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スマトラ島の温泉をめぐる旅 8日目 温泉が湧く神秘の洞窟

メダンの南30キロほどの山の中に、温泉が集まっている場所がある。
有名なのはオランダ植民地時代から避暑地として開発されたブラスタギというエリアの近くにある温泉。今回の温泉はそれよりだいぶ東側になる。

青い丸が今回の温泉 赤いバツが事故の場所

朝8時前にGrabを呼び運転手と交渉した結果、3か所回って帰ってくるプランで220,000ルピア(2200円)となった。幹線道路から外れたカントリーロードなので、道は細く荒れていると予想された。
運転手に聞くと、行ったことがないから分からないという。そんな場所だ。


1.エルグンダン・デリ洞窟温泉

Goa=洞窟という名のついた温泉があるのを見つけた。
写真を見ると洞窟らしい風景が見える。ジャングルの中の洞窟に温泉が湧いているなんて、温泉好きにとってはロマンでしかない。

バイクは田舎道を進んでいく。
思ったよりも集落はあり、人口もそこそこあるようだ。バタック族を示す横長の帽子をかぶっている女性をよく見る。

道は未舗装だが幅広く、坂はそれほど急ではない。雨が降ると大変そうだなと思い、運転手に 「メダンでは他の地域と同じように雨は午後遅くに降るのか」と聞いたら、ここは山なので読めないとのことだった。
山の天気は変わりやすいというのは世界共通の現象のようだ。

洞窟温泉には1時間ちょっとでついた。

右の屋根の建物で料金を支払う

運転手にここで待っているように告げると、俺の分はないのか?と聞いてくる。こんことは初めてなので、「温泉に入りたいの?」と確認すると「アク マウ」(I wantの意味)と懇願してきた。どうやら温泉好きらしい。
2名分30,000ルピア(300円)払う。

広々としたプールの温泉が4つほど現れた。触ると38度くらい。適温だ。
深く広々した湯船の浮力が気持ち良い。

家族連れが何組か来ていて、メダンから来たと言っていた。みな泳いでおり、中には飛び込む者までいる。日本では顔をしかめる行為だが、ここではそれが普通なのでわたしも慣れてしまった。
わたしも最近では潜水するようになった。

しばらく入ってから上がり、「ゴアというのに洞窟はないんだね」と話したら、あるから案内するよといって、若者が連れていってくれた。見るからに頭が良さそうで、英語も上手だ。多分インテリだろう。

200メートルほど奥に行くとあった。
1箇所だけでなく3箇所もある。しかも硫黄泉特有の白濁した美しい温泉だ。

一番広い打たせ湯の浴場

階段があるので下に降りていく。
薄い水色に白濁した、いかにも濃そうなお湯に入ってみると、適温の硫黄泉で鮮度も最高レベルだ。驚いた。
わたしは洞窟風呂にゆっくり入りながら目をつぶり、頭の中を真っ白にした。洞窟の天井から、水滴が雨のようにしたたる。
身も心も洗われるとは、まさにこういう時なんだろう。
ふと我に返ると、若者といっしょについて来た少年が、ネコと戯れていた。お待たせして申し訳ない。

洞窟を出る前に、湧き出ている場所を見せてもらった。入れないように道をふさいでいるが、浸からないで見るだけなら良いといって入れてくれたのだ。
薄暗い洞窟の中に窪みがあり、そこがメイン湧出口のようだ。他にも洞窟の壁際から湧きでている場所がある。

次に入ったのは独立した洞窟で、すでに屋根部分が落下し大きな穴が空いている開放的な温泉。複数の場所から打たせ湯をた楽しめる仕掛けがしてある。
この打たせ湯はもはや打たせ湯というレベルではなく、滝行に近い大量の湯量を楽しめる。ドドドドドと容赦なくぶつかってくる湯で頭や体がグラグラしてしまう。

こんなすごい温泉があるのに有名になっていないなんて勿体なさすぎる。

洞窟の温泉は硫黄泉で、入り口に近いプールの温泉は別の源泉。ポンプで引き上げていると説明があった。

ここに宿泊施設があるといいねと伝えた。
瞑想風呂と名付けたい。

2.ラウ・シゲンブラ・プネン温泉

次に向かったのは洞窟温泉から1キロほど離れた場所にある温泉。
二つ隣接するうちの一つに入った。
ここも硫黄泉特有の薄い水色をした温泉だ。

2つプールがあって、熱湯とぬる湯に分かれている。熱湯で40度、ぬる湯で38度くらいと思われる。

手前が熱い。いつもの水色に壁を塗っているプールではなく、温泉自体の色が水色

気持ちがいい。
ここは人気なのか、次々人がやってくる。

源泉を貯める貯水槽はプールのすぐ横にある。ここで湧いているのか、別の場所から引いてきているのか分からなかった。
お湯の表面にガラス膜のような薄い膜ができているので、カルシウムも入っているのかもしれない。

3.ラウ・シバヤッ温泉(3つの味)

次に向かったのはさらに山奥に3キロほど入ったところにある温泉で、最初運転手は遠いだの道が悪いだのと嫌がった。ところが、温泉の人たちが10分くらいで道もそんなに悪くないから行ったらどうだと言ってくれて、運転手は翻意した。

