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自動販売機を前にして、狭い了見を反省したこと。

「寒いーーー!」
帰りの電車を待っているのに、なかなか電車は到着しない。どうやら、遅延しているらしく時折、遅延をお詫びするアナウンスがホームに流れていた。

どうにも寒くて、たまらない。ホームに設置されている自動販売機で、飲み物を買おう。そう思い、自動販売機の前に移動した。

「あったか〜い」と表示されている飲み物をひと通り確認。

私は普段、あまり自動販売機を利用しない。自宅から飲み物を持参しているし、コンビニで購入することが多い。そのため、どのような飲み物がラインナップされているんだろう? と気になったのだ。

缶コーヒー類が多く、お茶は少なかった。自動販売機のメーカーによって、多少の違いはあるだろう。

暖かい飲み物で、冷えきってかじかんでいる手を落ち着かせたい。けれど、少し口にも含みたいから、蓋が付いているものがいいな。
ミルクティか、緑茶か……。
悩んでいた時に、ふと目につくものがある。

「おしるこ」だ。

おしるこなんて、わざわざ自販機で買って飲む人がいるんだろうか?
となりに並んでいる「コーンスープ」は、わかる。私も以前、買ったことあるし。小腹がすいたときには、ずいぶんお世話になった。

でも、おしるこ缶は一度も買ったことがない。おそらく、この先も買うことは、ないと思う。

おしるこが嫌いなわけじゃない。むしろ、好きだと思う。
けれど、おしるこ缶は、絶対に買わないだろう。

それには、理由がある。
自動販売機で飲み物を買うのは、買ったその場所で飲みたい、ということだ。喉を潤したい。温まりたい。いろいろな理由があるだろう。けれど、おしるこはパンチが強すぎる。

おしるこは、小腹は満たされるだろうし、温まるし、ホッと一息つくかもしれない。
けれど、飲み終えたあと、口の中が甘ったるく、ベタベタするにちがいない。
おしるこ缶を飲み終えたあと、絶対に「あー、お茶が飲みたい」となるに決まっている。
それならば、最初からお茶を飲んだほうが良い。
駅のホームでわざわざおしるこは買わなくてもいいじゃないか。
缶のおしるこを飲むのは、佐々木倫子さんがかいたマンガ「動物のお医者さん」に出てくる、漆原教授くらいなものだ。

私はペットボトルに入っているあったか〜いお茶の買うべく、自動販売機のボタンを押した。

ガコン、という鈍い音とともに温かい飲み物があらわれる。それを手に取り、じんわりとした温かさに、ようやく救われたような気持ちになった。

そして、改めておしるこのことを考えてみる。
かれらは、かなり昔から、冬になると自動販売機の中でちんまりと存在している。毎年、必ずだ。

自動販売機のラインナップは、頻繁に変わるものではないのかもしれない。けれど、かすかな記憶をたどってみると冬になると一定の自動販売機の中にちんまりと居座っている。

それは、確実に、ファンがいるからだろう。
売り上げナンバーワンではなくても、コアなファンが付いていて「今年も会えて嬉しいよ!」と言っているのだ。そうじゃないと、熾烈な自販機陳列メンバーの座を毎年獲得できないはずだ。

ごめん、おしるこ。
私が買わないからといって「誰も買わない」と決めつけてしまって。なくてもいい、なんて思ってしまって。君の存在に救われている人だって、いるんだよね。だから、いまここに、いるんだよね。

君のことは、認めるよ。
ボタンを押す勇気は、私にはまだ、ないけれど。
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