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答え方をわざと変にする ※用法用量を正しく理解しお使いください。

日本語を教えている時に気づくのだが、用いている答え方などでいろんな情報が伝わってくる。

これをたぶん極めていけば相手の能力を把握できたり、性格判断ができたりするのだろう。知らんけど。

簡単な例を挙げて考察してみたい。

「好きな食べ物は何ですか」


というごく普通の質問をされた時、

意識せずに答えるのならば

「ラーメンです。」

みたいな答えになる。

よくある中国人学生の回答


中国人学生を観察してみると、どうやら料理の「名前」が先に出るらしく、それを日本語に訳せずに困ってしまう学生が多い。そのため、

「红烧肉です。」

などといった中国語+日本語の組み合わせで答えようとすることが多い。ケアレスミスとしてもう一つ挙げると

「牛です。」

と答える人もいる。「牛肉」ね、と自動変換できるが不思議なものだ。「魚」はそのままでも、「魚肉」でも通じるのに。

ここまでが第一段階である。

さて、ここからが本題。

「ラーメンです。」

というごく普通の答えをいかにすれば、「賢い」を演出できるかがポイントである。その手法として、基本的に

①相手の趣味嗜好に合わせて変化させる。
②対象物をより具体的な答え方にする。
③状況をより具体的な答え方にする。
④自分の好きなことを組み合わせる。

など考えることができる。


①相手の趣味嗜好に合わせて変化させる。


例えば相手が「北京」出身だったとしよう。そうすると、

「好きな食べ物は北京のジャージャー麵」です。

と回答することで交流の機会が生まれる。
本当に好きなものは好きなもので、会話を合わせるということになる。
これは中国人学生に理解されないようで、「素直に」自分の好きなことを答えて何が悪いという顔をされるオチなのである。

つまり、学生にとっては自分のことを好きなように話すことが「会話」だと考えているみたいだ……。

②対象物をより具体的な答え方にする。


次に具体的な答え方にする。

これは「ラーメン」という単語をより具体的に考える一種の思考である。ラーメンの「何が」好きなのかを考える必要がある。例えば、

「ラーメンでも特にちぢれ麵のラーメンが好きです。」
という「麺」にフォーカスしても良いし、

「天下一品のラーメンの濃いスープが好きです。」
といった形で具体的な例を挙げても良い。

これを中国人学生に伝えてみたところ、「?」という顔をされることが多い。つまり「ラーメン」は「ラーメン」であり、それ以上の考えをしたことがないのではないか。これはこれで非常に難しい問題で、解決策をいまだ見出せていない。


③状況をより具体的な答え方にする。


これは「ラーメン」にフォーカスするのではなく、「ラーメン」の周りを鮮明にすることで、ラーメンを際立たせる方法である。

「狭い店内でお客が所狭しと並んでいる中、券売機でチケットを買い、割り箸をコップの上に置いて待っていると、カウンター越しに店主が『おまち』と言って渡されたアツアツのラーメンが好きです。」

と長々書いてしまったが、あくまでも一例として。

こうすることで、相手にその情景を少し浮かび上がらせることができる。相手の文化や習慣に見合った(経験したことがある)形にすることが大事である。

これを学生に言ってみると、ポカンとした表情で返してくる。そんな情景が思いつかないのか、「ラーメン」は単体として存在しているのか分からないといった表情をしていた。


④自分の好きなことを組み合わせる。


これは自分の好きなことを組み合わせて、自分をアッピールできる優れものの回答である。例えば、

「安藤百福氏が心血注いで1958年に発明したチキンラーメン」

という回答ができるだろう。アニメ好きならば

「宮崎駿先生が好んで食べている袋入りラーメン」

と答えることで宮崎駿氏について一定の理解があることを強調することが可能である。

これを伝えてみると、「自分の好きなこと」を見つけられていないといったことが回答として挙がった。自分の好きなことは早くから意識しておくと、武器になるのだが、これが難しいみたいだ。

まとめ


以上①から④までの方法を取り上げたが、どれが正しいという解釈は成り立たない。逆に情報を与えないようにしたい時は、短い回答が求められる。そうして相手の距離感を図ることも可能である。

だからこそ、普段の会話にも楽しさが潜んでいると声を大にして伝えたい。




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