前田有一┃映画批評家
映像を読み解くことを生業とする映画批評家が、プロパガンダの分析テクニックなどを用いて政治問題、社会問題を読み解きます。メディアリテラシーを磨くためにも、こんな視点があるのかと楽しんでいただけたら幸いです。
アカデミー作品賞選定に新基準 CNNによると、米映画芸術科学アカデミーが発表した新しい多様性重視の選考基準に対し、俳優のリチャード・ドレイファス氏が「吐き気がする」と発言、批判を繰り広げました。 この「新しい基準」とはすでに前回2月のオモシロ映画道場に来てくれた方には解説済みです。 ようは、2024年からのアカデミー作品賞は、主だった出演者に有色人種やLGTBTなどマイノリティーを起用するか、出演者やスタッフの3割以上に起用しなくてはいけないというものです。 こうした
21年10月、映画の撮影中にアレック・ボールドウィン氏が撃った小道具の銃が誤発射して女性スタッフが死亡した事件で、ボールドウィン氏が遺族側と和解に至ったことが報じられています。 20代の女性管理者の責任は この撮影現場では死亡事故の数日前にも2回にわたり誤射事故が起きており、銃の管理者の責任が問われていました。 この管理者は経験2作目の24歳女性で、業界における過去の重大事件を直接知らない世代でした。 その事故とは93年におきた『クロウ/飛翔伝説』におけるブランドン・
オモシロ映画道場 関東(10月)&九州(11月)開催のお知らせ現代人必須のエンタメ教養・ビジネス感覚を、笑いとともに学び身に着ける 私、前田有一(映画批評家)と落語家の桂竹紋さんによる落語×映画のイベントのお知らせです。 日常に役立つ雑学を得られる上に、爆笑の時を過ごせます。伝統芸能たる落語も体験できる。ライブならではの共通体験を存分に味わってください。 映像分析スキルに興味のある方へ 今回はズバリ「映像分析スキル」をソッコーで身に着けていただくコンセプトです。 現
朝日新聞は28日「慰安婦論争扱った映画「主戦場」出演者らの控訴棄却 監督側が勝訴」と題する記事を発信しました。 「主戦場」は日系米国人のミキ・デザキ監督が、慰安婦問題を巡る右派と左派の論争について、とくに右派言論人のトンデモ発言をフィーチャーしたドキュメンタリーです。 当初は学問研究のためなどとウソの理由で取材依頼されたので協力したところ、実際はそれに反した形で商業映画に使われたとして、原告の米国弁護士ケント・ギルバート氏らが訴えていました。 その控訴審判決が出て「映画
◆はじめに◆ この原稿は、22年の7月下旬に書き下ろしで執筆したものだが、22年9月28日、電子媒体note用に、ほんの少し読みやすく加筆訂正を行った……とする予定だったが、あえて誤字等以外の訂正は行わずに掲載することにした。 その理由は、私前田の予測や分析の正確性を、しっかり採点してほしいとの思いからだ。万が一、いいかげんな予測をしていたら、この後に書いてある内容はほとんど「はずれ」ているはず。だがもし予測の数々が「当たって」いたら、それは分析者としての自分の評価につな
この記事は、 パート1 「安倍晋三元首相の国葬を映画批評家が分析したら、NHKのホンネがバレた 件」 パート2 「【安倍氏国葬】"張りぼて祭壇"を映したNHKの意図」 に続く国葬分析記事3部作の完結編です。 早速まいりましょう! テレビ映えとは真逆の効果だった逆光における人物撮影 このあとは岸田首相はじめ出席者の追悼スピーチでしたが、このときのカメラ位置がよろしくありません。 逆光で写すこと自体は、人物の輪郭を強調する撮影の基本ではありますが、中継映像だと必ずしも
この記事は「安倍晋三元首相の国葬を映画批評家が分析したら、NHKのホンネがバレた件」の続きです。国葬分析記事3部作の2本目です。 ◆前回までのあらすじ 安倍晋三元首相の「国葬中継」という、NHKの未来をかけた「作品」があまりにも異様すぎるという分析を、いくつもの根拠とともに描きました。 前座映像のファーストシーンには「岸信介」を登場させて、安倍晋三が統一教会の継承者であることのメタファーとした。 さらに岸田首相の「国葬擁護論」が滅多打ちにされる野党の論破ショーを見せ場
はじめに 安倍晋三元首相の国葬儀が本日9月27日、執り行われました。 メディアは便宜的に国葬といいますが、厳密には国葬儀。国葬ではどうしても法的根拠が見つからなかったため内閣法制局の尻を叩いて、「国葬でなく、国の"儀式"ならば、無理筋ですが閣議だけで決められる、こんな法律がありましたヨ首相!」と見つけ出させたので、岸田首相は必ず「国葬儀」と、"儀式"であることを強調しています。 最初からそのような無理を押し通したため、反対世論が報道各社60パーセントを超える状況になった
