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泣き虫母のうつ病からの復活

午前11時。
いてもたってもいられず、メンタルクリニックへ電話。当日は予約でいっぱいとのことで、翌日受診を予約。
…昨日も出勤時間を頭に過ぎてから病児保育へ子供を送り出し、フレックス勤務で出勤するも集中できず、作業時間に対してほとんどアウトプットできていない。
いつからこうなったんだろう? 自分ってこんなに仕事ができなかったっけ?

『仕事変えた方がいいんじゃない?』
…そうなのかも知れない。
先週、日本全国で流行っているらしい手足口病が、ついに我が家にもやってきた。 高熱、発疹、何も食べられない、子供が可哀想で一緒にいてあげたいが、仕事もある。
でも、頭でぐるぐる仕事のタスクが回って、こうだろうか?と上司に相談するも全て否定され、上司はもちろん周りの同僚や後輩にも 次第に声を掛けることすらできなくなってきた。
仕事は諦めて、まだ登園できない子供と今日1日は一緒に過ごそう、と有給を取ることを決めた。PCを開きチームへ連絡を入れると、休むと言っているのに上司から質問が来る。
最低限や急ぎならまだしも、幾つも、それも休みを配慮する言葉は一切なし。 これは普通?…その時もう無理だ、と口が動いてPCを閉じ、メンタルクリニックに電話をしていた。

「うつ病ですね、1ヶ月ほど休みましょう」
翌日受診したメンタルクリニックのドクターは、終始優しく、涙ながらに、少しずつ絞り出した話を一句も逃さないようにPCに打ち込みながら、話を聞いてくれた。
黒縁眼鏡で、白衣を着て、ややくたびれ気味だが小綺麗にしている男性のドクター。週1回だけの勤務のようで、予約が問いにくいなぁとか、他の曜日はどのクリニックにいるのかな、実はバイト?なんて考えも涙が出るのに頭に浮かんでくる。
食事は取れていますか?
 …食べ過ぎたり、食べなくなったりします。
眠れていますか?
 …仕事が気になってすぐ起きてしまいます。その後も眠れず起きていることが多いです。
何か以前と変わったことはありますか?
 …集中力がなくなって、以前できていたことができなくなったように感じます。人と目が合わせられなくなりました。

一通りおそらく一般的な問診があり、仕事に関わる辛いと思った事柄を伝えた記憶がある。この時はまだ、どうして自分がこんなに辛いか、整理できていなかったんだな、と思う。

1ヶ月の休職指示の記載がある診断書とともに、
トリンテリックスという10mmにもみたない小さな錠剤を、1日夕食後に服用するよう処方され、大人しく薬局で薬をもらいその日は出社した。
メンタルクリニックでの話を、部の統括責任者に伝えたが、きっと私の真意は伝わらなかったんだろうと落胆しながらも、明日からは一度休む機会をもらえたと思って安堵。
上司にも休職を責任者から伝えてもらったものの、1,2日は普通に連絡が来た。責任者はどう上司に伝えたんだろう?ここでも真意が伝わらなかったことを確信。

人事と話すと、パワハラを本人に指摘するかどうかは自分の判断とのこと。
自分の仕事の能力や経験が不足していることを認めるのも悲しかったが、それ以上に自分が休職に至るストレスを感じていた原因の1番がパワハラであったと認識するのにも時間がかかった。

『そんなことも分からないの?』
『何を確認すればいいの?』
『ちゃんと考えている?』
『これ常識だから』
『レベルが低い』
『前にも言ったよね』
『存在が意味ないよ』
『実家が太いんだね』

発言をしろ、コミュニケーションをという割に、私にだけ会話はなし。話しかけても今は無理、聞いてくれたとしても体と意識はこちらを向いていていなかった。
自分がやると言ってくれた案件に対し、手を加えていないと業務時間外に責める連絡が来る。業務時間外は対応が難しいと何回も伝えていたのに。
最初は聞き間違い、勘違いかと思った。
でも第3者もいる時にも同じことがあり、後から聞くと、第3者も私と同じ認識だった。

どうなんだろう、これってパワハラなんだろうか?
自分の能力の低さを痛いほど感じていたから、反発する気持ちも出ず、オフィスのトイレで泣いていた。
きっと強い人にはこんなことで?なんだろう。
初めてのタイプの人間との仕事で、メンタル・フィジカル共に疲弊していた私には、些細な言葉が十分私を殺す凶器だったんだと思う。
結局今のところは、これまでの発言や態度を人事に全部伝えるかどうかは迷っている。

休職してからの日々、土日は家族で過ごすので何も変わらず、平日の最初のうちは、家族を送り出してからソファやベッドでひたすら眠るか、寝ているのか、ただ目をつぶっているのか分からないまま転がっていた。目が覚めると、働きもせず家にいることが申し訳なくなり涙が止まらなくなった。
そのうち泣くことにも疲れてきて、頭を動かさなくていいよう、手を動かすことにした。

  • 5年間の写真のプリント、アルバムへの貼り付け

  • 窓の拭き掃除

  • 暑過ぎて窓にヒビが入るので、サンシェード購入・取り付け

  • 調味料の賞味期限切れ、使わないもの廃棄

  • 調味料棚の大掃除

  • 要らないおもちゃ・本の整理

  • サーキュレーターの購入

  • ティッシュケースの購入

  • シューズラックの購入

  • リビングの壁の穴を隠す

  • 大型家具の粗大ゴミ依頼・ゴミ出し

  • 玄関スペースを整理整頓

…ほぼ外出せずオンラインで買い物や依頼が済み、結果家が整ったように思う。動いた反動、疲れて休むと涙が出ることは変わらなかったが、動ける限り動いて仕事をしている時よりも家事・掃除・整理整頓でタスクを増やしたことでだんだん夜は眠れてきた感覚がある。
普通の家事の範疇かもしれないが、これまで手をつけなかったところに着手できたことがもしかしたら自己肯定感高めたのかもしれないと今になって思う。

