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裏返しのiPhone(スマホ脳/アンデシュ・ハンセン)

平均で1日4時間、若者の2割は7時間も使うスマホ。だが、スティーブ・ジョブスを筆頭に、IT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。なぜか?
スウェーデンの精神科医が最新研究とともに、真実を明らかにした爆売れ中の新書。

1. 人類は未だスマホに適応していない

交通事故や喫煙が原因で亡くなることの方が圧倒的に多いにも関わらず、我々の扁桃体は車やタバコではなく、未だ蛇や蜘蛛に反応する。人間が適応してきた世界と今生きる世界が合っていないからだ。

2. 新しい情報を欲するのは本能

周囲の環境を理解するほど、生き延びられる可能性が高まる。結果、脳は新しい情報、環境、出来事にだけドーパミンを産出するようになった。それがニュースサイトだろうとメールやSNSだろうと同じであるうえに、脳は確実に起こることより不確かなことに対し多くのドーパミンを出す
(その理由は明らかになっていないが、信憑性の高い説は「ドーパミンの最重要課題は、人間に行動する動機を与えることだから」というもの)
スロットやカジノが利用した脳の報酬システムを、「大事な通知かもしれない」「いいねが付いているかもしれない」という不確実性をもたせることで、実はスマホも利用している。

3. スマホが人間の注意を引きつける威力

・大学生500人の記憶力と集中力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまった学生よりも良い結果が出た。

・30人に、知らない人と10分自由会話をしてもらった。スマホをただテーブルに置いた(手に取ることは許されない)グループと置かなかったグループでは、後者の方が会話を楽しみ、相手を信用していた。

スマホを手に取りたいという衝動に抵抗するため、限りある集中力が使われる。無視するというのは能動的な行為なのだ。

4. SNSが共感力を殺す?

脳が「他人がどう感じているか」を理解する領域(ミラーニューロン)は、他人と実際に会うことで最も活性化する。その次に活性化するのが演劇鑑賞で、映画に同じほどの強さはなかった。スクリーンやモニター越しで何かを見ても、他人の考えや気持ちを本能的に理解することは難しい。

5. デジタル軍拡競争

スマホアプリのアイコンがどれも色鮮やかでシンプルではっきりしているのは偶然ではなく、どの色が目を引くかを行動学者が研究した結果だ。
スクリーンを下に引っ張ることで更新されるスナップチャットはスロットマシーンを真似ている。ツイッターのアプリを立ち上げると青い画面の中で白い鳥が羽ばたいてからツイートが表示される、このタイムラグも、待たせることでスリルを増加させるために計算されたものだ。
SNSのプッシュ通知やチャットの着信音がどれも似ているのも、友達がチャットを送ってきたと思わせ、社会的な関わりを求める脳の欲求をハッキングしているのだ。
Facebook初代CEOショーン・パーカーは、同社が人間の心の脆弱性を利用したと明言し、「子供の脳への影響は神のみぞ知る」と述べている。

6. スマホ追放で成績が上がる

学生に同じ本をタブレットと紙で読んでもらう実験をすると、紙で読んだグループの方が内容をよく覚えていた。おそらく、脳がデジタル端末がもたらすドーパミンの報酬に慣れきっていて、文章に集中するよりも、報酬がないことを無視するのに貴重な処理能力を費やしてしまうからだ。
また、スマホやタブレットを禁止した学校は成績が上がった。

7. 若者の精神不調が急増している

スウェーデンでは不眠で治療を受ける若者が2000年頃と比べ8倍になり、米国でもうつの診断を受けたティーンエイジャーは7年で6割増えた。スマホやパソコンを使う時間が長い子ほど幸福度が低い傾向も明らかになっている。

8. デジタル時代のアドバイス

集中力を高め、現代のデジタルライフから受ける影響を最小限に止めるためのアドバイスは、
・目覚まし時計と腕時計を使う
・スマホを寝室に置かない
・週に3回45分の運動をする
など基本的なことが書かれていた。

個人的に最も衝撃を受けたのは、スマホをサイレントモードにしようが裏返しにして置こうが「無視する」ことにエネルギーを消費しているという点。確かに私自身、家で本を読んでいても、見る見ないに関わらず手の届くところにスマホがある時より遠くへ置いている時の方が集中していることが多いように思う。
もともと人に会う時はスマホを見ないように気をつけていたが、これからはテーブルの上ではなくカバンにしまおうと心に決めたのであった。
(その前に、見せたい写真やスクショでパンパンなカメラロールをどうにかしたい)

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