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一日一書評#47「本で床は抜けるのか/西牟田靖」(2015)

読書家にとって困るのが、本の置き場だ。手放すのはもったいないという思いによって、本がどんどん溜まっていく。

今回紹介するのは、そんな本好きなら誰もが通る問題を取り上げた本、「本で床は抜けるのか」だ。著者は、ノンフィクション作家の西牟田靖さん。西牟田さんは、作家生活のある時点まで、実際の体験やインタビューをもとに本を書いていた。しかし、資料をもとに執筆を行うようになってから、急激に蔵書が増え、生活スペースを圧迫するようになってきた。それに伴い、蔵書問題に向き合うようになったのだ。

私が一番興味を持ったのは、本の自炊についての話だ。自炊とは電子化のこと。SNSで、本が多すぎて床が抜けるかもしれないという投稿した際、「自炊すれば良い」というコメントが相次いだ。しかし、西牟田さんは、以前にも自炊を行っていたのだ。自ら機械を買いそろえ、200冊の蔵書を電子化したのだが、かかった時間の割にクオリティは酷く、読めなくなった本が多数あったそうだ。西牟田さんは悩んだ末、蔵書の一部を自炊代行業者へ送ることに決める。実際に業者に取材を行い、自炊を代行する人の思いにも触れ、何とか緊急避難を終える。

このようにして、問題解決に近づいていくが、この「本で床は抜けるのか」を書いている最中にも、蔵書は続々と増えていく。さらに、西牟田さんには奥さんと子供がいる。奥さんから大量の本をどこかにやってほしいと言われる始末。後半に書かれていますが、様々な事情で夫婦の関係に亀裂が入っていく。蔵書問題から派生して、家族の問題も生まれていくのだ。

「本についての本」は数多く存在する。それは書評だったり、本と著者の関係を書いたエッセイだったりする。しかし、それには本が増え過ぎた末にどうなった、といった現実的な問題はほとんど書かれていない。そこに注目した本はなかなか無いのではないだろうか。最終的に大量の本はどうなったのか、それは本書を読んで確認して頂きたいと思う。


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