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日本陸上競技選手権大会を終えて思うことを書いてみる。

6月最初の記事はタイトルの通り、本メディアの本分である運動指導者としての学びがある記事ではありません。
なんというか、ほぼ独り言です。
そんな記事でも読んでみるか、という方だけご覧ください。

第1部 日本選手権お疲れ様でした!

日本選手権が大阪で開催!

令和5年6月1日~4日にかけて、大阪のヤンマースタジアム長居において第107回日本陸上競技選手権大会(以下、日本選手権)が開催されました。
私は大阪在住ですので、まさに地元での開催。
定期的に指導している選手が出場するということもあって、大会2日目~4日目は会場に足を運んで参りました。

今回の記事では指導者、或いは元選手(日本選手権は出てないけど)としての感想だけでなく、ちょっと違う目線からも記事が書ければと思います。
ただし、先述の通り「独り言」みたいな記事なので、予めご了承ください。

草アスリートの挑戦!

今回、日本選手権に出場した前田の契約選手は実は3年連続での出場でした。
これは立派ですね。
しかも所属企業と選手として契約しているわけではない、俗に言う「草アスリート」ですから、難しい状況下でよく取り組んでいるなと思います。

彼は2年前に初めて日本選手権の出場権を獲得し、その資格記録を持って昨年も出場。
しかし昨年は全体的に競技結果が振るわず、再起を目指して私の指導を受けるようになりました。
つまり前田が指導する前から日本選手権に出場できるだけの力がある選手ということで、私の介入はそれほど大きくないと言えます。
ただ、取り組みの方向性に問題があったからこそ昨年の不振があったわけですから、その辺りの修正にいくつかアドバイスを行った次第です。

今年は改めて日本選手権に出場することを目標にし、来年の日本選手権では出場だけでなく更に高みを目指す、という方向性で取り組んでいますので、実は今年の日本選手権は出場できれば当初の目標は達成できたということです。
なのでこれはこれで評価してよい話。

しかし、なんだか思ったよりいい仕上がりだったんですね。
だからこそ、日本選手権出場という目標は達成したものの、予備予選の通過は狙いたいという目標が新たに芽生えることになります。

何とか本予選を走りたい、そう思いながら見つめる予備予選……

いや、実に惜しかった。
結果は0.07秒差で予備予選敗退……。
しかし結果に嘘はありません。
本人も日本選手権でこんなに悔しいと思ったのは初めてだったそうで、来年に向けて今年の残りのレースをどう戦っていくか、どう記録を狙っていくか、既に動き出しています。

日本選手権は出るだけでも凄い!

日本選手権出場経験のない元選手から言うと、はっきり言って日本選手権は出るだけでも凄い大会です。
殆どの選手は出られないわけですからね。
また種目によっては標準記録を突破しているのに、その突破者が多すぎて俗に言う「足切り」を喰らっている選手もいます。
それぐらい出場することは難しいのです。

どの種目でも、日本選手権に出ることは凄い。
そこで優勝したり入賞したりした選手は本当に凄い。
出場された選手各位には尊敬の念を表します。
もちろん、更に高みを目指して取り組んで行って欲しいなと思います。

競技役員や補助員の皆様へ感謝

これは日本選手権に限りませんが、大会運営には選手や指導者だけでは何ともならず、競技役員や補助員の方のお力添えが必要不可欠です。
大雨の日もあって競技日程がずれ込んだ種目もある中、大会期間中にすべての種目が無事終えらえたのは、そういった方々のご尽力があったからこそ。
本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。

第2部 試合を俯瞰して思うこと。

忖度なく書いてみる

第2部以降はちょっと違う目線で書きますね。
というかここからが本筋。

私は普段、陸上選手の指導以外にも、老若男女問わず幅広い方に対して運動指導を行っています。
また陸上のコーチ業をしている人間にしては珍しく、選手を引退した後にフィットネスクラブで社員スタッフをしていました。
フィットネスクラブ社員時代も陸上に関わる仕事はありましたが、そんな仕事は微々たるもので、スタジオレッスンだのパーソナルトレーニングだのといった主たる仕事から、設備管理だとか採用だとか研修だとか広告だとか経理だとかにもそれなりの時間を割いていました。
何かと経験する機会を頂いたことを感謝しています。

