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ちょっと変わった女子(オーラの発表会/綿矢りさ)

他人の気持ちが分からない、興味がもてない女子大生・海松子(るみこ)は、河原でのソロ凧揚げを趣味とし、いつも周囲の人に脳内で失礼なあだ名をつけて遊んでいた。そんな海松子のほとんど唯一の友達は、高校時代から続く対照的な性格の萌音。二人は鹿児島の離島を旅することになるが、気がつけば海松子はイケメンの先輩と同級生から言い寄られていて…
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「ちょっと変わった女子」の描写に関して綿矢りさに勝る作家はいないと思っているけれど、それをあらためて確信した一作。
同じクラスにいても仲良くなれないタイプの主人公がだんだん魅力的に見えてきて、二人の男子から言い寄られる少女漫画的な展開さえも「いやこの子はモテるわな」と納得させられるのが不思議だ。

変わり者の主人公はもちろん目立つものの、今作は萌音をはじめとするサブキャラも魅力的だった。
高校生の頃から他人の服装や持ち物をそっくり真似する癖のある萌音は、海松子との大学生活を通して少しずつ成長していく。
海松子が萌音を脳内で真似の師匠→「まね師」と呼び、萌音もまた、海松子に思いを寄せる同級生・奏樹を「子泣き爺の若い頃みたいだし」などとあけすけに言い、対照的な二人の掛け合いがなんとも微笑ましく、心地いい。

気になるタイトル「オーラ」については物語の終盤で唐突に描かれているだけで、この小説のメインテーマではなかったように思う。(多分)
憎めないキャラクターが織りなす成長の物語、とまとめていいのかは分からないけれど、『勝手にふるえてろ』や『私をくいとめて』が好きな人は絶対ハマる、柔らかくてテンポの良い作品だ。

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