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1人ワカサギ釣り

チャンスがあれば、なんでもやりたい。せっかく冬の北海道だし。
ただ人生初のワカサギ釣り、まさか1人で行くとは思わなかった。
釣りすらド素人の私がどこまでできるのか。

「ワカサギ釣りは朝早くが釣れやすい」という口コミで、朝5時半に起き、7時16分の北見駅発バスを予定してた。ホテルの部屋からバス停が見える距離なので、落ち着いていた。しかし初めての場所、念には念をと結局発車10分前にバス停へ。少し待って「温根湯温泉行き」というバスに乗車、一番後ろのシートに座った。
ホッ。

ところが、なぜか数秒で不安になった。昨日の夜から観光マップをたくさん眺めていた、その絵が脳内に蘇ってきた。それによると「方向ちがうかも!!?」とざわざわした。バサッと立ち、前に向かって運転手さんに「これ、ワカサギ釣りの場所行きますか?」と聞いた。同時にバスの扉が閉まる音が聞こえた。「行きませんよ〜閉まりますよ〜」の声を最後まで聞いたかは覚えていない。バスを飛び降りた。危機一髪、真反対の場所に行くところだった。前日の夜に「キタキツネ牧場」に行ってみたいなぁと思って、「温根湯温泉行き」バスの時刻表を枕元に置いて寝落ちしたことが、勘違いを招いた。と思う。相変わらず詰めの甘い自分に呆れる。

仕切り直して、北見駅→女満別空港→網走湖畔というバスのルートを確認。網走湖が目的地なので、これで間違いない。「ワカサギ釣り」を連呼してバス停のお姉さんにも確かめた。

私が乗ってきたバス、ホテルの乗客が乗り込んでいる

時間のロスでワカサギが釣れるか不安になりながら「網走湖畔」へ。このバス停で降りたのは私だけ。でも目の前は網走湖。ここまで来ればなんとかなるだろうと釣りの会場を目指した。

網走湖は全面氷

歩道の左手は網走湖。湖上を歩きたいが、万が一落ちたら悲劇なのでやめた。
15分ほど歩くとカラフルなテントが見えてきた。

ワカサギ釣り場

テントの中でどうやって釣ってるのか謎に思ったが、とにかく間違っていないことに感動した。

すでにここで達成感
前の人の説明を聞くことで、物分かりのいい客になれる

受付けで2000円を支払うと「氷に穴を開けてくれる、釣り竿、エサ、椅子」のインクルージブ。テントは別料金だったが「お天気がよくて、寒くないよ」と言われたので借りなかった。ただ、雪の反射で日焼けを起こしたので、気にする人は借りた方がいいと思う。

係のお兄さんは10代にも見えた

とにかくお兄さんについて行く。「どこからきたの?」「京都です」という何気ない会話も一人旅には沁みる。

こういうのカッコよく見える

場所はどうやって選んでるのかわからないが、急に立ち止まったお兄さんはドリルで穴を開け出した。ブーンブーンと爆音で穴を開けるので、魚が逃げないのか不思議。そして一仕事終えたお兄さんが「がんばって」と去って行った時は心細かった。

氷の上のパイプ椅子、こんな釣り姿は私くらい

ワカサギと私の戦いが始まった。10分20分・・。もう時計を見てもしょうがないので時間は気にしないことにした。
まわりで「キャーー」「オーー」と歓声が聞こえる。ということは釣れている。
私はまだ余裕があった。周りの景色も新鮮だし、自分がワカザギ釣りできるなんて思いもしなかったのでウキウキした。氷点下の中で。

まだ見ぬワカサギ
キタ!

どのくらい経ったのだろう・・ついに1匹目!無言で喜んだ。写真で比較するとわかりやすいが、晴れから曇りに、そして釣り糸にも氷が。
何度も、水の中に糸を入れて揺らして引き上げるを繰り返していたら、凍ってきてだいぶ重くなっていた。

ありがとー♡

そして、どんどん寒くなるわ、釣れないわ……ここで終わり。12時半近くになっていた。結果、2時間ちょいで4匹。初の挑戦にしたら上出来だ!と一瞬でも思えたのは幸せだった。
事務所に戻り「釣れた?」と聞かれたので堂々と「4匹です!」と答えたら、切ない顔をされて「昨日、お客さんが置いて行ったのあるからあげるよ5匹ほど足しておくね」と言われた。「え、いいんですか?」と言いながら、置いていく人がいるなんて……とそっちに驚く。