ということで、私の人生は陸上競技どっぷりじゃありません。
だからこそ言えることがあります。
怒られるかもしれませんが、忖度なく書きましょう。

イベントとして面白くない

多くの方が毎年言及していることですが、日本選手権という日本の頂点を決める試合にしては観客が少なすぎるという問題について。

そもそもこのことを主催者側が問題視しているのかという話がありますが、まぁこれだけ言われているのは問題ですよね。

そして現地に行けば分かります。
はっきり言って試合そのものはイベントとして面白くない。
こんなところに人が集まるわけがない。
これは他のスポーツを含めていろんなイベントを見てきたから言えます。
興行としてやっているなら、これは問題。

陸上競技に明るい人なら面白いと思うことでも、そうじゃない人からしたら全然面白くないのです。
スポーツの試合なんて(節度は保たねばなりませんが)はしゃぐぐらい盛り上がってナンボですが、あの会場ではしゃいだらきっと浮きますね。
それぐらい真面目。
真面目なのはいいことですが、有料チケットで観客を入れるなら「お客様を楽しませる」必要があるでしょう。

なに?選手たちの頑張りや記録を見ていたら楽しめるだろうって?
それは別問題。
一般の人は出場選手のことをほとんど知りませんし、「男子100mで9秒台が出たら凄い!」という記録以外、一般の人は記録のことが分かりません。
つまり、「誰か知らん選手が凄いかどうか分からん記録で優勝した」という風に映るのですよ。
そんなもん面白いわけがないでしょう。

じゃあ勉強してから来いって?
それは確かにそうですが、あれだけの種目数にあれだけの選手数です。
そんなもん勉強する暇はありませんし、一般の人がそんなことを勉強するメリットはありません。
だから来ないんですよ。

確かに関係者からしたら面白いスポーツです。
まぁこれは他のマイナースポーツにも当てはまる話ですが、陸上の場合は世界選手権や五輪の場合は人気があるので、どこか勘違いをしているかもしれませんね。

「興行」に詳しい人を呼んだ方がいい

日本国内においての興行として魅せる為にはどうしたらいいのか?
多分それが分かっていたら苦労していないでしょう。
ならば分かっている人に聞けばいいんです。
分からんことを分かっている人に聞くのは当たり前です。
だから興行について詳しい人を、陸上競技界の外から引っ張ってきた方がよさそうですね。
プロスポーツのイベントに携わっているとか、コンサートみたいなものを運営する人とか、そう言う人の知見がいるはずです。

陸上の人は真面目な人が多いですから最初は喧嘩するかもしれませんが、それぐらいやらんとダメですね。
よく言われるのは、ビールを売るとか(確か数年前は売ってた)、著名人や地元のアイドルなんかとコラボして何かするとか、そういうことでしょう。「お出かけスポット」としての競技会場になる必要があるのかなと。

これは競技力の向上とは別のベクトルに見えますが、陸上競技そのものにどうやって興味を持ってもらえるかを考えるというのは、すなわち陸上競技にどれだけお金が流れるかを考えるということであって、それは選手やコーチの育成に使えるお金が増え、競技力の向上に寄与するという発想で考えるとよいのではないでしょうか。

観客は多い方がいいという選手の目線

私も元選手として言いますが、観客は多い方が選手は燃えます。
きっと多くの選手がそう思っているでしょう。
観客の少ない試合はテンションが上がりません。

私が高校生の時は、競技会場と通っている高校が目と鼻の先にあったので、同級生たちがふらっと応援しに来てくれていましたが、それは本当に力になりました。
しかし帰宅部勢が陸上のルールを知っているわけもなく、予選のトップ通過を見届けてくれた同級生の女の子から「優勝おめでとう!」とメールが来たのを覚えています。
女の子からメールが来ることには嬉しさがありましたが、その試合は確か決勝で3位だったのでとても複雑な気持ちでした(笑)
それはさておき、ひとつヒントになるエピソードかも知れません。
要は「同級生が出てるから見に行くわ」なんですよ。
ぶっちゃけた話、今回の日本選手権にしても私は指導している選手が出場するから会場に足を運んだだけだったかも知れませんし。

先ほど出て来た前田の同級生の様に、ある意味ではミーハーとかにわかファンと呼ばれる人を作るには、真面目な世界線にだけ留まっていてはいけないでしょうね。
「俺の走りを見ろよ!」「私が跳ぶのを見て!」ってことです。
そう思っている選手の為にも、観客動員数が増える仕組み作りは必要ではないでしょうか。

学生の試合なら応援団がいますが、日本選手権の場合はそれはありません。
ならば応援団を連れてきてもいいのかもしれませんね。
それぐらい柔軟な発想が求められると思います。

