見出し画像

#35 姥ヶ橋延命地蔵尊@上十条

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さまを探しながら歩いています。

東京都北区には多くのお地蔵さまがいらっしゃる。十条駅から10分ほど環七方向へ歩くと姥ヶ橋陸橋がある。この手前にいらっしゃるのが姥ケ橋地蔵尊だ。

環状七号線は前の東京オリンピックのときに整備された道路だ。かつてはここには石神井川の支流である稲村川が流れ、姥ケ橋という橋があった。今は暗渠になっているため、とはその景色もまったう違っていたのだろう。ただし、昔のまま佇んでいるのがこちらのお地蔵さまだ。

お社は立派だ。

左側にいらっしゃるのは、子育て地蔵尊。まずはお賽銭を入れ、お参りをして写真撮影をさせていただく。

2つの道が出会う場所なので「出会い地蔵」とも呼ばれているそうだ。

このお地蔵さまには悲しいいわれがある。乳母が誤って子どもを川に落として死なせてしまった。そのことを悲嘆した乳母は自分も川に飛び込み自殺してしまった。その魂を鎮めるためにこのお地蔵さまが建立されたのだそうだ。

台座には「享保九年(1724)甲辰天十一月吉日石橋供養」の銘文が刻まれているそうで、江戸時代に石橋供養として建てられたようだ。そのため、典型的な地蔵尊になっている。まとわれているのは袈裟。右手に錫杖(しゃくじょう)を執り、左の掌に宝珠(ほうじゅ)を載せ、正面を向いて蓮華座に立っていらっしゃる。

錫杖とは、杖のこと。長い道のりを歩くお地蔵さまには杖が必要なのだ。棒の上部に輪っかが付いている。輪っかは大きなもの、そこにつく小さなものがある。本来は僧侶や修行僧が持つものだそうで、杖をつくと音が鳴るのは、僧が山野を歩く際に襲ってくる動物の害から身を守る効果があり、托鉢の際に門前で来訪を知らせる意味もあるそうだ。

左手の宝珠は、正式には「如意(にょい)宝珠」といい、願い事を何でも叶えてくれる玉を意味しているのだそうだ。

こういう道具を持っていらっしゃるお地蔵さまは、今でいえばスーパーヒーローのような存在なのかもしれない。

蓮華座の前には小さなお地蔵さまが2体。三地蔵になっている。おちらの小さなお地蔵さまがなんともかわいらしい。

説明板もあった。

この下の部分には庚申塔もある。

庚申塔(あるいは庚申塚)の建立が広く行われるようになるのは、江戸時代からだ。中国より伝来した道教に由来する庚申信仰に基づいて建てられた石塔のことで、散歩をしていると今でも残っているものもある。こうして歴史あるものと出会うのも散歩の楽しさのひとつだ。

説明板を読み、このお地蔵さまの悲し由緒を知り、再び姥ケ橋地蔵尊に手を合わせた。

【プロフィール】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

ツイッター https://twitter.com/maguro_shimo

【著書】
『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)
https://amzn.to/2OT9jAq
『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)
https://amzn.to/2noYzNL
『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)
https://amzn.to/2AWqVbV
『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった(共著、ポット出版)』
https://amzn.to/2nohBE2
『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意』(電子書籍)
https://amzn.to/2nowaXY
『セックスしすぎる女たち』(電子書籍)
https://amzn.to/2nu8OjH
『性衝動をくすぐる12のフェティシズム』(電子書籍)
https://amzn.to/2M8SZxF
『ビジネスに効く15分の法則』
https://amzn.to/2nuazgN
『本音と建前を見抜くちょっとした一言』
https://amzn.to/2nq7caP
その他、著書多数。以下よりご覧ください。
https://amzn.to/2MaYYSQ
https://amzn.to/2nnAsPs

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?