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ていねいな保育とその基本

前回「子ども主体の保育」をテーマに書きましたが、今回はその保育を実現させるための実践的保育「ていねいな保育」についてです。「ていねいな保育」がテーマといっても、その基本的な考えから、日々の生活での具体的な行動まで、伝えたいことは膨大!

手始めに「ていねいな保育」の基本について書いていきたいと思います。


▼前回の記事はコチラ

「子ども主体の保育」と「ていねいな保育」の関係

まずは「子ども主体の保育」についておさらい。子ども主体の保育とは、子どもたちにさまざまな活動について自ら考え、決め、行動させること。そして、そのための“環境をデザインすること”が「子ども主体の保育」においての保育者の役割です。

保育者は、子ども一人ひとりの興味・関心を観察し、子どもが能動的に動けるように、環境を整えていく。決して大人の価値観で善悪を判断するのではなく、子どもが自分たちの行動や他者との関わり合い方から気づけるように、オブザーバー兼アドバイザーとして存在するのです。

子ども主体でやりたいことをさせると言っても、環境無くして「お好きにどうぞ」は放任であり、「みてるだけ」では放置です。
どうすれば集団でありながらも、個々に寄り添えるかを考え、実践していくための基本が「ていねいな保育」です。

保育者に「基本として身につけてほしい」15のこと

マフィスでは、保育を担う人々に対して「ていねいな保育」を行うに際しての「必ず身につけてほしいこと」として15のことをお願いしています。

子ども主体の保育にとって重要な「観察」は「ていねいな保育」の中でどのようにおこなっていくか、子どもに接するときに心に留めておくべきことは何か、保育者自身の行動・心の持ちようはどうあるべきか、などに沿った基本的なことです。以下にあげていきましょう。

<観察>
1.子どもの行動を読み取る
  まずは子どもの行動をしっかりと観察し、その行動がどんな気持ちの表れであるのかを考る。

2.子どもの興味・関心を探る
  興味・関心を探ることによって、子どもと同じ目線でその思いに応えることができ、明日からの保育の情報収集にもなる。興味・関心のないことをさせると発達が限定的になってしまう。

3. 考えながら「見守る」
  「何してるの?」などむやみに関わると、子どもの集中している世界を壊してしまうので、求められるまで待ち、必要に応じて声をかける。少し距離をとって「見守る」が「見ているだけ」ではない。
 
4. 子どもの発見や行動に共感する
  大人にとっての当たり前が、子どもの当たり前とは限らない。「すごいね〜」というだけでなく、なぜすごいのか状況を解説して共感することが重要。

<子どもに接するとき>
5. 子どもの気持ちを尊重する
  子どもの「〜したい」という気持ちを優先する「応答的」な対応をする。

6. ていねいすぎない援助を心がける
  個々の発達段階と、行っている活動の安全性から判断して、必要最低限の援助に留める。

7. 指示語・否定語・禁止語を控える
  子どもが自分で考えらるような提案や肯定的な言葉を使う。必ず伝わる必要はなく、感じ取るだけでも子どもは何かを考えているはず。指示・命令と子どもが感じる言葉を、保育者が発してしまったら、その時点で大人主体の保育へ変わってしまう。

8. メリハリのある関わりを心がける
  一日の中でも、静の活動・動の活動を組み合わせる。状況に応じて、保育者の声のトーンやテンポも変える。

9. 健康への配慮・対応を怠らない
  子どもたちが気にしない「ちょっとした」ケガや体調の変化も看過せず、速やかに適切に処置し、園長や主任へ報告・記録、その後保護者へも報告する。

10. その子にとって、今一番学ぶべきことは何かを知る
  例えば、他の子どもとケンカになっても、口先の「ごめんね」を言わせるより、自分の感情をコントロールし、自分で気持ちを収めることを学ぶ方が優先。他にも、知識より感情を育てることを優先するなど、その時、その時にその子が学ぶべきことは何なのかを知っておくようにする。

<保育者自身>
11. 笑顔
  保育者が笑顔でいることで、子どもは安心し、結果、子どもの活動を後押しする。

12.スタッフ間の関係を良好にする
  同僚との関係が良好になると、子どもについて話す機会が多くなり、自然と子どもへの理解が深まる。

13.時間を有効活用する
  ちょっとした隙間時間を有効に使って、連絡帳への記入やスタッフ間の対話を行う。

14.「学びへ向かう力」を持ち続ける
  大人主体の保育が既に古い保育であるように、保育の世界も進化・変化する。また、他の園など外のことを知らないままでは保育の質が低下する恐れも。積極的に外部研修や他園との交流会に参加して、自身の保育者としての質を向上させる。

15.服装に気を配るゆとりを持つ
  髪や服に対して無頓着なのは子どもに対して失礼。保育者として洗練されている印象も大切。

日々の保育の中で「特に意識してほしいこと」

上記15の基本の中でも、特に「特に意識してほしいこと」が6つあります。

1.子どもの気持ちを尊重する
2.考えながら「見守る」
3.ていねいすぎない援助を心がける
4.指示語・否定語・禁止語を控える
5.その子にとって、今一番学ぶべきことは何かを知る
6.子どもの発見や行動に共感する

なぜ、この6つがより重要なのか?
それは普段の保育現場で頻繁に起きそうなこと、やってしまいがちなことを、これを意識することで回避できるからです。

例えば、こんな状況を園で見かけませんか?
・「うん、そうね、それはね」など、いつでも、どんな子にへも返答が機械的。
・子どもが求めていないのに、「なに、なに?」とやたら関わろうとする。
・何も言わずにティッシュで鼻水を拭く。
・先回りしていろいろやってあげてしまう。
・大人都合で指示や命令をする。

などなど、保育者自身はやっていないつもりでも、実は…。なんてことは多々あります。そのため、この6つについては特に意識してもらっています。

これらを意識することが、保育の専門性を認識することに繋がります。

マフィスが考える人的環境=マフィスらしさとは?

「ていねいな保育」ひいては「子ども主体の保育」の実践には、環境のデザインが重要なのと同時に、「人的環境」も重要です。
「人的環境」とは、子どもたちとの直接的な関わりだけでなく、保育者の表情や話し方、雰囲気、服の色や柄、保育士同士が醸し出す空気のような間接的な関わりも含んでいます。

そのため、マフィスでは働くスタッフの所作として「気を付けてほしいポイント」を設けています。これがマフィスの「人的環境」つまり「マフィスらしさ」に繋がると思っています。

例をご紹介すると…
・ゆっくりていねいに話す。
・子どもにも大人にも遠くからは話しかけない。
・スタッフ同士が互いにアイコンタクトできる位置を確保する。
・保育室は意識してゆっくり歩く

これらは一例ですが、子どもは保育者の鏡でもあるので、美しいふるまいを意識して、全員で守れるよう努力しています。

「子ども主体の保育」「ていねいな保育の基本」について前回・今回と書いてきました。
次回はより「具体的」な方法について書いていきたいと思います。


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参考:
大豆生田 啓友・おおえだ けいこ 著『日本が誇る!ていねいな保育』小学館
マフィス研修資料


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