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連載03「空き家探し」


僕は翌朝から囲炉裏のある空き家を探しはじめた。
空き家を探すといっても、そう目ぼしい物件が見つかるわけではない。
囲炉裏のある古民家なんてそうそうないのだから。


あったとしても、たいていコンクリートでふさいでしまっている。
囲炉裏で燃やすと煙がすごいし、掃除が大変。
山に住む老人たちは皆、口を揃えてそう言った。


古民家・囲炉裏をキーワードに、知人のつてで、とあるNPO法人が管理する武家屋敷に招待してもらったこともあった。そこにはたしかに囲炉裏が残っていた。でも、形を残しているだけで、防火上の問題で使っていないらしかった。
それ以外にも、囲炉裏カフェなんていうのもあったし、そういうところをたまにレンタルして使うっていうのでもよいのでは?と考えたこともあった。


でもやっぱり僕は自分たちだけの居場所がほしかった。
それは山梨の古民家合宿が終わってから決心したことでもあった。
ひとに借りているだけでは、そこを教育的にイジることができない。
それに古民家を借りて、そのスペースを教育として効果があるかたちにデザインしたい。そしたら、夏合宿をやるにしても、より教育的に効果が高まる。


いろいろなDIY雑誌をみているうちに、囲炉裏はあとからでも付け足せることがわかった。テーブルの真ん中をくりぬいて火鉢みたいにして使っている人もいるようだった。
そんな形でもいいかもしれない。
あるいは薪ストーブでだって、家のなかで火が使えるのだから、囲炉裏とそれほど変わらないじゃないか。
もちろんガラス越しに火が燃えるところがみえるような薪ストーブだ。
それなら悪くないだろう。


そう思いながら、空き家を探し回った。
次は囲炉裏だと言われて1年半。
全く見つかりそうになく、2017年の春を迎えた。

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