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スマトラ島の温泉をめぐる旅 11日目 ブラスタギからトバ湖へ

楽しみにしていたシバヤッ山に登るのは諦め、トバ湖に移動することにした。気軽なハイキングだとしても腰の状態に自信を持てなかった。

トバ湖まで、自動車のシェア利用で250,000ルビア(2500円)。4時間ほどかかるらしい。午後1時に迎えに来てくれる。
貸し切りだと途中でカロ族の村によったり自由な旅程を組めるが、750,000ルピア(7500円)かかる。今回はやめておいた。


1. ブラスタギ観光

出発まで観光にあてることにした。
とはいえ、ブラスタギの街は長さ1キロほどの真っ直ぐな大通りに沿ってこじんまり街が形成されており、昨日も観光したばかりだ。すぐに見終わってしまうだろう。

まずは朝ご飯でも食べるかと通りに出てみると、夜の屋台はすっかり片付けられ、清掃員がきれいにゴミをはいていた。
そして、歩道にはテーブルとプラスチックのイスが並べられ、人々が爽やかな朝食をとっている。
わたしも仲間に入れてもらい高原の涼しい気温のなか食事をとった。

ゆっくりと食べたつもりだったが、まだ時計は9時前。
わたしはちょっと遠出してみることにした。遠出と言っても1キロちょっと。
メダンから来る途中に見た、巨大なカロ建築風の教会を近くから見ようと思った。

緩やかな登り坂を登って行くと、特徴的な教会の屋根が見え、崖下の集落を抜ければ近道のようだ。

右に降りる道がある。

迷路のような折れ曲がった小路を多分こっちだろうと見当をつけながら、探検気分で歩く。
住人のかたがたにはのぞき見をして申し訳ないが、生活の様子がわかり興味深い。
プライバシー空間なので写真は撮らなかった。

最後に階段状の坂を上り太い道に出て、しばらく進むと教会についた。

門の警備室には誰もおらず、代わりに首輪も綱もない犬たちが数匹、ワンワン吠えながら群がって来る。匂いを自由にかがせながら、近くに見えたスタッフらしき男性に声をかけ、入る許可をもらった。
犬たちは平和主義者のようで噛むようなことはない。安心して欲しい。

教会の中は壁のステンドグラスが美しい厳かな雰囲気だった。

広場の端に高床式の伝統家屋が見えたので行ってみた。

中に入れるので入ってみる。
天井が吹き抜けで開放的なせいか、物がないせいか、広く感じる。
床には4箇所いろりがある。4家族の共同住宅だったのかもしれない。

床を支える横木も柱のような太さだったが、住居の梁も日本の豪農の館も顔負けの太さだ。
ロフトもあり貯蔵スペースに見えた。

囲炉裏の煙で燻され黒ぐろしている

森林資源に恵まれた地域だったことが分かる。
ドネイションの箱にお金を入れて出る。

犬たちはすっかりリラックスしていて、帰ろうとするわたしをちら見しつつ寝ていた。

部屋でシャワーを浴びてのんびりした後、12時チェックアウトに合わせ部屋を出た。宿の横のシバヤッカフェで時間を潰す。宿のwifiもここなら届く。

宿の犬ボンゴも来て、勝手に椅子に座っている。首輪もせずに放し飼いにされている大人しい犬だ。

よく見えないが右側の椅子の上にいる

ブラスタギ名物マルキッサジュースを頼む。

15,000ルピア(150円)

コーヒーも追加する。

12,000ルピア(120円)

2.トバ湖へ

サモシール島へ渡る船が出る他、各地へのバスの発着場所にもなっているパラパッの町に向かう。
道は上下二車線あって舗装もされているが、幅は細く穴ボコだらけ。
峠越えはあまりなく、高地をひたすら走っていく感じの道だ。

同乗者はフランスの若者が一人だけで、彼はもう6ヶ月も東南アジアを旅しているそうだ。
日本にはスキーのシーズンに行きたいと言っていた。日本でスキーをするのが憧れだそうだ。

