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ろくろをまわせ

「ろくろを回したことは?」

「ええ、ありますよ」

「ろくろを回した感想を教えてください」

「おぼえてないなぁ~・・・」

「いつですか?」

「子供の頃に、一度」

「できあがったものは?」

「破壊しましたよ。あんなのは駄作だ」

「それは、おぼえているんですね」

「とても、悪かった。気分が」

「ろくろを回すのが?」

「いや。違う。作りたくないものを作らされた」

「なるほど。それで破壊したと?」

「心底不要でね。誰が好き好んで使えもしない歪んだ土の乾いたものを所持するというんだ」

「それが、原因で?」

「たぶん、ろくろに罪はない。ただ、不必要なもののために、消費される土と時間が・・・」

「破壊するために、作ったと言ってもいいのでは?」

「破壊するために、ね・・・。最初から破壊を前提として作り始めていれば、少しはそう思えたかもしれません」

「ろくろ自体はどうだったんですか?」

「いや、何も感想がない。もう、覚えてないんですよ」

「不快な感情ほど、よくおぼえているというものですね」

「そうとも言えます。例えば綺麗な、水色か何かの小皿だったら・・・」

「作るなら、そうですね。好みのものでないと、ね」

「ろくろを回した甲斐がないってもんだよ」


-ろくろをまわせ-



(アイスクリームとメロンソーダをぶん回すことで救われる命があります。)

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