーズなようです。

■ポイント3/ディテール:座れる境界の設定

階段部の段を活かしたベンチや、エントランス部分のL型ロングベンチ等、公園の規模にしては座れる場所が多く設定されている印象でした。
固定のベンチは木材+コンクリートでシンプルながら丁寧にデザインされています。特に厚さ100mm程度のしっかりした座面は、木材を多く使っているという公園全体の印象の醸成に寄与しています。
あと、基部を浮かしたディテールもよいですよね。夜景は見れていないですが、照明も仕込まれていそうです。

なお、可変のベンチも木材でデザインされています。
このように振り返ると、公園の設計で見られる既製品が用いられているのは舗装材、照明くらいで、目立って立ち上がる構造物は丁寧に設計されている印象です。

まとめ

勝手に3つのポイントから読み解いてみましたが、いずれにせよ、素晴らしい設計からなる建築や公園が、「街区公園」で実現されたのがスゴイ!と思います。
公園事情はあまり詳しく無いのですが、P-PFIの仕組みはもう少し大きな規模の公園で用いられることが多い気がします。

日本に最も多くて、町ナカにある街区公園で、このような取組が展開されていくと、町における公園の価値がもっと上昇していくでしょうね。

なお気になるのは、「渋谷という大都市以外の場所で、このような街区公園のスキームが成り立つのか」という点です。
もしかしたら、エリアマネジメントとか、BIDのような仕組みと掛け合わせていくと、地方都市でも成り立つのかもしれません。
このあたりはまた、勉強してみたいと思います。

さて、コンパクトながらも渋谷に新たに創出された北谷公園は、デザイン思想を読み解いてみても大変魅力的でした。
渋谷に行かれた際は、ふらりと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

✳︎引用・参考にした資料
・北谷公園整備運営事業公募設置等指針
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/assets/com/000040784.pdf
・TECTURE HP (体制、建築面積など)
https://mag.tecture.jp/business/20210228-23276/
・都市公園のトリセツ

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