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ネコと暮らすと、いつしかクマもやってくる。

「ごめん。ぼくはまだねむいから、おこさないでくれる?」迷惑そうに、ちらりと目玉だけを動かして大あくびをひとつ。
そりゃそうだ。あなた、夜中じゅうずっと騒いでいたんだから。
ネコとの暮らしは、ただただ、おもしろいだけじゃない。

ネコは、手がかからない。
なぜか、こんな風に思われている節がある。

たしかに、イヌは毎日の散歩を欠かせない。雨が降ろうが何だろうが、時間がくれば「そろそろお時間ですよね」と言わんばかりに、目をキラキラ輝かせ、しっぽも多めに振りながらアピールしてくる。それはとてもかわいいけれど、毎日のこととなると、やっぱり大変そうだし、負担に思うこともあるだろう。

確かにネコは、散歩に連れていくことはない。時折、ハーネスをつけて、散歩させているネコの姿を見かけることもあるけれど、それはどちらかといえばレアケースだろう。

我が家でも、ネコと暮らし始めたばかりのころにハーネスの装着を試みたことがある。万が一の時のことを考えて、だ。しかし、リードの紐にじゃれつき、ぐにゃぐにゃと身体をねじらせては抵抗する。なんとか装着できたかと思えば、ソファの下にさっと潜り込む。二度とここから動かないと言わんばかりの目つきで、こちらの様子を伺っていた。

何度もトライしてみたものの、何度やっても同じ調子なので、こちらが根負けして、ハーネスの装着をあきらめたのだった。

ネコは、ほとんどの時間を眠って過ごしているようだ。丸まっていたり、時には安心しきって、仰向けになって、腹を見せていることもある。眠っているネコの柔らかな毛に顔を埋めると「んん!」と、小さな抗議の声をあげたりする。

しかし、ネコはいつも眠っている、と思うのは大間違い。ネコは夜中に騒ぎ出すのだ。ネズミを狩るという習性からも分かるとおり、もともとネコは夜行性だ。夜明けごろ、新聞配達のバイク音が聞こえてくるころに、彼は動きだす。

ぼくはもう起きてて、お腹すいてるんだよね! ねぇ? 寝てないでさ、起きてよ。

こんな調子で、私が眠る枕元にやってきてはニャーニャー、ニャーニャー、しつこく呼びかけてくる。彼はまったく諦めることはない。私がふとんをがばりと被ろうものなら、少しだけ飛び出したつま先を見つけ、その隙間からふとんの中に潜り込んでくる。ホヨホヨて柔らかくて気持ちよい毛が足首を撫でたかと思いきや、ガブリとその足首やふくらはぎに噛み付いてくる。
そうして、私は根負けして、ネコにゴハンを少しだけあげる。かりかりと音を立てながら食べたあとは、満足そうに丸まってさっさと眠りの姿勢をとるのだ。

このやり取りが一晩に二度ほどある。午前二時半ごろと午前五時すぎ。はっきり言って、毎日寝不足だ。ネコがふとんに入ってこられないよう、部屋の扉を閉めてしまえばいいじゃないかと思うかもしれない。しかしネコは、寝室の扉をガリガリと引っ掻きながら、大声で鳴き続ける。私が扉を開けないかぎり、諦めることはない。諦めたらそこで試合終了だと、ネコの世界にいる安西先生的存在から教えられたのかもしれない。

とにかくネコは諦めない。それが夜中だろうがなんだろうが、御構いなし。イヌと違って毎日の散歩の大変さはない。けれど、寝不足になる毎日がやってきた。思い切って五時に起きる生活にシフトしてしまえればいいのだけれど、なかなかそうもいかない。

ネコにはネコのライフスタイルがあり、それは人間とは違っている。手がかからないし、ただかわいいからと一緒に過ごし始めると、裏切られた気持ちになるかもしれない。けれど、その「手がかからない」というイメージは人間がかってに作り上げただけだ。ネコにしてみれば「夜動かないなんて、効率わるーい。人間ってよくわかんないね」と思っていることだろう。夜中に叫びながら走り回ったり、テーブルの上に置いたリモコンを叩き落としたり、カーペットで爪を研いだりするのだ。

ことばの通じる人間同士でも一緒に暮らすのは難しい。そう考えると、イヌやネコという、種の異なる生き物との暮らしは本当に難しい。一度一緒に暮らすと決めたなら、家族の一員として、彼らの満足度を満たさなくちゃいけないのだ。
たとえ寝不足になり、コンシーラーを塗りたくっても隠せそうにないクマを目の下に携わることになろうとも。
そうだとしても、愛おしい。

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