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"ビジョンは不要、試行錯誤を全力で楽しむ" 中田敦彦「幸福論」

読書メモ#13です。
芸人、アーティスト、そして現在はYoutuberやオンライサロン運営と次々と新たなチャレンジをし続けるオリエンタルラジオの中田敦彦さんのエッセイ的な著書「幸福論」を読んで個人的に印象的だった部分をまとめたいと思います。

全く異なる分野で次々に成功を叩き出し続ける中田さん自身の生き方や考え方の本質の部分を垣間見える1冊で、中田さんのYoutubeを見る方などにはぜひ手にとって読む価値のある本だと思いました。

結果でなくプロセスが楽しめたかどうか

本書に書かれている中田さんの考えの中でも象徴的なのが、物事の目標を達することよりも、そのプロセスに価値があるという考え方かと思っています。目標を達成した瞬間よりも、そこに行くまでのプロセスがいちばん楽しいのだと言います。

その点で重要なのが、「長期のビジョンを持たない」という姿勢。世にある偉人たちの自叙伝の真逆の主張です。中田さん自身がそのようなことが苦手だ、と公言しているところもありますが、なぜそのような考えに至っているのでしょうか。

例えば、壮大な目標を立ててその達成に主眼をおいた場合、目標が達成された瞬間に爆発的な高揚感があることでしょう。
しかし、そのように目標のためにひた走った先のゴールが達成されてしまうと同時に大きな喪失感や無気力感に襲われてしまう可能性もあります。
また、その前に壮大な目標を走る途中のプロセスでそのプロセス自体に飽きてしまうリスクもあります。

そうならないためにも、中田さんはあくまでプロセスを楽しむという思考のもと、目標はあくまで手の届きそうなところに置くことで、それを短いスパンで達成していくという行動指針を取っているそうです。


ビジョナリー型ではない、試行錯誤型人間として生きる

前述の部分のまとめにも近いものですが、中田さんは自身を試行錯誤型と形容しています。中田さん自身がYoutube大学で紹介している偉人たちはみな「これを成し遂げる!」という大きなビジョンを持っている人物が多いです。

しかし中田さん自身はそのような大きなビジョンを掲げることは自分には向いていないと断言しており、前述のように小さな目標を次々と打ち立てながら次々と行動し、その達成までのプロセスを楽しむという生き方を実践しています。
RADIO FISHもYoutube大学も、そしてシンガポールへの移住も一見関連のないような様々な事柄も中田さん自身の試行錯誤の姿勢、やってみたいと思ったものにすぐに飛びついてみるという生き方を反映しているものです。

そんな中田さんの座右の銘は「前言撤回」。次々と思いついたことを始めてみては、ダメだと思ったらすぐに引き下がる。毎日毎日試行錯誤を繰り返しています。
これはオンラインサロンにいると本当に分かるのですが、中田さんが思いつきで始めたことが次の日には撤回されることが大小日々行われています。でもこれは中田さんの姿勢を理解しているオンラインサロン内だからこそ、中田さん自身も安心してどんどん前言撤回ができているものなのだと考えています。


オンラインサロンは「存在を承認してくれる場所」

中田さんは自身のオンラインサロンを「ただ、いてくれたら大丈夫」という存在を承認してくれる場所であってほしいと考えてデザインしているといいます。

中田さんのオンラインサロンはProgressという名の通り、個人の成長や自己実現のステップという意味合いのあるサロンです。オンラインサロンという閉じたコミュニティの中で、普段やりたいと思ってもできなかった発信活動や表現活動ができる場を提供しています。

しかし、そういった「何かをやりたい」という意識の強い人でなくても、ただそこにいるだけで居心地がいい、存在を承認してくれるような場所であってほしいという思いもあり、サロンの中では積極的にそういった人たちでも安心して居続けられるような施策がいくつもデザインされています。

あまりここで書きすぎると本論からずれて宣伝感が増してしまうのでこのへんでやめますが、気になる方は中田さんのオンラインサロンのyoutube動画などを参照したりググってみたりしてください。


感想:ビジョナリーじゃなくても大丈夫、という言葉の救い

中田さんの言う試行錯誤型の生き方がとても印象的だったため、こちらにもそれを中心にまとめるかたちになりました。

中田さんの価値観を象徴する部分として「世界一美味しいものはなにか」という言及が本書にはあります。かつて数々のグルメ番組で食レポを経験した中田さんが最も美味しかったのは「テレビの企画で野菜から自分たちで育てて作ったカレー」だったというエピソード。

美味しさ(結果)は、成果物としての料理自体のみにあるのではなく、そこに至るまでの愛情や想いと言ったプロセスが大きく作用している、という主張だと思うのですが、その価値観はまさに中田さんの姿を見ていると非常に重なる部分があります。

自分も仕事もプライベートもそれなりに楽しく生活をしているつもりですが、ふと「自分の人生の目標ってなんなんだろう」と漠然と考えてしまうことがあります。特に同じく自分がオンラインサロンに入会しているキングコングの西野さんの投稿する記事などを見てると彼の大きなビジョン(エンタメで世界を獲る、ディズニーを倒す)にふと自分を重ね合わせてしまい、自分の人生の軸や拠り所のようなものがほしいと考えることがよくあります。

しかし本書は、そんな自分の悩みを肯定してくれるような内容だったように感じました。そう考えると、よく似たカテゴリーに区分される中田さんと西のさんですが、活動の思想的な根っこの部分は結構違うことにも気付かされます。

気づいたら自分も30を超えて、コロナの影響もあってか日々自分の身の振り方、人生設計について考えることも多くなってしまったのですが、そんな自分の一つの拠り所になってくれるような考えを与えてくれる本であったように感じます。


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