はじめにまず最初に、私は現在当該番組を視聴できる環境になく、実際に高市早苗氏がこのような言い回しをしたかが確認できません。映像を確認できなかった以上、完全な分析ではないので、それを念頭にお読みください。あくまで、引用記事の内容が正しければ、との前提で分析したものです。 読売テレビ「かんさい情報ネットten.」の発言内容で矛盾発覚?さて、旧統一教会との関係が疑われている高市早苗経済安全保障担当大臣ですが、生放送の番組内であきらかにつじつまの合わない発言をしているので指摘したい
この記事は、前編「映画批評家が第2次岸田改造内閣を分析したら、衝撃の結論が浮かび上がった件」に続く後編にして完結編です。 残る2つのケースの分析は少々異なるさて、残る疑惑の人事は二つです。 3 厚生労働大臣 無派閥の後藤茂之⇒茂木派の加藤勝信(再入閣)に 4 経済産業大臣 安倍派の萩生田光一⇒安倍派の西村康稔(再入閣)に 実はこの二つは、「退場者に統一印のレッテルを張り政治生命を奪う」という、1と2のケースで行われた岸田首相の裏目的とはちょっと違います。後藤茂之氏は今の
はじめに 岸田首相の本音を知るには、入閣メンバーだけ見ていては足りない22年8月20日は重要な記者会見が二つも行われました。第2次岸田改造内閣についての発表会見と、旧統一教会による会見です。 どちらの会見もこのマガジンの分析対象としてふさわしいわけですが、より重大な第2次岸田改造内閣について、今回は分析したいと思います。 改造当日から、すでに多くの評論家や識者がそれぞれの見方を発表しています。入閣メンバーについて、その政策や背景から、岸田首相の本音を探ろうと必死です。
最近日韓の映画業界の差についてコメントを求められる機会がありました。 日本でもうすうす知られつつあるように、今や日韓の映画には、明らかな差がついている状況です。いうまでもなく、日本が韓国の後塵を拝しているという意味です。 決定打となったのはアジア初の米アカデミー作品賞の栄誉を「パラサイト 半地下の家族」に取られた瞬間ですが、実際はそれよりはるか以前から追い抜かれていた印象です。少なくとも、多くの業界人はそう見ています。 本当に韓国コンテンツなんて流行っているのか? …
このシリーズの第一回では、ゼレンスキー大統領の国会演説は日本人向けオーダーメイドであり、日本人の情緒に訴える仕掛けが多数あることを実例を挙げて示しました。 第二回では、ゼレンスキー大統領と日本政府には利害の一致があり、あの演説は日本人を思考停止に陥らせる危険性があることを、実例を挙げて説明しました。 また、ウクライナの背後にいるアメリカこそが「力による現状変更」そのものをやってきたことを指摘しました。 今回の記事はシリーズの完結編となります。 力による現状変更 アメリ
ゼレンスキー大統領の、日本への具体的な要求とは前回、ゼレンスキー大統領の演説は日本人向けオーダーメイドであり、日本人の情緒に訴える仕掛けが多数あることを実例を挙げて示しました。 その上で演説の本題に入るわけですが、ここで大統領は日本に対して「経済制裁の発動を引き続き求める」と発言しました。 これはプロパガンダとしてのアピールではなく。まさに具体的な要求と言えます。 これを大統領が国会で発言することは当然、事前に予測がついていたので、たとえ具体的な打ち合わせがなかったとし
カメラの構図・位置などからわかる、日本人に与えようとした印象とは?22年3月23日18時、日本の憲政史上初めて国会(議員会館)で紛争中の外国首脳が(オンライン)演説を行いました。ロシアと戦争中のウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領です。 かねてから言われている通り、彼の演説は相手によって表現や内容を変更する「オーダーメイド演説」であり、日本人向けバージョンもいくつかの特徴が見られるものでした。 カメラは正面、目線と同じ高さ。これを撮影用語でアイレベルといいますが
ネットにはネタバレがあふれているので要注意!noteでは映画批評記事をアップすることはなかったのですが、この映画に限っては ・ネタバレしたら面白さが半減すること ・本日から情報解禁であること ・経験上、ニュースサイトやSNSには確実にネタバレ情報があふれること から、例外的に「安全な」「予告編以上のネタバレがない」映画批評記事をアップすることにしました。スパイディのファンの皆様は、これだけ読んで、公開日を待っていただいたほうが良いと思います。ネットには無神経なネタバレがあ