見出し画像

ヤドカリは心のカビを防ぐ

ああ……そうか。私たちは、私たちの愛する息子に、土地や場所に刻まれた思い出を残してあげることができないんだ。

出典:ヤドカリ(谷本明夢)

「ヤドカリ」というタイトルで、どんな話が繰り広げられるのかと思っていた。
こんな切ない流れになるとは。

そういえば、私の引っ越し歴・・

京都で生まれて3カ所
滋賀で3カ所
福井で2カ所
期間は1年ほどだが、オーストラリア、スペインで2カ所
現在の京都で11カ所目!!

自分がこんなに家を転々としたことを振り返ったこともなく、初めて知って驚きだけど、私らしくて嬉しいじゃない〜と思った。とにかく3年間じっとしていられない性分のエビデンスになった気分だ。

著者の明夢さんは、息子さんに対して1カ所にとどまっていられないことを憂いている。ご自身が1カ所に住んで育ったことで、長く親しむ友達や環境がいつもそばにあったのだろうなぁ。そういう場所と機会を与えてあげられなかった、というやさしい親心。それも素敵。

でも、子どもの気持ちで返事するなら「心配ないよ」と伝えてあげたくなる。

私は中学で京都から滋賀のかなり田舎に引っ越した。親に「都会出身ぶったらあかんよ」とか言われ(京都ってそんな都会か?)、誰ひとり友人のいない環境にハードルを感じたこともあった。数秒だけ。

その中学3年間が死ぬほど楽しかったことが、今でも私の心に残るし、人生の美点だ。引っ越しできたことが大正解だった。

他の引っ越しも然り。新しい景色と生活の流れが、じめった心の隅に清々しい風を当ててくれてカビを免れてきた。

今でも場所の移動にストレスを感じず、どこでも心地良く「この場所」を楽しめるのは、ヤドカリ経験が大きいのかもしれない。

新しい視点で自分のことを振り返えることができた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?