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一日一書評#40「下戸の夜/本の雑誌編集部 下戸班編」(2019)

意外に思われるかもしれないが、俳優・植木等は下戸だったらしい。そんな知られざる情報が書いてあるのは、本の雑誌編集部の下戸班によって編集された「下戸の夜」という本だ。

酒飲みから見た下戸の生態や、下戸による酒飲みへの反論などが様々な視点で書かれている。まさに下戸の下戸による下戸のための本だ。世間には、お酒にまつわるエピソードや歌で溢れている。しかし、それらに感情移入出来ない人間も大勢いるはずで、私もその一人だ。私は酒が一切飲めないので、書かれている下戸の言葉に終始共感しながら読んでいた。特に、巻末に掲載された下戸に対するアンケートには、共感が止まらなかったので、下戸は必読である。

この本を開けば、下戸仲間が酒に対して思いを綴っている。そこには、酒への様々な感情が渦巻いている。酒への憧れを隠さない者もいれば、逆に酒なんて必要ないと持論を展開する者もいる。

本書には、下戸の人間による酒への思いを語るエッセイの他に、様々なコラムが収録されている。パフェ評論家の斧屋さんによる「パフェに酔う」特集や、酒にまつわる本を集めたページなどがあり、読者を飽きさせない。他に楽しみがあれば、酒に酔わなくたって生きていけると希望が湧いてくる本となっている。

酒好きも下戸も、同じ人間だ。お互いを尊重し合うことだって可能なはず。酒を飲めないなら飲めないなりに振る舞うから、無理に酒を薦めるような真似はしないで欲しいというのが私の本音だ。酒好きの人間がこの本を読むと、下戸の世界を知ることが出来る。酒に対する厳しい本音も見え隠れする著者もいるが、どうか下戸を嫌いにならないで欲しい。

この本を読んで思うのが、下戸とはいえ、お酒と無縁の人生を送ることは出来ないということ。一人でいるならいざ知らず、人と関わる以上は、なぜだかそこに酒が介入してくる。飲めても飲めなくても、酒と人は切っても切れない関係にあるのだ。

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