見出し画像

やっぱり目的が先だよ、という話。

私が普段多くの選手を指導している陸上競技では、この6月から7月にかけて日本選手権に続き多くの各都道府県選手権が開催されました。
またアジア選手権も開催され、そこでは日本記録が生まれるなど日本人選手の素晴らしい活躍もあり、いよいよ世界選手権に向けて熱が高まって来たなという印象です。

この1か月少しの間に私が帯同したのは日本選手権、大阪選手権、そして兵庫選手権の3つが主だったところでした。
日本選手権に関しましては以前記事をアップしておりますので是非そちらをご覧ください。

都道府県選手権帯同を終えて

都道府県選手権につきましては、特に男子の決勝ラインがかなり引き上がっている印象を受けました。
私が帯同した大阪選手権と兵庫選手権でも、何年か前の上位入賞に匹敵するタイムをもってしても決勝進出が難しいレベルになってきていると感じます。
これはかつてに比べて、実業団選手がこういった大会に出る機会が増えたことと、クラブチーム選手がかなりいい結果を出しているということ、そして大学生も積極的に出場していることは要因として挙げられると思います。
かつては都道府県選手権といえば高校生と一部の大学生以上の選手が出るぐらいのものだったように思いますし、そう考えると高校生も間近で強い先輩たちの動きを見る機会が増えるということにもなりますから、非常にいいことだと思います。

草アスリートにも夢がある

クラブチームの数がかなり増えています。
仕事をしながらでもまだまだ記録を伸ばしていきたいと思っている大人たちが、引き続き競技に励める土壌が醸成されているというのは素晴らしいことだと思います。
クラブチーム同士横のつながりが強いところもありますし、是非今後とも各チームで切磋琢磨して草アスリートにも夢があるということをもっと広く知らしめていきましょう。

実際この一連の都道府県選手権においても社会人にして自己ベストを更新してきている選手がいますから、やり方次第ではまだまだ伸びる人がたくさんいると確信しています。

さて、そうしてベストを更新したりまだまだ伸びしろを感じたりする選手と、そうでない選手の違いというのは何でしょうか?
これは色んな違いがありますが、取っ掛かりとして「ドリル」に対する考え方の違いということを挙げておきます。
ここの考え方が変わると本当に伸びます!

(注)
 今回の記事は「健康の為に」とか「記録は二の次で楽しんでます」という方向けのお話ではありません。
 ちなみにそういった方の取り組みにも素晴らしいものがありますから本当に尊敬しています。
 ただ今回の記事はもう少し勝負にこだわった領域においての話として受け取って頂ければと思います。
 つまり勝負にこだわってやっていきたい人は是非ご参考までに……ということです。

ドリルへの認識

「ドリル」関して、特に中学高校を含む学生時代にやっていたものを未だにルーティンとしてやっている選手は要注意です。

「ドリル」というのは「反復練習」という意味ですから、どんな目的でどんな種目をどれぐらいの量どのタイミングでやるかということが大切です。
高校生の時はよかったものでも、そこから10年ほど経過しているとしたら、やっていることが全く同じというのはどうも解せません。
やるべきことが同じなわけはない……そう思います。

まず目的というのは何らかの課題を克服していくことになろうかと思いますが、その課題というのは明らかでしょうか?
また課題だと感じていることが本当に課題なのでしょうか?他にやることはないでしょうか?
そしてその「ドリル」を長年やっていて目標とする記録に到達できてないのにそれを盲目的にやり続けることは思考の停止とは言えないでしょうか?
厳しい物言いかもしれませんが、そういうことです。

そういう結果にしかならない

私はフリーランスで仕事をしていますから、「頑張ってるんですけど売上が上がらなくて……」なんて言った時には「いやそれは頑張り方を間違えているんじゃないの?」とか「頑張ってるとかどうでもいいから売上が上がる方法を死ぬ気で考えろよ」ということを返されてそこで終了です。
望んだ結果が出ないのは、望んだ結果が出ないようにしかやってきていないからとしか言いようがありません。

