#1 スーパーセンシティブ〜自分を殺すのはやめました〜(加筆修正版)
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■順調な滑り出し ~プロローグ~
私が「全般性不安障害」と診断されたのは、22歳の夏でした。
何の目的もないまま大学へ入学し、無難に文学部を卒業。
「心理カウンセラーになりたい」と思い立ち、それ系の会社の入社試験を受けるもことごとく落選。
いよいよ追い込まれた私は、「なんとなくホームページの雰囲気が気に入った」という理由だけで、ある中小企業の印刷会社の入社試験を受けました。
結果は「採用」。
成長過程にあったこの会社は、多くの人材を求めていました。
入社当初の配属は、下町風情あふれるところでした。
初めは先輩について回るだけでしたが、少しずつ「自分のお客様」を獲得していくようになりました。
お客様の主な獲得方法は、先方からの問い合わせへの対応にあてがわれるパターン。
そして飛び込み営業でした。
飛び込み営業は毎度ほんとうに緊張しましたが、周りには頼りがいのある先輩方がいらっしゃいます。
お客様もフレッシュな新人には優しく接してくださいました。
そして私には、新卒女子の三種の神器「若さ・勢い・愛嬌」がありました。
私の営業人生は、順調な滑り出しを見せたのです。
■急展開
仕事が板についてきた一年目の夏のある日。
池袋店への異動が命じられました。
ここは新規オープンの店で、先輩と言えるのは店長のみ。
他は3人の新人たちです。
新しいお店の立ち上げメンバーに選ばれたということは、これまでの業績が評価されたということです。
自分の頑張りを認められたことはもちろん嬉しく、やりがいも感じました。
しかし移動に伴い、『今いらっしゃる「お客様」はすべて引き継ぐように』と言われ、わたしは愕然としました。
頼れる先輩は店長ひとりだけ。
心の支えである「私のお客様」もすべて手放す。
一年目の新人には、いささかハードな指令でした。
■発症
それでもやるしかありません。
三種の神器である「若さ・勢い・愛嬌」に「とにかく頑張る」が加わりました。
上司から期待されているんだ。
・・・よし、頑張ろう。
なかなか成績が上がらないなぁ。
・・・よし、もっと頑張ろう。
大きい仕事が取れたぞ。
・・・この調子でもっともっと頑張ろう。
ちょっと疲れたけど、家族に心配をかけちゃいけないな。
・・・元気そうに振舞おう。出来る出来る!
社内でも社外でも、とにかく頑張るんだ。
笑って笑って笑って・・・
走って走って走って・・・
頑張って頑張ってがんばって・・・
がんば・・・がん・・ばって・がんびゃ・・・
気が付くと、上司の前で泣きだしていました。
涙は自分の意志では止まらず、勝手に流れてくるのです。
手足がガクガクと勝手に震えて、言うことを聞きません。
涙と鼻水とよだれだらけになった部下に、上司は困ったように言いました。
「頼むから仕事だけはしてくれよ」
そこからどうしたのか、記憶はありません。
#2に続く
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