週に1回、同じ曜日、同じ時間、同じメンタルクリニックで様子を見てもらうことを続けていた。同じ内服薬の量を増やしても、体や気持ちとしては変化が感じられなかったことをドクターに伝えると、別の薬 イフェクサー というカプセル状の薬に変えてみようとなった。
これまでのトリンテリックスが”幸せホルモン”と言われるセロトニンを増やすのに対し、今回のカプセルはセロトニンとノルアドレナリンの両方を増やすということらしい。
なんだか前向きになってきた今になってやっと、薬の作用を調べている自分の、自分への無関心に気づいて、ぞっとする。
つい最近完結した恋愛バラエティで、セロトニンってよく言っている男性がいて、結局最後その男性は選ばれなかったなぁなんて思いながら、セロトニンだけじゃダメなんだと思ったり。
不安や落ち込みが強く、意欲低下も伴っているときに使われることが多い、意欲低下などによく使われるのがこのカプセルらしい。
2週間こちらのカプセルを以前と同様、夕食後1つ服用して、生活は特に大きな変化はなかったものの、外に出てみようという気持ちが増えてきたような?

以前の薬を飲んでいる間、焦燥感の中、何かしなくては!時間が勿体無い!
と、SNSを見ては、ビジネス書(しかも上司との人間関係やコミュニケーションの本ばかり)をamazonで購入しまくり、無料動画セミナー(これまたコミュニケーション法など)を視聴、登録して、オンライン面談をして落ち込むことを繰り返していた。
結局購入した本はなんとか7冊、全て読んだ。読んで要点をメモした。泣きながら。そんなんじゃ頭に入る訳も無い。
毛色を変えて、心が癒され人気!と口コミのある本を読むと、挿絵のクラゲになりたい気持ちが増して、結局涙が出るのは変わらなかった。

この時期にインプットしたところで全く無意味、むしろ悪化とよく今なら分かる。
新しい薬を飲み始めて、少し外に出る頻度、外出時間を増やそうと思えるようになってきた。

  • Wi-Fiの契約

  • 食卓に切花を飾る

  • 花瓶を新調する

  • 観葉植物を置いた

  • お菓子作りをする

  • キャラ弁を作る

  • 子供服を爆買いする

  • 久しぶりに会う友達にお土産を買う

  • 自分のため、大切な人にお守りを買う

  • フットネイルをしてみる

電車に長く乗るのも久しぶりだが、誰かのために出かける、というのがとても嬉しかった。最低の人間じゃない、と思えたからだ。
家に新しいものが増えたり、食卓が変わることは子供たちはとても喜んでくれた。花の水を変える、枯れたところを切る、枯れたら新しいものに変える、という行為は自分の存在意義を感じるところにも通じていた。
この数週間、1人の時は、そこまでお腹も空いておらず、働いていもいない自分がお金を使って外食するなんてという意識があったため、ほとんど外食はできなかった。そんな自分が、大切な人のお守りを買うためのついでではあったが、自分のために、とお守りを買うことができて、自分を大切にできるようになりつつある、変化を感じた。

良い変化だけではなかった。
薬が変わる前後、無料セミナーなどを受けている時期、無職になる、何もしていない焦りから、無料期間終了後に、6桁のお金をセミナーに投じてしまった。今となっては、お金を掛けたから何かやらなければ!と毎日投稿されるセミナー内容を勉強するため、PCを前にノートを広げ、デスクに向かうようになったことが、今こうして執筆している状態につながっていると信じたい。

先日、仕事に復帰しようという気持ちになった。
きっかけは、子供の言葉。
「仕事行かないなら、一緒にいたい」

そうだよな、その通りだと思う。
私だって一緒にいたい。
夫には正直に仕事行っていないこと言わなければいいのに、と言われたが、如何せん、誰に対しても嘘をつくのが下手だ。
仕事は行っていないし、家で会社の仕事はしていないが、イツカナニカのために勉強をしている。
家事や住環境の整理整頓、というお家の仕事をしている、つもりだ。
だが、子供の更なる追い討ちの言葉が、
「仕事しな!」
当面はこんなことを言われた自分が不甲斐なくて涙していた。
落ち着いて、親として恥ずかしくなってきた。
働ける体がある、動く手があるのだから、ダメもとで働かないと、と。

このまま休職期間が長くなると更に戻れなくなる気持ちと、仕事ができないなら早く見切りをつけたい気持ちもある。
思ったが吉日、会社へ連絡を入れ、ちょうどすぐメンタルクリニックの受診日がやってきて、無事ドクターからもお墨付き。
あとは産業医面談で無事出勤OKを貰えば、再始動が切れるはず。

メンタルクリニックを受診する数日前、寝る前の子供に言われた言葉。
「誰にだって、悩みがあるんだよねぇ」

涙しながら夫にただ仕事が辛い、と訴えている最中に2歳の子供に言われた言葉。
2歳の子供に心配をかけてしまったのか、と、夫と顔を見合わせ、申し訳なく思っていると、
子供が、小さな人差し指で私の眉毛を撫でながら、同じ言葉を繰り返した。
「誰にだって、眉毛があるんだよねぇ」

どうやら最初の言葉は、聞き間違えだったらしい。
やっと進もうと思えた私が、最初に思い出した一人でも笑ってしまう出来事。
辛くても、何もなくとも、一人でクスッと笑えるようなことが、
今一度自分にありますように。

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