道はそこまでひどくはないがでこぼこだ。でもこんな山奥なのに結構な数の住人がいて驚く。

カロ語のポップスが流れる

ここが1番熱いと聞いていた通り、42度はある。
色は硫黄泉の特徴である薄い水色。味も硫黄泉だ。

源泉はここから500メートルほど奥

インドネシアに来て、こんなに良質な硫黄泉に立て続けに入れるなんて思っても見なかった。
源泉掛け流し、豊富な湯量の温泉は日本だと数が限られる。源泉に比べて使用箇所が多すぎるのが原因だ。それだけ温泉が人気という証拠でもあり複雑な気持ちになる。
昔はインドネシアみたいに湧いている場所にそのまま入るスタイルだったと思う。それが洗練され、洗い場シャワー、シャンプーリンス、更衣室にドライヤーまで揃い、気軽に入れるようになった。
大規模な温泉ホテルがたくさん立ち始めて、施設内に豪華な巨大風呂をいくつも用意するようになると、温泉はたりなくなってしまう。

4.帰り道で事故にあう

運転手が帰りはべつの道がいいというので、だいぶ遠回りにはなるが、峠を越えてブラスタギ方面に行く幹線道路に出ることにした。
確かに道は舗装されているが、道は狭く坂とカーブは急で、遠回りする価値はないなと思っていた。
景色はすごかった。遠くまで見渡す限りの密林なんて初めて見た気がするし、山肌をぬって流れる急流の美しさは上高地のようだ。

ところが、ブレーキをかけ続けたせいでだんだんと熱を蓄積したブレーキが効かなくなり、最後はカーブを曲がりきれずにまっすぐ突っ込んでいった。
その前からカープの曲がり方がおかしかったので、ふざけているのかなと思っていた。だから、まっすぐに木と標識に向かって突っ込んで行った時は、嘘だろ?ギリギリで曲がるよなと思ったくらいだ。

スピードがそんなに出ていなかったのと、崖側じゃなかったことが幸いし、2人とも擦り傷、切り傷で済んだ。後で落ち着いてみると、あちこち打ったようでさわると少し痛む。その程度だ。
バイクもカウルが壊れたくらいで動作には問題無かった。ただ運転手のヘルメットは壊れたようで、その場に廃棄していった。
ヘルメットが無ければ無事に済まなかっただろう。
わたしには神秘の洞窟温泉が守ってくれたのかもしれないと感じた。

この看板に激突
タオルで強く押していたら止血した

5.メダン観光

明日の朝ブラスタギに移動する予定なので、最後にもう一度観光した。

昔の郵便局。今はいろいろ店が入って現役で使われている。ここのカフェに立ち寄った。
入り口を入ってすぐの吹き抜けロビー

郵便局のある交差点には他にも旧市庁舎なども建っている。
駅前の大木の並木に囲まれた広場だったであろうスペースには何やら大きなビルを建てようとしているようで、残念。
絶対に広場のままにしておくべきと思う。

右の建物が旧市庁舎

旧市街地の通りで1番気に入った建物

6.メダンの食事を楽しむ

昨日食べられなかった食べ物を食べた。

(1) Nasi Ayam Hainan ハイナンチキンライス

地球の歩き方に出ている店に行ったら閉まっていたので、横の店で食べた。まあまあ混んでいたので大丈夫だろうと思ったのだ。

50,000ルピア(500円)

シンガポールのハイナンチキンライスと違う。ご飯とスープの味だけ一緒。
こっちのタレは唐辛子の無茶苦茶辛いやつ。肉も2種類入っている。

中華街の様子

メダンは本当に歩いている人が少ない。日本の地方の県庁所在地もこんな感じのところが多かった。

(2) Wajir Seafood

やっぱり港街は魚でしょ、ということでシーフードレストランで1番良さそうなところを探してやって来た。Google mapのコメント数12,000超え、評価4.5。
昨日見たら入りきれない待ち客が通りまで溢れていた。

わたしは混む前に行こうと18:00に入店した。正解。
頼んだのはオススメマークが付いていたカニのルアックソースXOと、カニとコーンのスープとライス。カニ祭りにしてみた。

カニはソフトシェルクラブでかなりのクオリティー。47,000ルピア(470円)なんて信じられない。スープもこれでホントにたったの14,000ルピア(140円)?というレベルだ。
カニですよね。メニューによく時価って書いてあって緊張するやつが、どうしてこんなに安いの?
それ以外にもマンゴーエキゾチックジュース17,000ルピア(170円)も驚く旨さ。マンゴーに別のフルーツを混ぜているのだが、ただのマンゴーよりずっと美味しくなっているよ。これなら30,000ルピア(300円)とっても全然いい。

全部で税込84,000(840円)だった。インドネシアといえども、どんなに安くてもこれだけ頼んだら200,000ルピア(2000円)近くはいく。
ただ安いだけでなく、かなり美味しさなので驚きだ。これは混むのは分かる。もう他の店には行けなくなる。
さすが食の街メダンだけのことはある。

メダンに行く機会があれば、ここは絶対に行ってほしい。

もう一回行きたかった。

明日は朝はやくチェックアウトし、バスでブラスタギに行く。


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