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誰も置いていかない人 - 星野源10周年配信ライブ“Gratitude”感想

7月12日に行われた星野源10周年ライブ"Gratitude"を観賞した。
この日のためにあったんじゃないかと思うほど、1600万色対応フルカラーの部屋のライトが演出に役立ってくれたし、この日のために低音がガンガン聴こえるちょっといいポータブルBluetoothスピーカーを購入して楽しみに待っていた。

18:30に「開場」して間もなく、ストリーミングサイトにアクセス。入場すると、「星野源バンド」のメンバーたちがセレクトした星野源の楽曲がBGMとして流れていた。
私はひさしくライブ会場というものに行っていなかったけれど、まるでライブハウスに居るかのような錯覚に陥って、嬉しくなって部屋の照明を落とし、好きなドリンクを持って待機。

開演時間が来た。ひとり、楽屋から出てきたであろう源さんの姿を映す画面。ステージに一人で立ってギターを持ち、Pop Virusのイントロを歌うと、ステージから通常の「客席」側に彼は歩いていった。
そこは客席ではなく、バンドメンバーが円形に囲んでいる「ステージ」だった。なんだか鳥肌がたった。これが新しいライブの形なんだ、と。

テレビやDVDで彼のライブ演奏を観たことはあるけれど、これほど「ライブ」を感じるライブはなかったように思う。それはいつもより良いスピーカーで、照明もほぼ落としてうっすらとブルーの光を入れていたせいかもしれないけれど、そういうのではなく。画面越しに、源さんが、皆とつながろうとしているのを感じた。

10年前に全く同じ場所で行ったという収容人数750人ほどのクラブクアトロのステージ。もし今回、ライブをその場所で予定通り開催していたら、間違いなく超プラチナチケットになって、多くの人がその場に行くことができず悔しい思いをしていたと思う。
ラジオで本人が「今だからこそ、配信ライブをやることに意味がある」と語っていた言葉には、今が3密を避けなければいけないから、というだけではなくて、そういうファンの間に生まれる「格差」のようなものに対する彼なりの思い遣りでもあるように思えた。

選曲も素晴らしかった。「10周年ライブ」と聞いた時、おそらくシングルベストのような、今までのヒット曲をまとめましたみたいな構成になるのかなと思ったら、見事に予想と違う選曲をしてきた。
ファーストアルバムから思い入れのある楽曲をいくつか弾き語りで歌ったり、ターニングポイントとなった「SUN」「恋」「Same Thing」を続けて歌ったり、そして最近配信された「うちで踊ろう」や「折り合い」を歌ったりと、「昔からのファンに愛されている曲」「多くの人が知るきっかけになった曲」「最近作った皆に聴いてほしい曲」がまんべんなく散りばめられていて、もう本当に見事としか言いようがない。

ついでに言うと、私の属性は「R&B,HipHopが好きなクラブミュージック寄りのポップソングが好き」な人間で、そんな私が一番シビれる「Ain't nobody know」を歌ってくれた時はもう最高潮にテンションが上がったし、「SUN」が一番好きな曲なのでもちろんノリノリで歌った。

最近の星野源はラップだってやっている(「折り合い」など)。ポップソングが好きという切り口のファンも、弾き語りが好きという切り口のファンも、誰も置いていかない、星野源はやっぱり懐が広いな、と思った。

そして最後はバンドメンバーが去ったあと、ひとりステージに残り、弾き語りで「私」を歌ったところにも、とても感動した。
昔からの彼を代表するような曲ではなく、比較的最近リリースされた楽曲の中で、彼の原点ともいえる弾き語りの曲。それを選んだところにも、彼なりにアップデートされた、なおかつ初心も忘れない星野源を見せているのかな、と。

これは集大成のライブではなくて、今までと「これから」の星野源を見せてくれるライブだったのだなと最後に感じることができた。

Hello song「笑顔でまた会いましょう」の歌詞の後にシャウトした「画面越しでも、別にいいじゃん!」の言葉。彼はこんな時代でも、この時代にだからこそ出来ることを追求して、さらに進化し続けて、皆を楽しませてくれるのだと思う。
これからもずっとずっと応援しています。

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