2時間以上乗った頃、目の前が開けトバ湖が見えた。とんでもない大きさだ。
加えて息を呑む美しさ。
天国は存在するのかもしれない。そんなことを思った。

この美しい光景が人類を滅亡寸前まで追い詰めた大噴火の跡なのか。
人智の及ばない世界が眼下に広がっていた。

現実の話をしてみる。物理的な大きさの話だ。

湖の中にあるサモシール島は630平方キロメートル、最高地点は標高1600メートルある。淡路島より大きな島がすっぽり入ってしまう大きさだ。

琵琶湖の面積が670平方キロメートルに対して、トバ湖は倍近い1130平方キロメートル。
ざっくり長さ100キロ、幅30キロある。深さは530メートル。

これだけの穴が開くほどの噴火は、わたしには想像できない。なにしろ、一目で全体を視野に入れることができない規模なのだ。

車は外輪山を通る道を外れ、湖に向かい坂を降りていくと、サモシール島に行く港の前で停まった。

わたしはパラパッの街に留まらず、まずサモシール島に渡ることにした。同乗のフランス人もそうすると言っていた。
島には出島のような飛び出た半島があり、そこには安宿やレストランが集積している。
卜ゥ卜ゥという場所だ。

船にはガイド兼客引きが乗っていて、わたしはレンタルバイクの手配を頼んだ。
1日20万ルピアとふっかけて来たが、24時間で10万にしてもらった。4日間も借りるのだから、これでも多めに払っている。

宿はグーグル検索で出てこないところを紹介して来たので断った。
しばらく使わないでいたアゴダ経由で、船の上から8万ルピアの部屋を取った。便利な時代だ。

ガイドは憤慨している。お前のやり方では地元が潤わないのだと。それは分かるが、君たちがぼったくるせいでもある。
商売の基本は信用なので、信用力を築く努力をした者が勝つだけだ。

船で一緒になった、母娘3人で旅をしているオランダ人から興味深い話を聞いた。
彼らはここに来る前にブキットラワンというジャングルツアーで有名な場所に行ったそうだ。
そこで母は骨折したんじゃないかというほど足を強くくじき、そこで民間療法を受けた。聞くといかにもという内容で、大量のニンニクとタマネギを患部に擦り込むというものだ。イタリアンレストランでパスタを頼んでいる気分だったわと家族で笑っていた。
レントゲンを取りに行ったメダンの病院では、このニンニクマッサージは症状を悪化させただけだと言われたそうだ。

3.トゥトゥにて

船は小さい港“バグースベイ(良い港の意味)"に着いた。わたしとフランス人はここで降りる。

片道15000ルビア(150円)

そこで待っていたバイク所有者と、レンタル内容を話し合意した。
宿に向かうと、バグースベイ・ホームステイは偶然にも港の隣だった。

安いのは良かったし、雰囲気も好きなんだけど、この気温で水シャワーはきつい。
冷たい山水が身にしみる。

夕食はバタック人の刺し身料理、「Na Niura」にしようと探したが、調理に時間がかかるため前もって注文しないといけないらしく無かった。

別のバタック料理を頼んだ
Ikan Panggang とKangkung Kaucho。
Ikanは魚の意味で、Nilai=ティラピアと言っていた。
Kauchoはよくわからなかった。大豆発酵食品で醤油や味噌に近いように感じた。

右がティラピア

宿に戻ると、宿の食堂が最高の雰囲気のバーになっていたので、ついビールをもう一本いってしまった。
ヒッピーの聖地だっただけのことはある。ゆるい空気が流れる、時間の流れが変わる、わたしの表現で恐縮だが“時空の歪みを感じる場所“だ。ハマりそうで怖い。なんとなくバリっぽい。
船も島も、そして宿も、いったい今までどこにいたんだというくらい西洋人がたくさんいる。

わたしは明日にはいったん脱出する予定にしている。

地元の飲み会に参加する

夜ビールを飲んでいる時から、遠くの方で太鼓の音とともに集団の歌声が聞こえていた。
わたしはどうにも気になり、ビールを飲み終えると声のする方へ行ってみた。すると、酒を飲みながら車座になって歌っている集団がいた。

そこのお前、こっちへ来いと言われ、まあこれでも飲めとヤシ酒をごちそうになりながら、バタックの歌声を全身に浴びた。
最高に気持ち良かった。
明日旅立つ仲間のために、お別れの宴を開いているところだったのだ。

長渕剛の「乾杯」や海援隊の「贈る言葉」「人として」みたいな感じの曲、といっても分からない人の方が多いかもしれないけれど、似ていて驚いた。
男どもが、肩を組んで半分涙ぐみながら絶唱するやつ。わたしもよくやってました。

音楽好きのトバ人らしく、ギターを弾く人が3人もいる。太鼓も2つ。がなり立てているようでハモっている。みなとても酔っており、何度名前をいってもお前の名前はなんだと聞いてきて,その度に握手を繰り返した。

太鼓の男性の奥さんだというスイス人は、「この人たちは友との別れでとても酔っているの。気にしないでね」と言っていた。

宴は延々と続くようだったので、こっそり退席し宿に戻った。

今日も楽しい日だった。

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