一日一書評#35「お釈迦さま以外はみんなバカ/高橋源一郎著」(2018)
SNSの発達により、誰でも簡単に面白かった本を人に紹介することが出来るようになった。私もこうして書評を毎日書いているし、月に一度は本好きの集まりに顔を出し、良かった本を紹介している。
作家の高橋源一郎さんは、2012年から「すっぴん!」というラジオ番組のパーソナリティを務めている。3時間半の生放送の中には、「源ちゃんのゲンダイ国語」というコーナーがある。高橋さんはそこで、毎週一冊の本を紹介している。本のジャンルは、エッセイ、旅行記、ルポルタージュなど様々だ。その口頭で行う書評を、活字でも残したいという理由で、あるカード会員誌での連載が始まった。本作はそれをまとめたものだ。
高橋さんは、書評の本を何冊か出されている。数十年前に出版された「退屈な読書」を読んだところ、複雑な言い回しが多く見受けられた。今回の「お釈迦さま以外はみんなバカ」は、割と軽い文体で話が進んでいく。「私が読んで感銘を受けた本の魅力を、より多くの人にわかりやすく伝えたい」という気概を勝手に感じた。
本書で紹介されている本の情報は、タイトルと著者、出版社と、必要最低限のことだけ書かれている。値段などは書かれておらず、著者のプロフィールや本の内容を中心に構成されている。比較的新しい本が多く、著者の着眼点や発想、文才に感嘆しながら、作品に対する思いのたけを綴っていく。
高橋さんは、本を読んで気になった個所を引用しながら紹介している。引用する部分は、長すぎても短すぎても上手く伝わらない。本書では、良い塩梅の文章量で、作品の魅力がよく分かるようになっている。書評をほぼ自分の言葉で埋める私は、参考にしたいと強く思った。
本書は、いわゆる書評の本になるのだが、そんなに堅苦しいものではない。また、本に対して熱弁をふるうわけでもなく、単純に、高橋さんが未知なる本に感動している様子を楽しむことが出来る。「本との出会いは良いですよ」と説かれている気分になる。