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「時空を超えて出逢う魂の旅」特別編 ~琉球①~

ある時。”ある人”が、あるところで、生まれました。
宇宙にある、大きな大きな一つの光から、
その人は「地球」という星に、「人間」という生物として生まれたのです。その少し前。大きな光は、”ある人”に向けて、そっと囁きました。
「愛おしい我が光よ。色々な経験をしておいで。」
”ある人”は笑顔を返し、流れ星に乗って、地球に向けて出発しました。

世界中の海や山を眺め、街に出かけることが、好きだ。
この星に、生まれてよかった。楽しいところがたくさんある。

唯一、苦手な地があった。
遠い昔となったが、その地に出掛けたことがある。
最初に降り立った地は楽しめた。気候が好く、食べ物が美味しい。
しかし2日後、移動した地は、やはりダメだった。
とてつもなく、空気が重たく感じる。
美しいビーチに出掛けると、それは決定的に。
”この海には、絶対、入りたくない”
結局、一度も海に入ることなく、その旅を終えた。

何年か経った今、その理由を思い出した。
その地に再び、私が訪れるとしたら。ぜひ、一緒に行きたい方がいる。
その方となら。あの美しい海辺を、共に歩けるのだろうか。
宇宙の果てまで。

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その人生で、一番最初の鮮烈な記憶。
それは、二人の姉の号泣を、小さな家の奥で聞いていたこと。

私は、4人姉妹の四女。当時、5歳くらい。非常に貧しい家族だった。
父親の記憶は、限られていた。
寝そべってばかりで、家族に暴言暴力をふるったこと。
母親に力づくで大人の営みをしているかの、どちらか。

そんな父親は、何かで亡くなった。
同じ時期から母親は、子供たちを置いて、夜はいないことが増えた。
私は知っていた。妻ある村の小金持ちと、関係を持ち始めたことを。

そのうち、母親のお腹が大きくなりはじめた。
母親は、その小金持ちと暮らすことになる。
家と共に、子ども達を手放すことにした。自分の幸せのために。

怪しげな人買いの男がやってくる日。
姉達は自分の行く末を悲しんで、ずうっと泣いていた。
人から値踏みされる扱いなぞ、絶対に受けたくない。
この地の神よ。
私が行くべきところは、人買いの元でないはず。
どこへ、私を連れていく?


昼を過ぎても、人買いの男は姿を現さない。
しかし、別の訪問者がやってきた。
隣の集落の有力なノロ(神女)の、使いの少女二人。
少女達は、母親には全く取り合わず、家の中に入って来た。
そして、私の前に立った。
「あなたですね。明日、あらためて迎えにまいります。」
母に、私をノロの家に養女として迎えることを簡潔に伝えた。
前支度に、私への新しい衣服、家族への食糧をもらったことを
単純に喜ぶ家族。それを見ても私は、何も心が動かなかったが。

ほどなく、人買いの男がやってきた。
その粗野な風貌に恐れを感じ、再び姉達は大声で泣き始める。
上二人の姉達をいきなり裸にし、乱暴に検めた。
金品の代わりのようなものを、母親に投げつける。
それが相当か興味もない様子で、無表情なまま、母親はしまい込む。
人買いは、姉二人を引きずっていく。
姉達の絶望の泣き声。阿鼻叫喚とは、このようなものなのだ。
その人買いに母は、知的な障りのある三女の姉も連れていけと言い放つ。
「もちろん、無料でいいから」と。
事態が理解できない、すぐ上の姉まで連れていかれた。
生家の中は、誰もいなくなってしまった。

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ノロである養母は、非常に豊かな生活を送っていた。
広大な土地に、立派な屋敷。
王国から与えられた田に、稲穂が豊かに揺れていた。
人格者を装い、「神託」により、不遇にある女子をたくさん養女にした。
そのため、私の先に”姉様”が10人ほどいた。
本当の理由は、実は神の加護に恵まれず、神力の無い自分をカムフラージュするために、祭祀を託せる”娘”が必要だったからである。

養母は自分を、表では「お母様」、家では「大主」様と呼ばせた。
さらに、義親娘で仲良く見えるよう振る舞えと、躾けた。
大主は権力を一番持ち、誇示しないと気が済まない、弱い人間だった。
金品、自分の美しさに異常な執着をし、絶えず精神不安定。
そんな自分が作り出す鬱憤を、家屋内の養女達に当てつけた。
相手の人格を否定し、暴言暴力、虐待は日常茶飯事。
元より、養女達は帰る家もないため、大主の仕打ちに耐えるばかりだった。

整然と整えられた、広い屋敷。
しかしその中は、殺伐とした世界。
幸い私は、初めから何も持っていなかった。
それは、これ以上、何も奪われることがないという強み。
私は、神が新たに与えた生活の場で、
自分の使命にのみ、生きていけばいいと悟っていた。

大主への目通りで、たずねられた。
「これから、お前はどのように名乗るのか。」
これまでの名前を捨て、新たに生まれ変わるために。
「はい、大主様。わたくしの名は、”光”です。」
ふふん、と鼻先で笑った。
大主は、侮蔑的な裏の名前を養女に付けることにしていたため、
「屋敷では・・・」と言葉を続けようとした。
瞬間、口元を押さえた。かまいたちだ。
大主は憎々しげに、血を滴らせながら、私を睨んだ。
神に疎まれている大主であったが、悟ったのだ。
この小娘、護られているな。
結局、屋敷内で唯一、私は侮蔑名を持たない養女となった。

”光”
新たな名での人生が、こうして始まった。

(次編へ続く)


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