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きみのために作ったのに。

「せっかく作ってあげたのに。ここまで頑張ったのに。なんで君は見向きもしないの?」
こんな風に考えること、たまにあるかも知れないけれど。結局それって自己満足なのだなぁと思うことがありました。

先日、夫がテレビ台を作ってくれたというnote を書きました。その記事を書いたとき、まだテレビ台は未完成でした。
「ネコが登れるように、してあげたい。台に登れるように、足場をつけたら完成」
夫はそういっていました。
窓辺からテレビ台に登れるように。テレビ台からカーテンレールの上に移動できるように。ネコの行動範囲を広げてあげたいんだと。

たしかにネコは、高い場所に登っているとき、かなりくつろいでいます。安心できる場所を増やしてあげたいという夫の気持ちも理解できました。

「テレビ台を作っているときから、台の上を、見上げてて、早く登ってみたいー! っていう感じだったんだよ」
夫はそう言って、木の板をどこに取り付けるかあれやこれやと思案し続けていました。

休日になり、小一時間くらいでネコの足場を無事に作り終えることができました。私も木くずを掃除機で吸い取ったりして、手伝いました。
「すごいすごい」と私は褒め称え、夫も、まだ気に入らない部分はあるものの達成感があったようでした。

しかし。
ネコは台のことを遠巻きに眺めているだけで、登ってみようとしません。

やばい。
うちのネコはビビリで、新しい棚とかにはなかなか近づかないんだった。でも、そのうち気に入ってくれるよね。

そう思っていました。
まだ、木材自体のにおいも強いし、気になるんじゃないの? 多分、そうだよね。

ネコは時々窓辺の桟から、そろりそろりと、めちゃくちゃ慎重に足を伸ばして台に乗って見せることはありました。「あっ、乗ってる!」とちらちら様子を伺います。あんまりジロジロ見ると「何? ごはん、くれるの?」とこちらに注意を引いてしまうかも知れないので、あくまでも自然に。野生動物の観察をする気持ちになって、接していました。

結果的に今のところ、ネコは台を気に入っていません。ここ最近は、テレビの前でゴロゴロと寝そべったりはするものの、登ってみようという素振りすら見せません。

夫は「せっかく苦労して作ったのに。ねぇ、ほらここ、登ってみたら?」「作ってたときは、登りたそうにして、邪魔してきたでしょ?」としつこくネコに話しかけていましたが、ネコは素知らぬ顔をして、しっぽを振っているだけでした。

ネコが登らなければ、私の本棚として使いたいのですが。まだネコが登るかもしれないので、今のところ「テレビ台+木のオブジェ」といった様相です。

せっかくネコのために作ってあげたのに。ネコは見向きもしません。きっと、何か気に入らないところがあるのでしょう。ほかのキャットタワーには駆け上っているし、走り回っているので、ネコの健康に問題があるわけじゃない。

せっかくネコのために作ってあげたのに、と夫は初めのうちは不満気でした。でも、ネコの気持ちが十分理解できていないんだなあと、反省していました。ネコは喋れないですし、気まぐれですから。

これ、ネコのためだから「自分の作ったものに問題があるのかも」と考えられたんだと思います。私に、例えばイスを作ってくれたとして。私が全然座らなかったら喧嘩になると思うんです。「せっかく作ったのに、なんで座らないんだ」と。座り心地が悪いからとか、今まで座っていたイスのほうがしっくりくるし、とか。わたしも色々と難癖をつけてしまうでしょう。なんとなく、気に入らない、とか。

私が夫のために手間暇かけて作った料理でも、同じことが言えるかも知れません。せっかく作ったのに、味見もしないまま夫はジャバジャバ醤油をかけたりして。考えただけでもムッとします。

自分ががんばったから、相手も無条件に認めてくれて、喜んでくれて、使ってくれるとは限らないんですよね。今回はおネコ様案件でしたので「もう~」と思いつつも「仕方ない、あの子が気に入らなかったんだもの」と、思えることが(まだ)できる、納得できたんだと思います。いや、まだあきらめてはいないのですが。

あなたのために、君のために、してあげたことって、結局自分の達成感であり、自己満足でしかなくて。それを相手にも認めてもらいたいだけなんだと思います。まあでも、あなたの満足は、私の満足ではないし。夫の満足は(いまのところ)ネコの満足ではなかった、ということでした。

どこまでが思いやりの範囲と言えるのかは分かりませんが、少なくとも相手が「うんざり」しているようであれば、それはただの自己満足なのでしょう。

サムネイル画像のネコの顔は、あきらかに「うんざり」しているときの表情ですからね……。


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