お寺の井戸
あらすじ
黒霧町は静かな山間の小さな町。古くからの伝説と怪談が語り継がれるこの町には、誰もが避ける一つの場所がある。それは、荒れ果てたお寺の境内にひっそりと佇む古びた井戸。かつて数人の行方不明者を出したというこの井戸には、「近づく者は運命を変えられる」との石碑が残されている。
ある放課後、好奇心旺盛な中学生の翔太、由美、健一の3人は、井戸の謎を解き明かそうと決心する。夕暮れ時、彼らはお寺に向かい、その古びた井戸に足を踏み入れる。しかし、井戸の内部には予想を超える何かが潜んでおり、彼らの冒険は次第に恐怖の物語へと変わっていく。
キャラクター
翔太(しょうた)
年齢: 16歳
性別: 男性
外見: 中背で、髪は短くて黒い。目が鋭く、いつも自信に満ちた表情をしている。
性格: 冒険心が強く、好奇心旺盛。リーダーシップがあり、友達の中ではいつも中心人物。しかし、無鉄砲で危険を顧みないところがある。
背景: 幼い頃から怖い話や都市伝説に興味があり、自分で探検することが好き。学校では友達が多く、クラスのムードメーカー的存在。
動機: 井戸の伝説を調査し、真相を突き止めたいという強い欲求がある。
由美(ゆみ)
年齢: 16歳
性別: 女性
外見: 小柄で、長い黒髪を持つ。大きな瞳が特徴で、可愛らしい顔立ちをしている。
性格: 慎重で心配性。友達を思いやる優しい性格だが、怖いものが苦手。時折、直感的に危険を察知することがある。
背景: 翔太とは幼馴染で、彼の冒険心にいつも巻き込まれている。家族思いで、特に弟の面倒をよく見る。
動機: 翔太や健一と一緒にいることが好きで、彼らの冒険に付き合うことで友情を深めたいと思っている。
健一(けんいち)
年齢: 16歳
性別: 男性
外見: 背が高く、スポーツマンタイプ。短い髪で、筋肉質な体つきをしている。笑顔が魅力的。
性格: 楽観的で、物事にあまり動じないタイプ。友達と一緒にいることが好きで、特に翔太の提案には積極的に乗る。勇敢だが、時に軽率な行動をとる。
背景: 学校のサッカーチームのメンバーで、チームメイトから信頼されている。勉強はあまり得意ではないが、体力には自信がある。
動機: 冒険や新しい体験を楽しむことが好きで、怖い話や噂に興味を持っている。友達と一緒に過ごす時間を大切にしている。
黒霧寺(くろきりでら)
場所: 町の外れに位置し、山の中腹にある。鳥居をくぐり、石段を登ると境内にたどり着く。
歴史:
江戸時代から続く古刹。昔は地域の信仰の中心地だった。
一度火災で本堂が焼失し、その後再建されたが、現在は訪れる人も少なく、荒れた状態になっている。
特徴:
境内は広く、古びた石畳と苔むした石像が点在している。
井戸は境内の片隅にあり、長い間使われていないため、苔や枯れ葉で覆われている。
井戸の近くには朽ちかけた石碑があり、「近づく者は運命を変えられる」と刻まれている。
境内には大きな桜の木があり、春には美しい花を咲かせるが、夜は不気味な雰囲気を漂わせる。
ストーリー
プロローグ
夜の闇が境内を包み込み、月明かりが朽ちた石畳にかすかな光を落としていた。古びたお寺はひっそりと佇み、周囲の風景を神秘的に照らしている。境内の片隅には、長い間放置された井戸がひっそりと存在している。その井戸には地域の伝説がある。古びた石碑には「近づく者は運命を変えられる」と刻まれており、その文字は時間と風によりかすれているが、確かにそこに存在している。過去には数人が行方不明になり、井戸にまつわる怪談が語り継がれていた。夜になると、誰もがこの井戸を避けるようになり、ただの古い遺物として誰も気に留めることはない。
第1章: 冒険の始まり
放課後、学校の帰り道を歩く翔太、由美、健一の3人。夕暮れ時、夜の帳が下りる前にお寺に向かう。
翔太: 「最近、近くのお寺の古い井戸がヤバいって話、聞いた?」
由美: 「うん、聞いたことあるけど、本当に行くの?」
健一: 「行こうよ! どうせ怖い話だろ? 夜の探検も悪くないし。」
3人は暗い道を歩きながら、翔太が興奮気味に話す。
翔太: 「こんな機会、めったにないしさ。怖い話の真相を確かめるチャンスだよ!」
由美: 「うーん、でもちょっと不安…。何か起こるかもしれないし…」
健一: 「心配しすぎだよ。翔太がいるんだから、きっと面白いことがあるって!」
お寺に到着すると、周囲は静かで、辺りの風景がより一層神秘的に見える。井戸の上には荒れた木の枯れ葉が積もり、少しの風でひらひらと舞い上がる。
翔太: 「ほら、これが井戸だよ。かなり古いでしょ?」
由美: 「うーん、ちょっと怖いね…。ほんとに大丈夫かな?」
