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自分を守るのは、やっぱり自分しかいない【システマをまなぶ】

とても楽しみにしていたシステマのクラスが9月12日にようやく開催された。

その名も『女性のための護身術」クラス。(いまのところ)一回限定のクラスだけれど、とても人気だったという。開催が発表されて、割と早めに申し込んだのに、その時点でも定員まであとわずか、という感じだった。

もともと3月に開催される予定だったのだけれど、このご時世のため、(たしか)二回延期になった。けれどもクラス自体が消滅せず、こうして開催にたどり着いたことは本当にありがたい。

「女性のための護身術」というと、いつも思い浮かぶ場面がある。

それは、村上春樹さんの「1Q84」で青豆さんが指導しているシーン。

青豆さんは都内のスポーツジムでマーシャルアーツのクラスを受け持っていた。女性のための護身術を指導しているのだけれど、そこで「女性が男性から襲われた場合に、身を守るには金的攻撃しかない」と断言していた。そうして、人形の使ってひたすら股ぐらを蹴り上げる練習をしていた、というシーン。もっとも、その後、青豆さんは「その練習は少し問題がある」とスポーツジムの運営者から指摘されてしまうのだけれど。

わたしは、その場面を読んだ時に、「たしかにどんなに屈強な男性でも、ほとんどの場合、金的攻撃は有効だろうから一撃必殺でどうにかスキを生み出すしかないかもな」とすごく納得していた。いまのところ、ありがたいことにその攻撃を繰り出さなくてはいけない場面には出あわせていない。

ただ、ここまで攻撃的な場面ではなくても、自分の身は自分で守らなくっちゃいけないなとは思う。いつも誰かがそばにいるわけでもないし、その人が助けてくれるとも限らない。

このような意味合いで、今回参加した「女性のための護身術」クラスが人気になったのはすごく分かる。

システマの考え方だと「危ない場所に、近寄らないこと」も重要ではある。それでも、酔っ払いに絡まれたりとか、職場でのセクハラなんかもあるだろう。(最近は距離を保つという名目上、触られたりするのが減っているならばよいのだけれど)

いつも教わっている北川先生の奥さまで、公認インストラクターの北川文(あや)先生と、準インストラクターの吉田梨乃さんがアシスタント。

護身術クラスは、「システマとは」というところからスタート。1時間半くらいしかないので、足早に。でもシステマの考え方こそが自分を守ることに繋がっていくのであんまり端折れない。

4大エクササイズのあと、それぞれトレーニングナイフを受け取りナイフの上に寝転んでみて違和感を感じるワーク。床と自分の身体の間にある異物をどう受け止め、リラックスするかなど。

その後、ペアまたは3人一組に。順番に体の上に寝そべっていく。圧迫されていることで生まれる恐怖や緊張、パニックを呼吸で整える。一番下に寝そべる人は呼吸を意識してリラックス。上に寝そべる人は完全にリラックス。

そこから二人一組になり、下に寝ころんでいる人は「体のどこが自由になるか」を意識して動かすワーク。体の上に何かが(今回は人体)乗っていたとしても、体の自由になる場所を動かして、抜け出すワーク。下に寝ている人がもぞもぞと体を動かしていくと、上の人はゴローンと転がるように投げ出される。やってみる前は、みんな「えー? そんな風になるかなあ?」と半信半疑のまなざしだけれど、意外とあっけなくゴローンと転がるので笑ってしまうほどだった。

リラックスしていると楽だけれど、緊張しているとこわばって痛いよ! というワークの一環として「ナイフで相手の身体を刺す」というのもあった。

トレーニングナイフとはいえ、他人の身体を刺すなんて……という戸惑いもありつつ。まあ、そりゃあそうだろう。わたしだって、システマで初めてやったときは「うまく人を刺せません。慣れてなくて」と、先生に直訴したのを思い出す。

単純に力を入れていると痛く、緩めていると思ったよりも痛みがないのをそれぞれが体感。ナイフで刺すのに戸惑いながらも、みんな積極的にやる。あや先生は「刺してみる側に回ってみることも大事」と、刺される側だけでなく、刺す側の恐怖心も知ってくださいねとアドバイス。

終了時間が差し迫ってきたところで「実生活で役立つ護身」の動きをいくつか教えてもらった。

腕を掴まれたときは、振り払う。これにもコツがある。掴む動作は、親指と、そのほかの指でぐるっと対象物を覆うことになる。その時、親指とその他4本の指のあいだは、ほんの少しでも隙間がある。隙間があまりなくても、そこが弱点になる。そのためその隙間を狙って勢いよく腕を払うと抜け出せる。

肩を抱かれた場合は、ぐるっと回ってそのまま外すという、文章に書きにくいくらいあっけない動きで逃げられる。

また、後ろから羽交い絞めにされたときは、スクワットの要領でしゃがんで逃げる。また、後ろから覆いかぶされているため、姿勢が猫背になっているが、姿勢をまっすぐにするだけでも、相手はひるむ。めちゃくちゃ暴れて、それこそ金的攻撃をするのも良い。

この三つの動きを覚えているだけでも、気の持ちようが違ってくる。

「護身術」というと、襲ってくる相手を投げ飛ばしたり、腕をねじられたりしたら、うまくかわして逆にねじ伏せたり。相手を押さえつけてやると思う人もいるかもしれない。動作を学びたいと思う人もいるかもしれない。

けれど、実際には「その場から離れる」ことが一番大事だろう。相手より優位に立つ、という意味では変わらない。けれど、パニックにならずに、どう逃げるか、どう動くかが肝心だ。気持ちが落ち着かないと体はこわばって動けない。そうならないためには、やっぱり呼吸してリラックスすることが大事になる。

楽しくて、あっという間に時間は過ぎてしまった。けれど、かなり需要があるクラスだし、月一とかでも常設クラスを開催したらいいんじゃないかなあと願う。


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