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巡礼13日目〈ビジャフリア~オルニージョス・デル・カミーノ、30.0km〉

和田アキ子と一緒にうどんを食べるという奇妙な夢を見て目覚める。久しぶりの出汁のきいたうどんはとても美味しかったように思うけど、やはり和田アキ子との会話は緊張した(とりあえず無難に天気の話などをして、彼女の機嫌を損ねることなく乗り切った)。


身支度を整えて、ホテル階下のレストランで朝食を食べ、今日も歩き始める。が、昨日の口論後の微妙な気持ちを引きずったままで、いつものようにどんどん小さくなっていく夫の背中に、さらなるいら立ちと寂しさを覚える。道は単調で、人の姿もほとんどない。

工場ばかりが目立つ灰色の景色を眺めながら歩いていたら、泣きたいような気持ちになってきて、なぜか突然母親のことを思い出した。ドイツに渡る日、羽田空港で、お互い慣れないハグをしたときのあの肩の細さときたら! 小さいころには、甘ったれだった私をよくぎゅっと抱きしめてくれた記憶があるけれど、いつしか触れ合うことはすっかりなくなってしまっていた。本当に久しぶりに抱きついた母の身体は本当に小さく、薄くなっていて、泣くなというほうが無理だった。母も笑いながら泣いていた。


優しい優しい、人のためにばっかり生きているような私のお母さん。彼女が私がなにをやっているのかもよくわからないままに「真帆は本当にすごいね、がんばってるね」と言ってくれることが、私の原動力の源なのだ、実は。どうか元気に長生きして、人生を楽しんでほしいと思う。


さて、ブルゴス(Burgos)を越え、15時ころには本日の目的地のオルニージョス・デル・カミーノ(Hornillos del Camino)でなんとか空いている宿を見つけチェックイン。夫と共同スペースのカウチに座って、夕方ののんびりした時間を過ごしていたら、揺れていた気持ちも次第に穏やかになってきた。

テーブル席には、なんとも楽しそうな声をあげて家族とスカイプをするブルガリア人のカップルがいて、私も幸せな気持ちになってきた。どうやらそのカップルは1歳になったばかりの子どもを置いてこのカミーノの旅に来ているそうで驚いたが、でもその赤ちゃんは画面の向こうで祖父母に抱かれてころころと笑っていた。もう画面の向こうに愛する母と父がいるのがわかっているようだった。


外に備え付けられたキッチンでは、夕食のパエリアの準備が進んでいて、とてもいい香りが漂ってきている。ああ、お腹が空いた!

前日

※夫の手記はハフィントンポストで連載しています。→スペインの"サバンナ"で食べるお手製パエリア

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ドイツ・ミュンヘン在住のフリー編集者、溝口シュテルツ真帆です。コツコツと暮らし、コツコツと書いています。