初めてのキス
30分ほどして、夕飯が部屋に届いた。
「うんまそ!やっぱ和食はいいね〜!」
「温泉では和食ですね!!あきとさん、お酒いいんですか?」
「あ、そっか。泊まるんだもんね。じゃあ焼酎かワインでも飲もうかな。」
「ビールじゃなくていきなり!?」
「大人でしょ。笑 ビールあんまし得意じゃなくて。笑」
「意外〜。どうぞ、飲んでください。」
「じゃ、遠慮なく!れいちゃんは?ノンアルコールで何か頼む?」
「大丈夫です、水で。笑」
夕食も終わり、会話も弾み、あきとさんはお酒のせいか少し頬が赤く、
私がまだ見たことのない「可愛い」感じの一面が見れた。
別に大して面白くない話も、
目を細めて、お腹痛いよ、って笑ってくれる。
ーーー好き。私、本当に好きになっちゃったんだ。
「あきとさん。」
「んー。」
「彼女とか、いるの?」
「いたら俺はやばいね。まぁ、れいちゃんと泊まってる時点でもうやばいか。笑」
「そうなんだ。そっか。」
「何、嬉しいの?がっかりなの?略奪愛趣味?笑」
「やめてよ。笑 モテそうだからさ、あきとさん。」
「さぁ。プライベートで女性と接する時間があまりないからね。それに、こんなヤクザみたいって今日言われたし?笑 髪も今長いし、こんなん彼氏だったら嫌じゃない?笑」
「そうなのかな。私は今日全然嫌じゃなかったけど・・。あ、変な意味じゃなくて、そういう見た目とかで判断するみたいなのは、違うんじゃないかなーって。」
「じゃあ、俺がこれからめっちゃタトゥーまみれになって、真っ黒になってもいいの?笑」
「タトゥーって、一つ一つに思いがあるんでしょ?なら、いいんじゃない。」
「プールとかいけないよ?笑」
「お庭でビニールプール入ればいいじゃん」
「じゃあ、庭付き一戸建てに住まなきゃだね。笑」
「あきとさんは、大変だ〜!稼がなきゃ!笑」
「頑張るぞー!俺は、頑張る!」
「そういえばさ、あきとさんが忙しそうなのって、バイトか何かなの?」
「バイト・・笑 俺フリーターだと思われてる?笑」
「え、いや、バイトしながらバンドやってるのかなーって。」
「それでよく、俺と会ってたね。笑 ちゃんとバンドで飯食ってるよ。一応ね。笑」
「ええええええ!?それってすごいじゃん!私、超バイト人間か、実家がお金持ちとかって思ってた!ごめん!笑」
「いや、知らなくて当然だよ。笑 まだまだだし。笑 でももしかしたら、れいちゃんの周りには知ってる人いるかも。だから、俺の名前出しちゃダメだよ。本名もばれてるから。笑」
「そうなんだ・・わかった。逆に知らなくてごめん。でもそれなら尚更大丈夫なの?私といて。」
「俺がビッグスターだったらまずいよね。でも、若者のれいちゃんも知らないくらいの奴だよ。そんな奴を追っかける記者もいなければ、記事にしたとしても、誰も興味ないでしょう。笑」
「そういうものか・・。大変そうだね。なんか。」
「でも、楽しくやってるよ。やりたかった音楽ができてるし。」
「そうなんだ。やりたいことを仕事にできるって素敵だね。」
「でーしょーー?俺は幸せだなー。笑」
「なに?酔ってるの?笑」
「酔わせてるの?笑」
「うるさいなー。私もいつか、あきとさんがギター弾いてる姿、見てみたいな。」
「ギター?笑 俺、ベーシストですけど!どこぞのギタリストと間違えてるんだよ!笑」
「え!そうなの?ごめん、ギターだと勝手に思い込んでただけ!笑 ベースなんだ。じゃあ、ベーシストの姿を見てみたいな。笑」
「見たら大変なことになるね。笑 ぜーったい惚れちゃうからやめたほうがいいね!うん。」
「何それ。笑 惚れるわけないでしょ!」
「ふーん。後悔しても知らないからね〜」
と、グラスを片手に、あきとさんはソファへ移動した。
「れいちゃんも、隣、おいで!」
「うん。すごい上機嫌だね。笑」
「そりゃーねー!楽しいもん。」
私もソファへ移動する。
「あきとさん、お酒くさい。笑」
「やだ?ハァァァァー。笑」
(私に息を吹きかけてくる)
「やーだー!!やめて。笑」
どんどん上機嫌になっていく、あきとさん。
テレビをつけて、たまたまやっていたバラエティ番組にも、
大爆笑が止まらない。
ーーーこんなに見た目クールなのに、ギャップだな。笑
あきとさんのこんな楽しそうな顔、見れて本当に嬉しい。
辛いことがあったら、支えてあげたい。
私はまだまだガキだけど、あきとさんの笑顔を引き出せるなら、何をやってもいい。
そんな風に思っていた。
「れいちゃん。」
「・・!はい!」
ーーあきとさんの顔が近づいてくる。
ーー逃げるべきなのか、逃げたら気まずくなるのか。
「俺を男性として見ないでね。俺も見ないから。約束できる?」
「・・・え?なんで?」
「なんでも。俺は、ダメだよ。」
「・・・そんなの、コントロールできることなの?」
「大人はしなきゃいけないときがあるの。」
「私は?」
「大人になる練習だよ。」
「・・・・」
私は、「いやだ、もう好きだもん」という言葉に代えて、
あきとさんにキスをしていた。
「・・・ダメだってば。」
そっと離される。
「私を女として見れないってこと?」
「・・おばかちゃん。今だって理性を保つのに大変なんだよ。」
「理性?わからないよ・・・」
ーードンッ
あきとさんが持っていたグラスを絨毯に落とし、
私に覆い被さる形になった。
戸惑う間もなく、触れるか触れないかくらいのキスを。
驚く間もなく、次は私の口の中に侵入してくる濃厚なキス。
あきとさんの口に空いたピアスの感触が私の舌に感じる。
されるがまま、私も応える。
息が苦しくなって、眉間にしわを寄せる。
あきとさんの唇が離れ、
「理性を保てなくなるって、どういうことか知りたい?」
そう真剣な顔で私に問いかけた。
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