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#37 ひまわり地蔵尊@南千住

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さまを探しながら歩いています。


ずいぶん前に山谷の人たちがつくった地蔵が投込寺にあると誰かが教えてくれた。
南千住にある通称「投込寺」は浄閑寺のことで、散歩の記事を書くために何度か足を運んだお寺だ。しかし、そんなお地蔵さまがいらっしゃるとはまったく知らなかった。
住所は南千住だが、最寄り駅は東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅になる。

というわけで、浄閑寺にやってきた。この門の前にいらっしゃるのが、そのお地蔵さまなのか。とりあえず、手を合わせてみる。

こちらは新吉原の近くにあるお寺で、投げ込み同然に遊女たちが葬られたので「投込寺」と呼ばれていたようだ。
境内に入ると、荒川区のボランティアの方だろうか、荒川区と書かれたベストを着て境内を掃除していらっしゃる。
その方にお地蔵さまのことを聞くと、場所を教えてくださった。

ひまわり地蔵尊というのがそうではないかとのこと。永井荷風の文学碑とともにこちらにあるようだ。
おっ、こちらかな。お墓が並び、その向こうにお地蔵さまがいらっしゃった。

けっこう個性的なお顔立ちのお地蔵さまだ。
しかし、さきほどの方によれば「にたーっと笑ったお地蔵さんですから、すぐにわかりますよ」とおっしゃっていた。
これは違うようだ。通路を戻り、左へ行くと、そのにたーっというのがいらっしゃった。

こちらが「ひまわり地蔵尊」だ。
なんとも素敵な笑顔だ。
これまで見てきたお地蔵さまで似たようなお顔はなかったなぁ。独特だ。
こちらのお地蔵さまは倉田辰彦さんの作品のようだ。

説明書きにはこう書かれている。

昭和57年(1982)12月11日建立開眼
創作者 倉田辰彦(群馬県出身)
発願主 山谷老友会
主旨 
山谷には、労働に生き労働に老いて、ひとり淋しく人生を終る人が数多くいます。山谷老友会は、孤独の壁をこえて連帯し、はげましあい、またささえあってきましたが、死後の安心なしには、真の生活の安らぎがないところから、ひまわり地蔵尊の建立を思いたちました。ひまわりの花は、太陽の下で一生を働きぬいてきた日雇労働者のシンボルといえます。
この地蔵尊は、倉田辰彦氏をはじめ、多くの方々のご好意と浄財が寄せられて実現したものです。
  榮法山浄閑寺廿五世暢譽代

読んでみると、少し悲しい気持ちになった。
そして、ふたたび、ひまわり地蔵尊の笑顔を見ると、なんだかさらに悲しみが倍増するような気がする。

永井荷風の文学碑もあった。
次の用事があったので、ゆっくり見ることはかなわなかったが、また来よう。


【プロフィール】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。

ツイッター https://twitter.com/maguro_shimo

【著書】
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