そして、天ぷら調理セット(1000円也)を用意してもらい、隣のコンテナで10匹ほどを調理することに。

新鮮

コンテナの中には3台のコンロ。ちょうど真ん中が空いたので、説明通り調理始めた。左隣は男女4人グループ。右隣はカップルのようだ。
グループの男性が手際よく揚げていたが、ふとビニールの袋を見ると到底数えきれないワカサギが入っていた。
「え、すごい量を釣ったんですね」と思わず声をかけた。
「200以上はあるかな、少しあげるよ」と返ってきた。200!!?
「え、いや、でも・・」と4匹釣れて、さっき事務所でも足してもらったことを説明。グループの方も「いいよ、いいよ」と20匹くらいは私の袋に入れてくれた。

どんどん揚げられる嬉しさ

なんて快いグループの方達なんだと感動してお言葉に甘えた。そして、少し話を続けると、彼らは「関西旭川会」のメンバーだという。どおりで、聞き慣れたイントネーションだと思った。そして「関西ですか?」と聞かれたので返事をしたところ「関西旭川会に入りませんか?」と突然のお誘いを受けた。
ここは旭川から遠く離れた網走。私は旭川となんのゆかりもないが「あ、ありがとうございます」と返事。定期的にジンギスカンを一緒に食べたり、旭川に遊びに来たりするらしい。とにかく気のいい方たちで、「大丈夫、怪しくないよ」「壺売りつけないでくださいね」など談笑した。

先に関西旭川会の方は帰られ、そのノリで右側のカップルと話したくなった。
「さっきの方、200匹超えてたそうですよ!」
「Oh my goodness!」
そう、この女性はどこから来たんだろう、と気になっていた。聞けば男性は日本人、女性はフィリピン出身、そして2人はベトナム在住とのことだ。
ここから明るいフィリピンスマイルに癒されて、また楽しく話し続けた。男性が揚げたワカサギはまだ揚げ切れていない状態で、生っぽく彼女にダメ出しをされていたのも微笑ましい。「僕はこれでいいと思うのに」と言う彼をよそに、カリカリになるまで揚げていた。

「ではお先に」と私はコンテナを出た。なにしろ、帰りのバスの時刻表もなく、ネットでも出てこないので、北見に戻ることに不安があったから。バスを降りた時に向かいのバス停で確認すればよかったが。アトノマツリ。

1日10本、まあまあ…

「次のバスまで40分ほどか」案の定、ちょうどいいバスはなし。でもこれなら北見の取材同行の時間に間に合う、と余裕だった。

少しの間、バスの時刻を見ていた私の後ろに突然車が止まる音が聞こえた。振り返ると一台の白い乗用車。運転席にはさっきの男性とフィリピン人の彼女。「バス?てっきり車だと思ったよ!どこ行くの?乗って!」と声をかけてくれた。「あ、え、いや、逆にどこへ向かわれますか?」と聞き直した。「私らはどこか街へ」と。「いいんですか?え、じゃあ…網走駅へ」とお願いした。本当は女満別は逆方向だが、網走の方が近いし、電車があると思った。

本当に親切なお2人

網走駅までは10分ほど。こんなにぬくぬくと駅まで行けるなんて思ってなくて、本当に感謝。旅先で受ける親切ほど嬉しいことはない。

網走湖で頂いたワカサギと、車に乗せて頂いたことはこの先も忘れることはない。

そして網走駅に到着。「本当にここでいいのね」と言われながら、何度もお礼を伝えて、2人を見送った。

この文字が縦なのは、網走刑務所を出所した人が真っ直ぐ生きるように、の願いらしい

いい話で、終わる予定だったが、駅に行き時刻表を見ると驚いた。14時半頃まで電車がない。ということは、取材同行には絶対間に合わない。取材する師匠のイオさんにその旨をメッセージした。

・・・・・・

「私は北海道まで取材同行のために来てるのに」といい加減呆れ、悩み始めたその時「網走刑務所にレンタカーで来ているので、すぐ迎え行くよー」と返信がきた。師匠と心の友がすぐ近くにいるなんて予想外で驚いた。(網走刑務所に行くとは知ってたが、レンタカーとは知らず、すでに北見へ戻ったと思っていた)

5分後、そこには知った笑顔があった。1日色々あった「1人ワカザギ釣り」が最後はぽかぽかな思い出で終わった。

お土産のワカサギを美味しいと食べてくれた友と師匠(オレンジの帽子)



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