逆に言えば「なんかこんな風にしたらめっちゃ売上増えました」という思いつきみたいなことから売上が上がることもよくあります。
そこを冷静に分析することで安定した収益を得ることが出来るわけですね。
これには複雑な要因が交錯しますから、一概に「こんな風にしたからよかった」とも言えません。
何か奇跡的にタイミングが良かったとか、凄く拡散力のあるお客様にお越し頂けたとか、プライベートでいいことがって単純にテンションが高かったとか、そういう様々な背景があって「こんな風にしたらよかった」という結果が生まれるわけです。

社会人アスリートのリアル

話を競技に戻しましょう。
社会人アスリート(草アスリート)を取り巻く環境は極めて複雑です。
まず社会人であるわけですから仕事が一番大切です。
そうでなければ競技会のエントリー料は捻出できませんね。
学生や実業団とかプロの選手との違いはそこです。
学生のうちは多くがご両親がお金を出して下さっているでしょうし、どこかと契約していればお金はその契約企業が出してくれます。
中にはご両親がお金持ちでかなり手厚く施しを受けているという選手もいるかも知れませんが、それは一般的ではありませんので脇に置きましょう。
いずれにしても社会人アスリートは自分が稼いだお金を自分の競技の為に使うという構図になろうかと思います。

では財源である仕事について考えてみましょう。

・どんな職種でしょうか?
  肉体労働なのかパソコンの前に座りっぱなしなのか移動が多いのか?
・仕事の責任はどの程度でしょうか?
  新入社員?教育係?課長?部長?それとも?
・就労時間は?
  週休2日?1日?休みなし?1日何時間拘束される?
・ストレスは?
  同僚や部下や上長にイライラしてる?仲が良い?
・収入は安定しているか?
  そしてその収入で家族を養う?自分ひとりだけでよい?
・そもそも疲れてませんか?
  これは本当にバカにできない話です。

こういったことを踏まえた上で取り組んでいく必要があります。

パソコン仕事がメインであれば肉体的な疲労は少ないように見えるかもしれませんが、肩や腰が固まるような感じがして身体の調整に長い時間を割かなければいけないかもしれません。そうすれば肉体労働の人よりもメイン練習に割ける時間は少なくなる可能性があります。

一般的に仕事の責任が増えれば増えるほど考えることが増えます。
また転勤や配置転換等による負担があったとしたら、それらになれているのかどうかも含めて考慮せねばなりません。

就労時間は練習時間の確保に物理的な影響を及ぼします。
中には夜勤をしている方もおられることでしょう。
そうすると試合に向けてのコンディショニングというはより一層難しくなります。

精神的なストレスや収入に対する不安度が高ければ、やはり競技に集中することは難しいと言わざるを得ません。
そういった逆境や面倒なことに対する耐性が高いのか低いのかも自己分析する必要があります。

そして結局仕事の疲れが残っていないか?ということはあります。
その疲れと練習による疲れを足し合わせたり掛け合わせたりして、明らかに疲労度が高いならばやるべきことはまず睡眠時間の確保です。
練習時間が短くなってしまうことの懸念もありますが、ロクに休めていないのにまともな練習は出来ません。
また食事にも気を遣いましょう。

やっぱり目的が先だよ、という話

結局、自分の目標に対して何が問題となっていて、その問題をどう解決していこうかという思考が重要ということです。
先に目的があって、それから手段を講じるのです。
「ドリル」と呼ばれるものはあくまでも手段でしかありません。

私が指導している社会人アスリートの多くは、今までやっていた「ドリル」を一新するぐらい見直しておられます。
もちろん「これは譲れない」という種目もあるでしょうし、それは自由です。
しかし「ん?ってことはこれは違うな?」となる種目は多く、「今はこれに集中しよう」ということでやることを単純化していくことで、何となくうまくいくパターンが多いようです。

私は日々仕事に追われながら競技を続けている社会人アスリートの皆様を尊敬していますし、だからこそ少しでもお力になれればと考えています。
ただ厳しい環境の中で望む結果を出す為には、プロや実業団の選手や学生と同じ思考では上手くいかないであろうという提言でした。

もしかしたらこれは高校生から大学生になった人なんかにも当てはまるかもしれませんが、またそれは追々何かしらの形で言及することとして筆をおきます。
最後までお読み頂きありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?