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不意再会

「れいちゃん、覚悟できてる?」


「・・・うん」


「じゃあ…、見る?」

「・・・うん。」



「「はっ・・・」」


「れいちゃんーーーーー!!!やったね!やったね!!!!おめでとう!!!!」


そう、今日は、第一志望の難関私立大学の合格発表日。


あれから、本当に死に物狂いで勉強に励み、私は無事合格した。


母が涙を流して喜び、私もホッと力が抜けた。

いろいろあった高校生活だったけど、これでよかったんだって。


受験勉強に励むと決めて、

あきとさんのことを忘れようと決めたけど、

人間はそんなに上手にできていなくて、

ーー考えないようにしよう。

と思った時点で考えてしまっていて、何度も勉強机やベッドで泣いた。


それからの大学生活は本当に楽しくて、

今思えば、「人生の夏休み」そのものだったかもしれない。


アルバイトもして、自由にできるお金も増えて、何人かと付き合った。

卒業間際に付き合った彼は、2年続いて、お互いの両親公認の仲で、

年末年始は彼の実家で和気藹々と過ごしたりしていた。


あきとさんのことなんて、もう忘れていた。

幸い、あきとさんのバンドファンの子が周りにいなかったということもあり、

あきとさんを不意に目にすることもなく、私の記憶からどんどん消えかけた。


あっという間に就活の時期がきて、

私は、夏に行ったインターンシップ先から冬に内定をもらったこともあり、

心に余裕を持って、就活に励んだ。


結果、現在勤めている某広告代理店に入社。


付き合っていた彼とは、同棲までしたけど、

私の仕事が忙しすぎて、一緒にいる時間も減り、

家に帰っても、常に仕事をする私に、「結婚」という将来は見えない、

と別れた。


それからは、会社に近い場所へ引っ越し、更に仕事に励んだ。

プライベートも全て捨ててきたからか、

入社3年目で役職がつき、周りの友人とは少し違った環境にいた。


そして、その日がきた。


ブブッ・・

ーーれいさん!今日どうっすか!?


大学時代の後輩の男の子だ。

彼とは、唯一仕事の話を熱く語れる仲間。

恋愛感情はお互いに一切なく、それも気軽に誘い合えるポイントだった。

ーーーいいよ!行こう!こないだクライアントに紹介してもらったお店がすごくよかったから、そこ行こ!

ーーーまじすか!?了解っす!21:00には会社でます!

ーーーは〜い!


後輩と待ち合わせをして、お店に向かった。

いつもと変わらず、仕事や将来どうなりたいか、など熱く語る。

恋愛の話なんて…そんなの滅多にしない。


「ちょっと、トイレ行ってくるね」

そう席を立ち、トイレへ向かうと、誰かが入っていた。


トイレは1つしかなかったので、その場で待つ。



すると、扉が開き、私に少し当たる。


「あっ、すみません。」

「いえっ・・!え。」

「え・・・うそ・・・」


あきとさんだった。

あれから10年近く経ったけど、変わってない。

私の知っているあきとさんだった。


「なんで・・・?」


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