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巡礼12日目〈ビジャフランカ・モンテス・デ・オカ~ビジャフリア、30.6km〉

今日は夫と軽い口論になった。彼はもっとはやく先へ進みたい、しかし私の足は限界が近く、これ以上はやく長くは歩けない。それなら私のバックパックをよこせと言うのだ。ぎりぎりと肩に食い込むバックパックがなければどんなに楽かと思うが、「え、いいの?ありがとう!」なんて素直に甘えられる性格をしていたら、ハネムーンにこんなところを選んでいない、と思う。

もともと男性に自分の荷物を持ってもらう女性たちのことを、自分とは別の人種だと見ている節もある。それに、このカミーノは「私たちの道」である前に「私の道」であるという思いもあり(そもそもは私の長年の夢だったのだから!)、彼に自分の荷物を預けての到達は、自分の力だけでことを成し遂げられなかったようで不満が残るのでは、と感じる。

しかし夫は「ふたりの道なのだから」「夫婦は助け合わなきゃ」「歩み寄りも必要だ」なんてもっともらしいことを言って畳みかけてくる。百歩ゆずって、それが本当に彼の純粋な優しさによる発言ならよいが、しかし見え隠れするのは「もっと力を使いたい」「弱きものを助けるかっこいい僕」といった男性らしい本能とヒロイズムだ。

そんなものに私の意地を譲り渡すのは……ちょっと癪に障る。

こうして落ち着いて日記を書いているいまでも、素直に荷物を持ってもらう気にはなっていないけれど、今日のことがあったことで、肩が痛い、足が疲れたと愚痴も言いにくくなってしまったようにも思う。

要経過観察。

今日は朝から同席の韓国人たちと楽しく会話を交わした(なんと炊飯器を持って旅しているという!すごい!韓国人は日本人以上に故郷の味へのこだわりが強いと思っていたが、やはりそうみたいだ)。途中出会った日本人夫妻の奥さんの脚の具合も心配だ。そうそう、ジム率いるアメリカ人グループ(きっと軍隊仲間だろう。みなそんな体格をしている)の「ウサギとカメ」っぷりも面白かった(もちろん彼らがウサギで、私たちがカメだ)。

グリム童話にも似た「ウサギとハリネズミ」という話があると夫が教えてくれた。ある日競争をすることになったウサギとハリネズミだが、ハリネズミは彼の妻をゴール付近に待機させ、まるであたかも自分が先にゴールしたとウサギに思い込ませるという一計を案じる。すっかりだまされてしまったウサギは心臓発作で死んでしまうというのだ!

「ウサギとカメ」からは「こつこつ頑張った人が最終的に勝利する」と教わったと思うが、このドイツ版は何だ。「賢いものが勝つ」なのか……?

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※夫の手記はハフィントンポストで連載しています。→彼らはウサギで僕らはカメで

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ドイツ・ミュンヘン在住のフリー編集者、溝口シュテルツ真帆です。コツコツと暮らし、コツコツと書いています。