健一: 「ほら、翔太がいるから大丈夫だよ。何か面白いことがあるに決まってる!」
第2章: 井戸の探索
井戸の周りには、長い間誰にも触れられずにいたため、埃と苔が積もっている。翔太は懐中電灯を取り出し、井戸の内部を照らす。
翔太: 「ちょっと覗いてみようよ。井戸の底ってどうなってるのかな?」
由美: 「翔太、それ、危ないって…。やめておいたほうがいいよ。」
健一: 「まあ、いいじゃん。翔太がやりたいって言うんだから。」
健一が手に持った小石を井戸の中に投げ入れ、音の響きを待つ。石が井戸の深い底に落ちる音が響くと、辺りの空気が一瞬冷たくなったように感じる。由美は背筋が凍るような感じを覚え、体が震え始める。
健一: 「ほら、この石がどうなるか見てみよう!」
由美: 「やめてよ、何か起こりそう…」
その瞬間、風が急に強く吹き、井戸の中から低いうめき声が聞こえてきた。翔太はそれを気にせず笑い飛ばすが、由美の顔には恐怖の色が浮かぶ。
翔太: 「ほら、底から何か音がするよ!」
由美: 「これ、普通の音じゃないよね? 風が急に強くなったし…」
第3章: 突然の変化
井戸の内部に白いものが現れる。それは最初はただのぼんやりとした白い影のように見えるが、次第に明確な形を成していく。井戸の底からゆっくりと、まるで水中から浮かび上がるように、一対の細長い腕が現れ始める。腕は白く、肌の表面がやけに光っているように見える。細長く、指先は異常に細く、長い爪が不気味に光っている。
腕の出現と共に、井戸の内部が一層暗くなり、深い影が広がる。腕はゆっくりとした動きで、まるで意志を持っているかのように、井戸の上方へと伸びていく。翔太の目には、その腕が井戸の縁に達し、冷たい空気が周囲に広がるのが感じられる。
翔太: 「え、これ…腕が出てきた?」
由美の目に恐怖が浮かび、体が震え始める。腕が井戸の縁に近づくにつれ、指先がゆっくりと空中に向かって伸び、何かを掴もうとしているように見える。腕が伸びるにつれ、冷たい空気が周囲に広がり、奇妙な音が再び響き渡る。
由美: 「翔太、これ…どうしよう? 何かおかしいよ!」
突然、腕が一気に動き出し、由美と健一の体に巻きつく。由美の体が不自然に引き寄せられ、彼女の悲鳴が夜の静寂を破る。健一も同じように腕に引き込まれ、二人の体が井戸の内部に引きずり込まれていく。
健一: 「うわ、白い腕が…!」
翔太は必死に手を伸ばすが、腕の力に押し返され、二人を引き寄せる力に抗うことができない。彼の目の前で、由美と健一の体が次第に井戸の中に消えていくのを見守るしかない。
翔太: 「俺が助ける! でも、手が届かない…!」
由美と健一が完全に井戸の中に引き込まれた瞬間、井戸の内部は再び静寂に包まれる。腕が消え、井戸の底にはただの暗闇だけが広がっている。翔太は呆然と立ち尽くし、体が硬直して動けなくなっている。
第4章: 井戸の呪い
警察が到着し、井戸の周りを調査するが、何も見つからない。井戸の底には何も落ちておらず、二人の行方は依然として不明で、翔太の焦りと絶望が高まる。
警察官: 「井戸の調査をしましたが、特に異常は見つからなかったようです。ご遺族は…?」
翔太: 「そんな…二人はどこに行ったんだよ…!」
翔太は町中で捜索を続けるが、手がかりは一つも見つからない。彼の精神的な状態は次第に悪化し、周囲の人々に対する態度も変わっていく。夜ごとに井戸の周りに現れ、幻覚に悩まされるようになる。
友人: 「最近、翔太、変わったよね。何かあったの?」
翔太: (苦しげに)「あの井戸…何もないわけがない…何かいる…」
翔太は次第に井戸の呪いに取り憑かれていき、井戸に近づくことができない。彼の精神は崩壊し、ついにはその場から逃げ出すことしかできなくなる。
エピローグ
数年後、お寺は完全に忘れ去られ、井戸も埋められてしまった。しかし、井戸にまつわる奇怪な現象が町に残っているという噂が立ち始める。夜になると、散歩する住民たちが奇妙な音を聞くようになり、田舎の老婆は白い腕の話を語り継ぐ。そして、若者たちは井戸の跡地に近づくと、不安を感じるようになっている。
住民A: 「最近、夜になると変な音が聞こえるんだ。誰もいないはずなのに…」
老婆: 「あの井戸には、今でも白い腕がいるって言うわよ。誰かがその腕に触れると、運命が変わるって…」
若者: 「この辺りに来ると、なんだか怖くて…井戸が埋められた場所だと思うと、ぞっとするんだ。」
町の人々は井戸の存在を忘れられず、夜の闇に潜む何かを恐れながらも、それが何であるかを知る者は誰もいないまま、物語は静かに語り継がれていく。
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