フィールド種目をもっと活用する

これもよく言われることですが、陸上競技はトラック種目とフィールド種目が同時進行するスポーツで、これは本当に難しい。
どうしてもトラック中心に事が進みがちですが、砂場では走幅跳や三段跳をやっていて、曲走路内側では走高跳や棒高跳びをやっていて、その反対側で、投擲種目が行われていて、それぞれの場所で熱い闘いが繰り広げられているのです。

フィールド種目に関して言えば、例えば予選通過のシステムだったりベスト8以降試技順が入れ替わるシステムだったり、そんなもの一般の人は知らないわけですね。
しかしそのシステムが分かれば、ある意味ではトラック種目より長い時間酒を飲みながらでも見ていられるのが、フィールド種目の魅力でもあります。
トラック種目は始まってしまえばゴールして終わりですが、フィールドは何回も試技が見られますからね。
逆転に次ぐ逆転!みたいな展開になった時には、めちゃくちゃ盛り上がりますし、その会場のボルテージは選手のパフォーマンスを高めることに大きく寄与します。

そんないい雰囲気になるように、試合スケジュール全体を見ながらトラック種目の空き時間にフィールドに注目させる仕組みが出来れば、きっと大会の面白さは増すのではないでしょうか。

第3部 指導者として襟を正す。

指導者の問題

陸上競技が本当に注目を浴びる為には、日本人選手が世界で活躍する姿を見せることがやはり重要で、そういった選手が国内でも試合や日本代表として圧倒的なパフォーマンスで魅了することが、どんなスポーツでも大切ですよね。
野球もサッカーも、だから盛り上がります。

選手は頑張っています。
みんな本当に命を削っている。
強くなりたくない選手なんていない。
でも多くの種目で世界との差が歴然であることを忘れてはなりません。
だから選手だけでなく、指導者も一丸となって取り組む必要があります。
指導者は先天的な問題には対処できませんが、後天的な問題には対処が可能です。
それが指導者の仕事。

先天的な問題は出生以前に遡る必要があるので一旦脇に置くとしたら、やはり後天的な問題に目を向けるより他ありません。
つまり指導者に関わってくる問題。
これは私も含めた問題ということになるでしょう。

もっと選手のパフォーマンスを高めるにはどうしたらいいか?そのことに対して指導者は自らの命を削っているか。
そもそも日本選手権に出場したりそこで勝ったりするような先天的に恵まれた能力を持つ選手を、更に高いレベルまで育成するのは簡単なことではありません。
各年代に合わせた計画が必要で、決して成長期のプログラムと大人のプログラムを混同させてはいけませんし、当然個人に合わせて構築しないといけません。
そしてそのことを選手が理解した上で取り組んでいく必要があるでしょう。

繰り返しになりますが、これは本当に簡単な話じゃありません。
だからこそ、「監督」とか「先生」とか言われて偉そうに踏ん反り返っている暇などない。
選手が伸び悩んでいるなら、命を削る覚悟でその問題と向き合う。
私はそういう想いでこの仕事を続けていきます。
まぁそうじゃないと私の場合はすぐに契約が切られてもおかしくない草指導者ですからね。必死ですよ、そりゃ。

というか、望んだ結果に導けなかった指導者というのは、企業や選手から契約を切られるのがスポーツの世界では一般的だと思っていますが……日本の陸上の場合は?
今の企業や学校の仕組みはどうなんでしょうね。
詳しいことは知らないのでただ疑問に思っているだけですが、指導者がそこそこの給料を貰っているとしたら、その契約期間におけるミッションを明確にして、その達成率に応じた契約更改もしくは契約解除にするぐらいじゃないと……。
そういうシステムになっているのであればそれでいいのですが。
ま、詳しいことは知りません。

自分が偉そうに言えた立場ではないことは重々承知ですが、全指導者が一旦襟を正す必要はあるでしょう。
特に日本選手権に関わってくる様な指導者には、そういう態度が求められると思います。
私自身も、襟を正す必要があります。

まとめ

最後はちょっと毒を吐きすぎましたかね。
まとめましょう。

①日本選手権に出ている選手は凄い!
②競技役員や補助員の方、本当にありがとうございます。
③試合を面白くするにはその筋の専門家を呼んだ方がいい
④試合が盛り上がることは選手の力になる
⑤指導者も命を削れ

ということで、草指導者前田は更なる高みを目指して指導力を磨きます。
来年はあと何名か一緒に日本選手権に行きましょう!

最後までお読み頂きありがとうございます。

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