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大いなる勘違いでぐったりした土曜日のこと。
「やっべ。これ、送り先間違えてウチにしちゃったんじゃ……?」
郵便受けから取り出した不在連絡票をみて、私の頭はしばしフリーズした。そのままフリーズしておけば良かったのかもしれないけれど、そんなわけにはいかない。
先週の土曜日のこと。
朝一番でネコの定期検診のために動物病院へ出かけた。ネコの体調でいくつかの心配ごとがあり、予定を変更して慌てて連れて行ったのだ。
幸い、「もしかして?」と心配していたような大きな問題は見つからなかったけれど、また定期的に検査をしましょうということだった。
良かった、安心して自宅に戻り、家の中に入る前に習慣として郵便受けの中を確認した。すると、見覚えのあるペラリとした用紙が張り付いている。おや? 見てみると宅急便の不在票だ。誰からだろう? 何かネットで注文してたかなと思い巡らしてみても記憶がない。
送り主の名前も書いてあるのだけれど、そこが致命的で、文字を読み取ることができなかった。ローマ字で書かれているようにも見える。思いあたる節はない。
送り主は読み取れない。けれど、荷物の種類がチェックされていた。「クール・冷凍」にあるレ点を見たとき、ハッとある可能性が頭の中を駆け巡った。
「母の日のプレゼント、送り先を間違えてる……!」
義理の母親に何かプレゼントを贈ろうかと毎年夫と話し合う。初めのうちは良くあるタイプのアレンジフラワーをネットで注文し、宅配してもらっていた。けれど、「カーネーションの横にあった小さなお花はなんていう名前?」などと質問されることがあり、私はうまく答えられなかった。そもそもアレンジフラワーにどんな花が使われているかすら、知らないのだ。
こういったやり取りが何度かあり、私は正直疲れてしまった。義理の母は悪意がある訳でもなくて、単純に花の名前が知りたいだけなのだ。まさか、「お花の写真を撮影して、図書館かどこかで調べてください」とも言えないし、曖昧な返事を返すのも疲れてしまった。
そうして、最近では百貨店でチョコレートを買い求めたり、食べ物を贈ることにしていた。
あまりチョコレートばかり贈るのもどうだろう? と夫に相談してみた。すると夫は「じゃあ何か、海産物にでもしたら? ウニとかホタテとか好きみたいだから」と母親の好物をいくつか挙げてくれた。
母の日にウニを贈るってどうなんだろう? 一緒に寿司を食べに行くならまだわかる気もするけれど……。私が考えあぐねていると、「ここでホタテ買って送ればいいよ!」と、手頃なホタテの詰め合わせのサイトを見つけてきた。
うーむ。ホタテならウニよりはまだマシか? この私自身で下した基準もよく分からないけれどホタテを贈ることに決定した。山間部に住まう義理母に海の幸を贈るのは悪い考えではないだろうと。
ネットでポチッと購入し、送り先の住所を選択。「母の日カードを添付する」にチェックをつける。よし。これで今年も母の日問題はクリアした。あとは到着を待つばかり。
……と、思っていたのだけれど。
送付先の住所選択を誤ってしまったのだろうか?
「クール・冷凍」で思いあたるのはこのホタテしかなかった。
「お母さんに送る予定のホタテ、間違えたみたいでウチに届くかも」慌てて夫に相談し、それなら今からまた改めて購入すればいいんじゃないか? と言われる。14日には届かないかもしれないけれど、まあそれは仕方ない。
私は慌ててサイトを開き、ホタテの購入手続きを取った。
改めて今思うのは、なぜ先日送った履歴をチェックしないのか? ということだ。注文受付履歴を見れば分かりそうなものだ。だけどその時は慌てていた。その日は朝からバタバタと取り乱していたし、なんだか頭はうまく回らず、ただただ空回りしているようだった。
そうして再びホタテを注文した。朝早い時間だったおかげで、翌日お届け便を指定できた。
ふー、やれやれとひと息つく。「うちでもホタテが食べられるから、いいじゃない」と皮肉なのか励ましかわからない言葉を夫から投げかけられていた。
そうこうしているうちに、再配達の荷物が届いた。
……あれ? 思ったよりも小さな箱だな。
ダンボールに貼り付けられた送り状を確認する送り主は「AJINOMOTO」とある。
よーうやく、ここで気がついた。
先日のチャーハン大賞で当選した、冷凍チャーハン一袋が送られてきたんだということを。
AJINOMOTOさん、ありがとうございます。
美味しくいただきます。
ちなみに「クール・冷凍」のホタテは無事に二箱、母の日に届けられた。幸い夫の兄弟家族が遊びに行っていて、みんなでワイワイ食べたという。めでたし、めでたし。
この件で学んだことは、ただひとつ。
「自分よ、慌てるな。確認しろ!」
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